颯side璃子と玲央は、真相を突き止める道を選んだ。どんな結果であれ、事実を受け止めてその中で最善な関係を考えていくこと、そして両親たちの関係を自分たちだけで悩むことは解決にならないと判断し、玲央の父と璃子の母の当事者二人も交えて話し合いをするそうだ。「まだこれが正解か分からない。真実を知らない方が幸せなこともあるかもしれないけれど、ここまできたら知らないことも地獄だと思ったの」璃子の顔からは疲れが感じられるが、どこか吹っ切れたような清々しさもあった。何を考えているか分からなかった頃よりも、今の方が璃子の人間味を感じられる。彼女が自分自身の運命と向き合おうとしている姿を見て、俺は初めて璃子の美しさを知った。艶のある黒髪から覗く目鼻立ちがはっきりとした顔は、大人の色香を纏いながらも、笑うと少女のような可憐さも持ち合わせている。恋心とは違うが、玲央のいう可愛さがほんの少しだけ分かった気がする。「そうか、真実が明らかになってちゃんと話し合いが出来るといいね」「それで……」璃子は、俺の顔をまっすぐに見て何か話そうと口ごもっていた。どんなことかは察しがついていた。そして、それが俺にとっては、都合が悪いことだと直感していた。しかし、話を遮ることはせず、璃子の言葉を静かに待った。「颯にお願いがあるの。全てが分かるまでは、このまま婚約者のフリをしていてくれない。おじいちゃんには私から話をして、なんとか引き延ばすわ。それまでに決着をつけるから……」璃子は、今までのような横暴な態度ではなく、必死に頭を下げて頼んできている。俺が下を向いて俯いていると、更に言葉をつづけた。「玲央のお父さんと母の不倫の事実が明るみに出るのは絶対に避けたいの。この婚約が続いている間に全てを解決するから。だから、私たちに時間をください。」佐奈に伝えたいことがある―――――佐奈の誤解を解くには、まずこの婚約を解消しなければならない。だが、目の前の璃子の切実な願いを、俺は拒否することができなかった。
Última atualização : 2025-12-02 Ler mais