《愛よりもお金をとるのならどうぞご自由に、さようなら》全部章節:第 71 章 - 第 80 章

175 章節

72.反撃

佐奈side颯は、私の家系を知ると『一緒にいたいのは璃子ではなく佐奈だ』と言ってきて、璃子との婚約を辞めて私がいいと言っている。出世のために私を捨てたはずなのに、私の家系の方が格上だと分かると手のひらを返したように「一緒にいたい」「大事」という颯に反吐が出そうだった。(大体、璃子にも本郷さんという婚約者がいるのに略奪しておいて、婚約を辞めて私と一緒になりたいって何よ。どれだけの人の人生を振り回す気なの?颯がそんな人だなんて思わなかった……)結婚を考えていた相手がそんな薄情で自己中心的な男だったことに心の底から失望していると、カツカツとヒールを鳴らして駆けてくる音が聞こえてきた。騒がしい音の方に顔を向けると、そこには悪意に満ちた璃子が立っていて、私と目が合うとニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべてこちらに近付いてきた。「聞いたわよ。あなたMURAKIの令嬢なんですってね。颯に黙っていたの?残念だったわね。最初から伝えていたら、颯はあなたを選んだかもしれないのに。それとも、自分の家系を伝えなくても選ばれる自信でもあったの?」耳元で囁きかけてくる璃子に怒りで睨みつけると、視線の先には颯がこちらに向かって駆けてくる姿が見えた。ここで取り乱しては、颯と璃子の茶番に巻き込まれるだけだ。「私はあなたのようなことはしないわ。あなたは、会社の孫娘って看板が
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73.ビンタ

佐奈side璃子が振りかざした手が当たった音がしたが、私の頬にその衝撃はこなかった。代わりに温もりを感じて、恐る恐る目を開けると目の前には蓮が立っていて、私を守るように璃子に背中を向け包み込んでいる。私が叩かれることがないように、璃子の腕と私の間に入って止めたのだった。そして、璃子の隣には、璃子が振り上げた腕を力強く握っている颯の姿があった。パチンッという衝撃音は、璃子の腕を颯が暴力的に捉えた時の音だろう。「佐奈、大丈夫だった?怖かったね」「蓮……ありがとう」「無事でよかったよ。少し外のテラスで休まない?」「ええ、そうしたいわ」蓮は私の肩を抱いて優しく微笑んでから、璃子と颯を威嚇するように睨みつけていた。その瞳には、普段の柔和さはなく怒りが宿っていた。「この前、お会いしましたよね。あなた方のことは調べればすぐに分かります。こんな場で騒ぎを起こすようなことは慎んで頂きたい。これ以上、何か起こすようなら団体に言ってあなた方を出禁にすることも出来るんですよ。それと佐奈を傷つけるようなことをしたら、私が許しません。」「佐奈、行こう」蓮に寄り添われながら、私が颯と璃子から離れていくと、颯は何か言いたげに口を開いていたが、蓮の威圧に押され何も言えずにいた。まだ、璃子の手が大きく上がった瞬間の衝撃が頭の中に残っていて、心臓をバクバクさせている。「蓮、助けてくれてありがとう……」「どういたしまして。佐奈に何もなくて本当に良かったよ」蓮の笑顔を見た途端に、今まで封じ込めていた怒りや悲しみが一気に溢れ出しそうだった。颯への失望、璃子の悪意、そして自分の過去の失敗。蓋をしていたはずの感情が、蓮の優しさや頼もしさに触れて外れてしまいそうだった。そして、この気持ちを蓮に聞いてほしくて、蓮にすべてをさらけ出して、それでも側にいてくれるなら、私はこの先も蓮と一緒にいたいと思った。「ねえ、蓮?このあと一緒に帰れる?話があるの」「いいよ。帰ろう。家まで送ってくよ」蓮はやさしく微笑んで私の髪を撫でた。
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75.家柄

佐奈side「佐奈お姫様、到着いたしました」私を元気づけるために蓮はわざと冗談っぽい口調で言って手を差し伸べてきた。小さく伸ばされた手にそっと自分の手を重ねると、蓮は自分の上着のポケットに私の手を導いて、指を絡めてくる。心臓がトクントクンと心地よく弾んでいる。小さく息を吐いてから、独り言かのようにポツリポツリと言葉を発していく。「今日ね、あの二人に私の家系のことを知られたの。私は、私のことをまっすぐに見てくれる人がいいと思って、今まで自分の家のことを隠していたんだ。」「そうなんだ。佐奈の気持ち、分かる気がする」「結婚を考えていたんだけど、今日隣にいた社長の孫娘に気に入られて、あの人は、私との結婚より出世やお金を取って、理由も告げられないまま私は捨てられたの。」母に紹介する約束をしていた日、颯は待ち合わせの時間になっても姿を見せず、少し遅れて電話が入ったと思ったら、一方的に別れを告げられた。「四年も付き合っていたのに電話一本で別れを告げられたことも、翌日には孫娘と婚約したって会社でも堂々と宣言して、全てがなかったことのように冷たくあしらわれてね。」颯とのことは、本当は誰にも言いたくなくてずっと黙っていた。蓮にも話すつもりがなかったのに、昼間のことがあって、今は蓮に側で聞
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78.対峙

颯sideパーティー終了後、玲央がよく利用するという会員制のバーの個室に、俺と璃子と玲央の三人で入った。璃子がテーブルの一番奥に座り、その隣に俺、璃子の目の前には玲央と、逃げ場がないように璃子を挟みこんでいる。「一体、何があるって言うの?どうして二人がやり取りしているのよ」玲央と俺が顔を合わせることなく合流できたことに、璃子は不信感を露わにして俺たちの顔を交互に見てきたが、俺も玲央も表情は硬く、璃子に対して一切笑顔は返さなかった。「璃子が俺たちに話していることが大きく食い違っていることが分かったから、連絡を取るようになったまでだ。」俺は、璃子の動揺を誘うように冷たく言い放った。「僕は、璃子の言葉を信じていたよ。だけど、松田さんから聞く話と璃子から聞いた話が全くと言っていいほど違うんだ。僕たちは何が正解か分からない。だからこそ、本当のことを知りたかったんだ」俺は冷たく鋭い視線で、玲央は璃子の良心に語りかけるように、哀しみを滲ませた目で璃子を真っ直ぐ見て話しかける。飴と鞭のような対応に、璃子は言葉に詰まっていた。「璃子は、俺に本郷さんには電話で別れを告げてもう会っていないと言っていたよな?だけど、それは嘘でまだ本郷さんと会っている。そして、あの日、電話で別れを告げたのではなく、実際は、本郷さんのマンションに行き、結婚できるように説得を試みることを約束したんだよな?
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