All Chapters of 愛よりもお金をとるのならどうぞご自由に、さようなら: Chapter 101 - Chapter 110

175 Chapters

101.包容力

佐奈side「佐奈は、結婚を早めにしたいとか考えたりすることはある?」「え、結婚?どうしたの?」まだ付き合ったばかりだし、両親は互いに後継者を探しているはず。この返答によっては、どんどん話が進んでスピード結婚になってしまうのではないかという考えが頭をよぎり、思わず身構えてしまった。「実は、この前、母から電話があった時に交際している相手はいるのかと聞かれたんだ。それで、いると答えたら今度彼女もつれて家に遊びに来るようにって」「え、それって……」「あ、大丈夫!そんな重い感じではないから心配しない。母は、人を家に招待するのが好きで、母の友人や父がお世話になっている人や俺の友達とかが来るのが嬉しいみたいで、よく家で食事をしたりするんだ。だから、佐奈のことを歓迎しているし、俺がどんな人と付き合っているか気になって会いたいみたいんじゃないかな」蓮はそう言っているが、本当にそうなのだろうか?大企業の家系に育ち、次期経営者となることが決まっている息子の配偶者になるかもしれない相手のことを早めに見極めたいと考えていても不思議ではない。会いたいは口実で、雑談の中の返答によって見定めようと面談されたりされないか、など嫌な予感が湧いてくる。「突然、家にお邪魔するのは気が引けるわ……。あと結婚だけど、特別急いではいないの。まだ父の
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103.一人暮らし

佐奈side蓮のマンションは一人暮らしと思えないくらいの広さがあり、足を伸ばして座れる本革のL字型のソファや、大理石を使用したフルフラットのキッチンなど、モデルルームのように洗練された豪華さと清潔感に溢れていた。高層マンションの上位階で大きなガラス張りの窓の横には、観葉植物のガジュマルが大きな鉢が置かれている。大画面のTVディスプレイも、あるもの全てが成功者の部屋だと物語っているようだった。「蓮、こんなに大きくて素敵な部屋に住んでいるの?」「ありがとう。今、飲み物を用意するから適当に座っていて」ちょこんとソファに座りながら辺りを見渡していると、バカラの重厚で繊細な模様が施されたグラスをテーブルの上に置いて、蓮が隣に腰を掛けた。「一人暮らしいいな。私も、本当は一人がいいんだけれど父が厳しくって。一社目は、敢えて実家から遠い会社を選んで、通勤が大変なことを理由に許可が降りたんだけど、今は結婚するまでは家から出さないって聞かないの。どうにかして家を出れたらいいんだけどな」そんな私の嘆きに蓮はあっけらかんとした様子で尋ねてくる。「それって結婚相手が決まればいいってこと?例えば、俺と結婚を考えているから相手は決まったと言えば、許可されるわけ?」「どうなんだろう。でも、もしそんなこと言ったら蓮を連れてくるようにって話になるよ」
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104.一人暮らし②

佐奈side「お父さん、私、お父さんの会社にも入社したし周りに関係がバレないように一人暮らしをしようと思っているの」平日の夜、父の機嫌がいい日を狙って一人暮らしについて話をしてみた。どんな風に返してくるかドキドキして胸が小さく震えている。「まだそんなことを言っているのか。社員たちに内緒と言うのは分かるが、私の家を知っている者などごく僅かだ。分からないから大丈夫だ」「そうかしら?噂って簡単に広まるのよ。この近所の人にMURAKIの社長の家と誰かが聞けばすぐに分かるように、知っている人がつい話すこともあるし、私は二社勤めて来たけど社長の住んでいるマンションを知っているわ。それに苗字も一緒で住んでいる地区も一緒なら怪しむ人も出てくる。そういう可能性はしっかりと排除した方がいいと思うの」私の主張に、父はやれやれと半ば呆れながら小さくため息をついている。「一理あるが、縁談の話や交際相手の話はどうした?そういう話から逃げるために一人暮らしをしたいんじゃないのか?」予想していた通り、父は結婚と後継者問題を指摘してきた。今まではこのことを言われると立場が弱くなっていたが、今日は違う。「そんなことないわ。私、藤堂グループの息子の蓮さんとお付き合いすることにしたの。だから、ちゃんとそのことも考えている」
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105.両家公認の仲

佐奈side蓮との交際は順調に進んだ。一人暮らしをするために、付き合ってすぐに蓮が両親に挨拶に来てくれたことで、両親の印象も良く、たまに実家に顔を出すと蓮のことが話題に上がることも多かった。そしてパーティーの場で蓮の父親にも挨拶をしたことで、私たちは両家公認の仲となり、交際がきっかけで父たちに接点が出来て、ビジネスの話もする機会が増えたそうだ。「先日、蓮くんのお父さんの会合の場で一緒になって話をしてきたよ。蓮君はもう部長の職についているんだって?藤堂家の人間とは言え、昇給は実力評価されるそうじゃないか。蓮君の歳であの藤堂グループで部長だなんて優秀なんだな」この日も、父に呼ばれて実家に行くと蓮のことを上機嫌で話している。娘の交際相手が大手企業の御曹司で、仕事もできると折り紙付きで鼻高々と言ったところだろうか。蓮のおかげで、縁談の話が出ることも私のプライベートについて探ろうとすることも一切なくなり、一安心していた。「もしもし、蓮?電話大丈夫?今、実家から帰ってきたんだけれど蓮の話が出たんだよ。蓮が部長として頑張っているのを知って嬉しそうに話をしていた」「そうなの?なら良かった。うちも佐奈のこと、努力家で芯のある女性だってよく褒めているよ」「嬉しい。今まで両親に付き合っている人のことを紹介したことなかったんだけど、親に彼氏のことを褒められるって嬉しいね。なんか自分が
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106.ごめん

