慎からのラインの友達申請に気づいたのは、紬がちょうど朝の食卓に座ったときだった。良平が温かいお粥を器に注いでいた。「今日は特製の海鮮粥だよ、牡蠣を多めに入れてみたんだ。手術の前はしっかり栄養をつけなきゃね。どんな手術でも体力をひどく消耗するんだから、今のうちに体を整えておかないと」良平は生涯結婚しなかった。紬をずっと我が子のように可愛がってきた。今こうして紬が癌だと知った今も、病気の辛さは彼自身が身をもって知っていたからこそ、人一倍胸を痛めていた。自分でさえ乗り越えるのが精一杯だったのに、こんなか弱い紬が、一人でどれほどの絶望を抱えてきたか。「叔父さん、自分で持てます、大丈夫ですから」紬は携帯の画面から目を上げ、慌てて器を受け取った。「長谷川慎からのメッセージかい?」良平は、紬が携帯をじっと見ているのに気づいていた。慎のことは、嫌いとは言えなかった。彼が紬に与えた痛みを抜きにして冷静に評価すれば、若い世代の中では文句のつけようがない傑出した男だと、良平は思っていた。紬は小さく笑うだけで、特に何も言わなかった。良平は蘭子の分を盛って冷ましながら、穏やかな声で続けた。「実はね、昨夜どうにも眠れなくて、ベランダで少し風に当たってたんだ。そしたら、ずっと彼の車が停まってたよ。今朝早く起きたときもまだいて、さっきようやく動いたみたいだけど」つまり、あの男は一晩中そこにいたということだ。声を荒げるわけでも、大げさに感情を訴えるわけでもなく、ただ静かにその事実だけがそこにあった。慎も紬の病のことで、彼なりに相当苦しんでいるのだろう。紬は、慎からのメッセージの送信時刻を確認した。午前六時半。一晩外にいたことは、一言も書いていなかった。良平は紬を見た。彼女は携帯の画面をじっと見つめて、何か深く考え込んでいる。何も言わず、邪魔をしないでいた。紬が再びラインの画面に目を向けたとき、画面上部にニュースの速報通知が出た。消そうとして、誤ってタップしてしまった。開いた先に飛び込んできた写真に、見覚えがあった。昨夜、陸の店の外で目にした光景だった。香凛とその一行が警察に連行される場面が鮮明に収められていた。顔にはモザイクがかかっていたが、見出しは衝撃的な文言で、【違法薬物パーティー】の文字とともに【天才と称される
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