柊の表情が、一瞬にしてガラガラと崩れ落ちた。胸の奥で、激しい荒波が渦巻く。――須藤家と茜の父が、裏で手を組んで仕組んだ……?紬でさえ、予想外の真実に一瞬言葉を失った。かつて柊が致命的な不祥事を起こしたのは、あまりにも突然のことだった。もともと商才に恵まれ、須藤グループの中でも水を得た魚のようにのし上がっていた。あの年、部下の不手際で松永グループとのプロジェクトに巨大な資金の穴が開き、全責任を負わされる形で柊が矢面に立たされた。あのころの柊は、傍若無人なほど傲慢だった。当然、社内外に敵も多かった。問題が完全に表面化する直前、彼は突然、命を狙われる事態に陥った。暴漢に襲われたのだ。紬がたまたまその場に居合わせ、とっさに彼を庇って前に出た。その後、柊は病院へ搬送され、そのまま留置所へと送られた。そして紬は、重傷を負い一ヶ月もの入院を余儀なくされ、数日間意識を失った。もともと、体が強いほうではなかったのだ。ようやく目が覚めると、康敬は「柊はほとぼりを冷ますために海外へ飛んだ」とだけ言い、紬は柊の具体的な状況を知らないまま過ごすことになった。そして康敬の罠に嵌められ、慎とのあの夜の出来事が起き、康敬は堂々と柊の身の安全を盾に取り脅してきた。自分の言うことを聞かなければ、柊の刑期を縮めてやらないと。誰かの犠牲になるつもりなど、毛頭なかった。でも、彼女には逃げ道もなかった。あのとき憎んでいたのは康敬であり、慎ではなかった。紬の目には、慎もまた康敬の企みに巻き込まれた被害者に映っていた。だから彼に対して申し訳ないとも思っていたし、慎との婚姻をきちんと築きたいと心から願っていた。彼の結婚が、打算に塗れたものだと感じさせたくなかったのだ。ただ、その後で自分が本当に彼に惹かれていくとは、思ってもみなかった。気づけば、抜け出せないほどの深みにはまっていた。そして今――柊の過去の事件の真相が、これほどまでに残酷なものだったとは。慎の表情には、かつてないほどの冷たさが宿っていた。その分、漆黒の目がより深く沈んで見えた。「一番の恩恵を受けたお前が、一体どの口で彼女に何かを言えるのか。あのとき彼女に庇ってもらわなければ、もしかしたら彼女は……」声が、突然途絶えた。喉の奥が一気に詰まり、声にならなかったのだ。
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