「菜乃香、週末は一緒に買い物へ行かないか?」 引越し先は近場だからと、大きなものだけ父に軽トラで先に運んでもらっておいて、細々としたものはマイカーに少しずつ積んでは段階的に引っ越しを済ませた。 その段ボールが粗方片付いて、やっと一息つけるかなと思えるようになった頃。 なおちゃんがそう言って私の髪をすいた。 私が一人暮らしを始めてからは、なおちゃんの借りている市役所傍の駐車場まで私が車で出向いて、なおちゃんを乗せてアパートへ帰って。 そこで2人で2時間ぐらい過ごしてから、また同じように駐車場まで彼を送って行ってさよならをする。 そんなサイクルを繰り返すようになっていた。 情事は専ら私の部屋。 場所はベッドだったり、リビングの床の上だったり台所だったりお風呂場だったり。 今日はベッドで睦み合ったのだけれど、エアコンが効き始めるのを待てずに始めてしまったからか、私にしては珍しく身体がしっとりと汗ばんでしまって。 蝶を模したバレッタでハーフアップにしていた髪の毛は、なおちゃんがキスをしながらいつの間にか外していた。 どの道、髪を束ねたままでは仰向けになった時、頭が痛くて外す羽目にはなったのだろうけれど、それを見越したように先回りするなおちゃんが、やはり手慣れた感じがして憎らしく思えたの。 なおちゃんは、私の首筋や額に汗で張りつくようにほつれた髪の毛を、手櫛で優しく梳きほぐしながら、耳にやんわりと掛けてくれる。 そうして剥き出しになった耳朶を唇で食まれて、クチュリと水音を響かせるように舌先で愛撫された私は、くすぐったさの中に混ざり込む快感に思わず首をすくめた。 「や、んっ」 小さく抗議の声を上げたら、「菜乃香のお母さんはピアスしてるの?」と指の腹先で耳をつままれる。 何てことのない仕草なはずなのに、どうしてなおちゃんがやると何もかもが私の身体をゾクゾクさせるんだろう。 「……し、てる、よ?」 それがどうしたというのだろう。 私自身、耳を飾ることに興味がないわけではない。 ちょっと前まではイヤリングはピアスより少し野暮ったいデザインのものが多かった気がするのだけれど、最近はイヤリングにも繊細なデザインのものが増えてきて、ピアス穴のない私に
Huling Na-update : 2025-11-01 Magbasa pa