颯side(俺は、あのまま佐奈と結婚していたらMURAKIの一族になれていたというのか?)あの時、佐奈への愛か璃子との出世のどちらかを選ばなくてはいけないと思っていた。しかし、本当は天秤なんかにかける必要がなかったのだ。佐奈を選んでいれば、幸せな結婚と仕事の成功のどちらも手に入っていたことに俺は激しく後悔した。自分の浅はかさと欲深さが、全てを台無しにしたのだ。璃子の元に戻ると、璃子は不機嫌な態度を隠すこともせずに俺に冷たい視線を向けてきた。「木村さん、MURAKIの娘さんだったんだってね。」俺が何も答えずに力なく沈んでいると、璃子は深いため息をついている。「やっぱり、さっき颯は木村さんを探しに行ったんだ。私には玲央のことを疑って濡れ衣を掛けておきながら、なんなのよ。」「濡れ衣ではないだろ……」璃子の被害者面に苛立って、俺はつい反論してしまった。そのことに璃子も苛立ち言い返してくる。「何よ、人には色々と疑いをかけていたじゃない。忘れたなんて言わせないわよ」「だから濡れ衣ではないだろう。璃子が今も嘘をついていることも本当の行動も俺は全て知っているんだ。
最終更新日 : 2025-11-22 続きを読む