Semua Bab 叶わぬ恋だと分かっていても: Bab 31 - Bab 40

78 Bab

11.旅立ち①

なおちゃんからの求めに応じて、金曜日の仕事が終わってすぐ。 私は一旦アパートに戻って前の日に準備していた旅支度のあれこれをたずさえて、最寄りの新幹線駅に向かった。 新幹線の駅付近にはたくさんの駐車場が乱立していて、その全てが1日いくらという料金形態。 当然駅に近い立地の駐車場ほど駐車料金がお高めで、離れた場所ほどお安くなっている。 いつもなら少々歩いてもいいかな?って少し離れた駐車場を利用する私だけど、今回はなおちゃんが「何も気にしなくていいから近場に停めておいで」と言ってくれたので、戸惑いつつもお言葉に甘えて駅に一番近い場所にある駐車場へ愛車を滑り込ませた。 駐車料金は最高値の一泊400円。遠いところの最安値だと250円のところもあるから、結構な差額。 何泊も、となるとこの辺の差が痛くなってくるのかもしれないけれど、幸い私は2泊3日。 実はなおちゃんから、彼が旅立つ前に「旅費」という名目で幾らかのお金を預かっている。 なおちゃんからは福岡行きにかかる経費は一切合切全てそこから賄うように、と言われているけれど、何となく何もかもおんぶに抱っこは彼に申し訳なくて、駐車場料金は自分のお財布から出すことにした。 有人の料金所で愛車のナンバーを告げて3日分の駐車料金を先払いして駐車許可券を発行してもらうと、係の人の指示通りそれをダッシュボード上――、外からよく見える位置に置いた。 それからハッチバックを開けて荷物を取り出すと、主に服でぎっしりになったモスグリーンのトラベルバッグを肩掛けにして、えっちらおっちら駅舎に向かって。 何でこの駅は階段を上った先に作ったんだろう。 盆地になっていて、近くを流れる川が氾濫したら水没しちゃうからかな。 そういえば数年前の台風のとき、このあたり一帯、1mくらい冠水して大変だったんだっけ。 そう思いはするものの、晴天の空の下で大荷物を抱えた身としては、10段ばかりのステップでさえ恨めしい。 よくよく考えてみたら、なおちゃんと一緒にいる時は、彼が何も言わなくても重い荷物をサッと持ち上げてくれていたんだ。 こう言うふとした瞬間に、なおちゃんがそばにいない寂しさを痛感して……。 彼に早く会いたいって恋しさが膨らむの。 重
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-04
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11.旅立ち②

前は有人ゲートで、駅員さんが切符にスタンプを押してくれていたんだけどな。 いつの間にこんな風に変わったんだろう。 新幹線に乗るのなんて、大学生の頃、帰省する折に使って以来だから、実に1年以上ぶり。 自分の預かり知らないところで、世界はどんどん変化しているんだなぁとか妙に感慨深く感じてみたり。 改札を抜けると、ここでもまた階段が。 とにかくこの駅は階段が多いイメージなんだけど、これ、よその新幹線駅も、なのかな。 もちろん、エレベーターやエスカレーターも完備されていたけれど、不倫旅行にうつつを抜かしている自分への戒めも込めて、わざと階段を選んだから余計にしんどくて。 プラットホームに辿り着く頃には、私、すっかり息が上がってしまっていた。 運動不足だよね、これ。本当情けないっ。 最寄り駅のホームには、依然として電動のゲートなどは出来ていなくて、白線の内側を歩かないと何かの拍子に線路に落下してしまいそうな、そんな雰囲気。 前に神戸に旅行に行った時、線路はホームドアに阻まれた向こう側だったけれど、田舎の駅で利用者が少ないからかな。 まだそういう整備はされていないみたいで。 行く前に荷物でふらついて線路に落下!は嫌だから、なるべくホームの真ん中の辺りを歩いた。 どうやらこの駅、山陽新幹線の駅の中でもかなり利用者数が少ない方らしくて1日千人も乗り降りしないみたい。 当然19時近い時刻ともなると、ホームにいる人影も私を含めて5名にも満たなくて。 プラットホームのど真ん中辺りを、そこそこ大きな荷物を抱えて歩いていても誰にも迷惑をかけなくて済むのが有難かった。 なおちゃんに言われた通り指定席のチケットを買ったので、ホームに書かれた案内に従って、自分が乗る車両の昇降口付近まで行くと、近くにあったベンチに腰掛けた。 福岡まで1時間ちょっと。 新幹線の待ち時間含め、あと2時間もしないうちになおちゃんに会えるんだって思ったらワクワクして。 大っぴらには出来ないイケナイ旅行なのに、大好きな人に会えると思うだけで浮き足立ってしまう心に、時折隙間風が吹き込むみたいに罪悪感が流れ込んだ。 なおちゃんは、彼より3つ年下だという奥さんは、自分のことを「亭主元気で留守がいい」と思っているタイプで、なおち
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-05
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11.旅立ち③