佐奈side蓮と交際をして一年が過ぎ、お互いの親にもパーティーの場で挨拶をして親交を深めるうちに、「いつ結婚するのか?」と聞かれるようになっていた。父の会社に入ってもうすぐ一年半。まだ全てが出来るわけではないが、完璧を求めたらいつまで経っても結婚なんて出来ない。私は蓮との結婚や将来を考えるようになっていた。そして、それは蓮も同じようで、最近では「一緒に住んだら」など将来をほのめかす言葉が増えているような気がする。だけど蓮は、交際当初に仕事を優先したいと言っていた私を気遣ってくれているようで、想像の世界にとどめて、プロポーズや具体的な話はしてこない。自分から待たせるようなことを言ったのに、今では少し期待している我が儘な自分もいた。蓮の優しさに甘えているのは分かっていた。――――週末、この日は私のマンションに蓮が泊まりに来ている。一緒に夕食を食べて食器を片付けてから、ソファで足を伸ばしてくつろいでいるときの事だった。蓮の肩に頭を預けると、蓮は脇を少し開いて私がよりくっつけるように場所を作ってくれる。腰と腰が触れ合い頭を撫でられると、普段、無意識のうちに戦闘モードになっていた自分の牙が取れて丸くなっている気がしていた。蓮の腕の中は、私が最も安心できる場所だった。「蓮、いつもありがとう。仕事でつまづきそうになっても解決策をくれるし、親のことで困ったら一緒に考えてくれるし、蓮が側にいてくれて嬉しい」「良かった。佐奈の力になれて嬉しいよ」
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107.ごめんの意味

佐奈side「本当は、佐奈のことを待っているつもりだったんだけれど……」蓮が言いにくそうに顔を下に俯かせている。その様子に私の心はざわめきを増している。「何?どういうこと。もう少し分かるように話をして?」「実は、両親に縁談を受けるように言われたんだ」「え……」「この前、親に佐奈との結婚について聞かれて、佐奈の仕事が落ち着いてからの予定だから結婚はまだ先だと思うって答えたんだ。両親も佐奈のことを気に入っていたから、分かってくれると思っていたんだけれど、『一年経っても言うことが変わらない。彼女は、本当に結婚する気があるのか』と強く言われてしまって」(ご両親はずっと息子の結婚を望んでいて、蓮がそれをなだめていてくれたの?)「もちろん俺は、佐奈も真剣に考えていることや家業を継ぐことの責任感もあるから、今、真剣に仕事と向き合っていることを説明したんだ。結婚は自分たちのタイミングで考えていこうと話をしているから、急かさずに待ってくれと説得を重ねたんだ。今までもそうやって納得してくれていたんだけど……」私が仕事に打ち込めるように、蓮が影で自分の両親からのプレッシャーに耐え、守ってくれていたことを私は
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109.結婚準備と運命の悪戯

佐奈side蓮のご両親からの圧力がきっかけだったが、私と蓮は一緒にいることを選び、結婚に向けて準備をすることになった。私にとって人生二回目の婚約で、今度こそは無事に結婚まで辿り着きたいと心から願った。過去の失敗と虚飾を乗り越え、今度こそは愛を基盤にした家庭を築きたい。二か月後、藤堂家が贔屓にしている料亭で両家顔合わせと結納を行い、蓮からは大粒の一カラットのダイヤモンドがキラキラと光る高価な婚約指輪をプレゼントされた。眩い光を放って職場でつけるには豪華すぎる指輪は、休日だけつける特別な宝物になった。二人で住むための新居探しをはじめ、予想はしていたが結婚すると決まったらトントン拍子に物事が進んでいき、そのスピードに乗り遅れてしまわないように必死でついていく感じだった。「挙式と披露宴は、会場の関係もあるから一年後かな。今のうちに見学とか行こうか。招待客については、どの規模までに留めるか両親の意向も確認しなくちゃね」蓮はこんな時でも落ち着いていて、目の前にあるタスクを並べていき優先順位をつけて私を誘導してくれていて、とても頼もしい。「そうね。蓮の場合は会社の関係もあるし、ご両親に相談しないとね。なんか一度話が進み始めるとあっという間だね。それに意外と決めることも多くて、結婚って何だか事業のプロジェク
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110.結婚式場

佐奈sideこの日、二人で式場の見学に行くはずだったが、蓮の仕事に急なトラブルが発生してしまった。部長である蓮は、休日出勤を余儀なくされ昨夜から対応に追われていた。見学するにも数か月待ちという都内でも屈指の人気の式場で、二週間前に電話を入れた時に偶然キャンセルが出て、ようやく予約が取れた場所だった。今回を逃すと次は三か月後。蓮も「せっかくの機会なのに」と悔しがっていたが、「まずは一人で下見してくるね」と伝え、行くことにした。「佐奈一人に任せることになって、本当にごめん。帰ってきたらまた、ゆっくり話を聞かせてもらえる?」昨夜の仕事終わりから蓮のマンションに泊まり、朝、玄関まで見送った時に顔の前で手を合わせ、ごめんのポーズをしてから嵐のように急いで出掛けていった。「蓮はやっぱり忙しいんだな。結婚しても仕事優先だとこんな生活になるのか……」蓮の姿が見えなくなってから、自分の支度を始めた。近頃の蓮は大きな案件を抱えており、連日のように弁護士や税理士との打ち合わせで帰りが遅い。海外視察で二週間不在にすることも多く、顔を合わせる時間は以前より確実に減っていた。私も自分の仕事に誇りを持って自由にやらせてもらっている自覚はある。けれど、ふとした瞬間に将来のことを考え、今まで感じたことのない寂しさのようなものが胸をかすめるようになっていた。そんな気分
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