Todos os capítulos de 愛よりもお金をとるのならどうぞご自由に、さようなら: Capítulo 141 - Capítulo 150

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141.母の決断

玲央side翌朝、朝食を終えてチェックアウトを済ませる前に、松田さんに連絡を入れた。これまで僕たちの事情で深く彼を巻き込んでしまった。そんな松田さんを一刻も早くこの状況から解放してあげたかった。そして、松田さんも別れた婚約者と幸せな結末になることを祈っていた。「もしもし、松田さんですか? 朝早くにすみません。……璃子の母親ですが、無事に見つかりました。昨夜、父も交えて話し合い、僕と璃子が血縁関係にある可能性は完全に否定されました。詳しい経緯やこれまでの謝罪は改めて伺いますが、まずはこの事実だけを伝えたくて……」受話器の向こうで松田さんは一瞬絶句したようで、なかなか返事が返ってこなかったが、しばらくすると深く息を吐き出す音が聞こえた。「……本当ですか? よかった」一切の恨みも混じっていない声で祝福してくれる彼の寛大さに熱いものがこみ上げてきた。「まだ問題は山積みですが、もう迷わずに二人で歩いていくつもりです。こんなに長く待ってくれた松田さんが不利益をうけるような事は、絶対にさせません。そのことも含めてまたお話しできたらと思います」僕がそう決意を伝えると、松田さんは「応援しています」と力強い言葉を返してくれた。改めて、彼の協力があったから今の自分たちの希望があることを痛感した。だか
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142.母の決断②

玲央side「おはよう、気持ちは決まったか?」車から父だけが降りて、祐実さんに声を掛けると、手にしたスーツケースの取っ手をぎゅっと握りしめ、俯きがちに消え入りそうな声で言葉を紡ぎ出した。「……ええ。急にいなくなったことで多くの人に多大な迷惑をかけてしまったわ。まずはちゃんと謝罪して、自分のしたことに向き合うために……一旦あの場所に帰ろうと思うの」「そうか。それがいい」祐実さんは少しだけ顔を上げ、遠くの海を見つめるような目で語り始めた。「あとね、もう遅すぎるけれど……夫のことも、彼が私に与えてくれた人生も、これからは大切にしようと思うの。夫は、私の心が彼に向いていないことが分かっていながらも、最期まで私に尽くしてくれたわ。……あの頃は、貴一くんとの関係がバレないように彼と身体を重ねていたけれど、そのおかげで私は璃子を授かることができた。亡くなった後も、私たちが路頭に迷わずに済んだのは、彼のご両親の支えがあったから。夫は、いなくなってからもずっと、私を守ってくれていた」祐実さんは、髪をそっと耳にかけると、少し切なそうだが清々しい表情で父を見た。「昨日、貴一くんがはっきりと拒絶してくれたおかげで、ようやく目が覚めたわ。私たちの恋は、あの三十年前にもうとっく
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143.母の決断③

玲央side璃子は険しい表情のまま、母親とは逆方向の窓の外へと顔を背けていた。けれど、バックミラー越しに見える彼女の横顔は、怒りに震えているのではなく溢れ出しそうな涙を必死に堪えているように僕には見えた。二十年以上の長い想いとこの二日間の衝撃。それを飲み込むには、まだ少し時間が必要なのだろう。やがて璃子が縋るような目で僕の方を見たので視線を返すと、彼女は唇を震わせながら、自分を納得させるように小さく頷いた。「……帰ると決めたなら、さっさと荷物を乗せれば? 」ぶっきらぼうに突き放すような言葉。けれど、それは璃子が今できる精一杯の譲歩の言葉だった。祐実さんはその言葉に目から大粒の涙を溢しながら、「ありがとう」と「ごめんなさい」を何度も繰り返していた。そんな祐実さんを見て、父は静かにスーツケースを受け取りトランクへと積み込み、璃子のいる後部座席に座るようにと促した。車が走り出し伊豆の景色が後ろへと流れていく。車内には張り詰めた沈黙が流れていたが、璃子は静寂を破り、母親と視線を合わせないままの呟くように口を開いた。「二年もいなくなっていたから部屋は汚れているところもあるわ。掃除もしなきゃいけない……それにおじいちゃんだって、なんて言うか分からないわよ」「……ええ、そうね。本当にごめんな
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146.決着

颯side翌日、璃子が祖父である社長に「大事な話がある」と連絡を入れた。祐実さんが見つかったことは既に報告済みだったこともあり、その日の夜、会うことになった。業務時間が終わり、社員たちが足早に帰路に就くのを見計らって、俺と璃子は時間差で社長室へと向かい、扉を開けるとデスクの奥で社長が険しい表情を崩さぬまま、僕たちを待ち構えていた。「祐実さんが見つかったそうだな。今朝、本人から謝罪の電話が入った。二年間も行方をくらまして、一体何をしていたんだ」皮肉と溜め息が混じったような声で吐露している。「それはまだ分かっていないの。私もお母さんと再会できたけれど、混乱していてまだ深い話はできていなくて……」「なんだ。今日、話があると言ったのはそのことじゃないのか?」社長の鋭い視線が璃子を射抜く。璃子は一瞬だけ息を呑んだが、すぐに背筋を伸ばして迷いのない声で告げた。「違うわ。私と松田さんのことよ。……私、松田さんとは結婚できない。松田さんにも伝えて、正式に婚約を破棄することにしたの」「なんだと? 何を勝手に決めているんだ! 今さら婚約をやめるだと? どういうつもりなんだ、理由をしっかり聞かせてもらおうか」
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147.決着②

