佐奈side「伝えたいこと?」「佐奈、俺、すべて終わらせてきた。璃子との婚約を破棄してきたよ」「え、なんで?」「最後に会った時に、佐奈が言っただろう?『璃子の悪事を知っていながらも、未だに璃子の隣にいるのは璃子のことを想っているからだ。それに、被害者ぶっているけれど颯は何も失っていない』って……」「それはそうだけど……」「そう言われて気づかされたんだ。確かに俺は何も失っていない。それどころか、婚約してすぐに家は1DKのアパートから高級なマンションに変わって、会社のポストも上がった。婚約したままで佐奈のことを想っているなんて伝えても、説得力もないし本気だなんて思えないよなって。佐奈からしてみれば、結婚前にふらふらしている軽い男みたいに俺は映っているかもしれないと思ったんだ」颯の言葉をただただ無言で聞いていた。今言っている言葉は、私があの時感じた心のモヤモヤや苛立ちをしっかりと言語化してくれている。婚約している立場でありながら、声を掛けてくることにも、もしかしたらなびくかもしれないと私自身を軽く見られていたのかと思うと何をふざけた事を言っているのだろうと全く笑えなかった。「あの時、事情があって婚約者のフリをしていたんだ。でも、もうする必要がなくなった。だから璃子との婚約を正式に解消したよ。俺は、もう璃子とは関
Last Updated : 2026-01-04 Read more