颯side「そういうつもりじゃない。後継者がいないとこの会社が続かないというのなら、私にチャンスをちょうだい。私自身を、後継者として教育してほしいの」「なんだって?」「後継者になる人と結婚するのではなくて私自身の手でこの会社を守っていきたい。そして、結婚は自分が好きだと信頼できる人としたいの。だから、松田さんとの結婚はなしにして、本郷さんとの結婚を認めてください」璃子は、そう言い切ると深々と頭を下げた。俺はその隣で彼女の勇気を見届けていた。これで俺の役目は終わる。あとは社長がこの「現実」をどう飲み込むかだ。 ――――社長室には、重苦しい静寂な空気が流れている。璃子は頭を下げたまま動かない。その横で、俺もまた社長の裁定を待っていた。社長は深く背もたれに体を預け、組んだ指の隙間から璃子を凝視していた。その瞳には、怒りだけではなく、一人の経営者を見極めるような鋭い光が宿っている。「……璃子を教育しろ、だと?」「はい。誰かに頼るためのではなく、自分の力で会社を守っていきたいです。守るべきものがあるからこそ強くなれると、私は本郷さんから教わりました。だから、私は会社のための結婚はしたくないです。後継者が必要なら、私にやらせてください」
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148.事件

佐奈side蓮と自分の両親に隠し事をしてしまったことに後ろめたさを感じていたが、蓮が守ってくれたことで先のことを考えすぎるのはやめることにした。私たちのペースで進んでいけばいい、そう思っていた時に事件は起こった。「MURAKI、派遣社員の残業代承認せず。社員は過剰労働で過労死―――――」とある支店の支店長が、業績重視・実績がないなら休むなという考えの人物だったようで、営業職の社員に対して振替休日を認めない、深夜残業の圧力などハラスメントを行っていたらしい。その被害は派遣社員にまで飛び火をして、遅くなったのは営業員の責任として会社からは払わないと拒否をし、営業員に直接請求するように言ってきたそうだ。そのことに不満を持った派遣社員が派遣会社を通してクレームを入れ、事態が発覚。人事や関連部門は対応に追われた。被害者遺族への謝罪、派遣社員への残業代の遡り支給と支店長は、役職の降格と再発防止のためハラスメント教育を徹底的に叩きこむことにした。会社の不祥事に胸が痛くなりながらも、残業を終えて帰宅すると蓮から電話が入っていた。(電話なんて珍しいな……何だろう?)「もしもし蓮?おつかれさま」「ああ、おつかれさま」短い言葉だったが、その一言で蓮が沈んでいるこ
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149.事件②

佐奈side事件の波紋は、私の想像を遥かに超える速さで広がっていった。 MURAKIの不祥事は連日ネットニュースやテレビのワイドショーでも取り扱われた。社内の空気は一変し、他支店の派遣社員からも「自分の残業代は正しく支払われているのか」という不安の声が殺到しているそうだ。そんな中、週刊誌の続報は決定打となった。紙面には、藤堂グループから派遣されていた女性の痛切な告白が書かれている、彼女は単に残業代を支払われなかっただけでなく、支店長から「派遣の分際で権利を主張するな」という言葉を投げつけられていたという。(あの時、蓮が元気なかったのは……このせいだったんだ)一週間前の電話の異変がようやく繋がった。 派遣会社の創業者一族である蓮と、今回加害者側になってしまった私の会社。今のタイミングで入籍や結婚に向けた動きが周囲に知られれば、藤堂グループ内でも蓮への激しい反発を招くのは目に見えていた。もしかしたら、この事態を蓮は一週間前から把握していて、既に父親である社長から何か言われていたのかもしれない。その夜、私は震える指で蓮にメッセージを送った。 『蓮、記事を見たよ。被害に遭っていたのは、蓮の会社に登録していた派遣さんなんだね。何か言われていない?今
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150.懐かしい声

佐奈side蓮から連絡が来ないまま二日が過ぎた。今までも、出張期間中など仕事が立て込んでいる時は返事が遅くなることもあったが、特別大切な内容でもなかったし仕事に集中して欲しかったので、特に気にしていなかった。だけど、今回は違う。(お互いの会社間でのトラブルが発生して、心配だから連絡をしていたいと言っているのに……蓮の声を聞いて今後の話をしたり、安心したかったのにな)蓮だってメッセージの内容を見れば重要かそうでないか位、分かるはずだ。ましてや、仕事では、たくさんの取捨選択をして方針を決定し、先頭に立って動かしていく立場だ。そんな蓮が見落としたり、後回しにするとは思えなかった。だからこそ、この空白の時間は、私の事を避けているのではないか、何かご両親から言われて、蓮自身が考え事をしているのではないか、と深い影を落として私の心を不安にさせていた。スマホをぼんやりと眺めては、蓮からの通知がないか確認する。しかし、通知が届くことはなく、現実逃避するようにSNSのタイムラインを指でなぞっていた。 犬が尻尾を振る可愛い動画を見つけ再生ボタンをタップした、その瞬間だった。画面を割り込むように表示された着信に、指が勝手に反応してしまった。(あ、間違えた。ワンちゃんの動画を見て、癒されたかったのに……)
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