2人いらっしゃるというお子さんたちも、中高生の男の子2人だからか、休日など「どこかへ行こうか?」と誘ってもついては来ないし、もう諦めたと言った。 だから菜乃香が俺の家族に対して引け目を感じる必要なんて微塵もないんだよと、彼は言うのだけれど。 当然のこと、私、実際に奥様や息子さんたちと話したわけではないから、真実は分からない。 だけどなおちゃんの言葉を鵜呑みにしてしまうのはやっぱり難しくて。 それに何よりも、自分に置き換えてみれば分かる話だ。 好きで結婚した旦那が、他の女性と仲良くして……あまつさえ肉体関係まであるとか、私なら絶対許せないし、そういうことをする旦那のこと、穢らわしいって思う気がする。 お父さんがよそに女性を作っていて、私とお母さんをないがしろにしたらって思ったらすごくすごく嫌だし、めちゃくちゃ悲しい。 別に幼な子ではないから、私だって子供の頃みたいに「お父さん、どこかへ連れて行って!」とまとわりついたりするわけじゃないし、どちらかと言うとお母さんに比べるとお父さんとは疎遠なぐらいだ。 でも、だからと言ってお父さんのことが気にならないわけじゃないの。 きっとなおちゃんのご家族にしたって同じだと思うから。 なおちゃんを独り占めしたいと思う気持ちが募れば募るほど、常に自分は〝泥棒猫〟なんだという感情がぴったり寄り添うようにくっ付いてくる。 妻子ある男性と、地元を離れて密会をしようとしている自分のことを、とてもずる賢くて酷い女だとも思う。 だけど、その反面、地元では出来ないようなデートを、遠方では出来るんじゃないかと期待もしていて。 私、やっぱり最低だなって再認識させられるの。 ――好きになった人がたまたま妻帯者でした。 そんな綺麗事は、彼が結婚していると知っていながらこんな関係になってしまった私には通用しない言い訳だ。 ホームに滑り込んで来た新幹線に乗り込んで、確保した指定席に座って。 トンネルの合間合間に束の間見える薄暗い窓外をぼんやりと眺めながら、あれこれと取り止めのないことを思っては吐息を落とす。 トンネルに入るたびに車窓が鏡面になって、自分の顔を映す。そのたびダメなことだと分かっていながらなおちゃんと別れることが出来ない浅ましい自分の姿を見せつけら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-06
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12.食欲よりも強く①

福岡に着いたのは20時半前で、当たり前だけど外は真っ暗だった。 知らない土地にひとり。新幹線の中、荷物を手に通路を歩いている時はそんな不安でソワソワしたけれど、いざホームに降り立ってみると、なおちゃんが迎えに来てくれていて。 「え、うそ。なおちゃん……?」 何故ホームまで彼が?と瞳を見開いたら、「入場券でな」って何でもなみたいに言ってくれるの。 もちろん乗り込む前に何時に博多駅へ着く便かはLINEしていたけれど、きっと改札を出たところで待ってくれているんだろうと思っていたから、私、本当にビッっくりして。それと同時にすごく嬉しかったの。 「ほら、菜乃香は方向音痴だからな。どこの出口で待ってるって言っても、ちゃんとたどり着けるか心配だろ? だったらここで捕まえる方が得策だなって思っただけ」 言いながらくしゃりと頭を撫でられて。 「それに……デカイ荷物を持って構内をうろつくの、しんどいだろ」 って当然のように荷物を持ってくれるの。 出立の駅でえっちらおっちら荷物を運びながら、なおちゃんがいつも私を助けてくれていることを意識して切なくなったのを思い出した私は、胸がキュンと甘く疼いた。 「ありがとう、なおちゃん」 ギュッと彼の服のすそを掴んだら「菜乃香、会いたかった……」ってなおちゃんがつぶやいて。 ここまでずっとひとり、なおちゃんのご家族への罪悪感と闘いながら新幹線に揺られてきた私は、その瞬間プツッと緊張の糸が緩んでしまって、鼻の奥がツンとするのを感じた。 毎日のように逢瀬を重ねていたなおちゃんと、たった数日間とはいえ会えずにいた寂しさも、涙腺の決壊に拍車をかける。 「馬鹿。何で泣くんだよ」 私の目が潤んで、ポロリと一粒涙がこぼれ落ちたのに気が付いたなおちゃんが、驚いたみたいに荷物を足元におろして私をギュッと抱きしめてくれて。 「ひとりで新幹線乗んのが怖かった……ってわけじゃねぇよな?」 ってオロオロするの。なおちゃんのそう言うところが、堪らなく大好きだって実感させられる。 「そんなわけな、いっ」 グスグス鼻をすすりながら反論したら、「だったら何なんだよ」って困ったみたいな声音が頭上から降ってきて――。 そろそろと労るように背
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-07
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12.*食欲よりも強く②

私のためになおちゃんが新しく取ってくれた部屋は、同じホテル内でも階が違うから、なおちゃんが私の部屋を訪ねても、居残り組の人たちと鉢合わせる可能性は低いみたい。 エレベーターなどで一緒になる危険性もないわけじゃいけれど、幸い残った面々は他部署の人ばかり。 かつて束の間市役所にいた私の顔を知らない人たちだから、出会ったとしても何とかなるだろって言われて。 なおちゃんの、そういう物怖じしない、どこか堂々とした言動の端々に〝浮気慣れ〟の様なものを感じて、私はふと切なくなるの。 だけど、そんな私だって奥様やお子さんからしたら〝浮気相手〟以外の何ものでもないから。 こんな風に妬きもちを妬く資格すら、きっとないんだと思う。 *** 「菜乃香?」 いつの間にか部屋に着いていたみたいで、なおちゃんがフロントで受け取ったカードキーで部屋の扉を開錠して、怪訝そうな様子で私を振り返る。 「あっ、ご、ごめんなさいっ」 考え事をしていたせいで、気付かないうちになおちゃんから数歩分遅れを取ってしまっていた私は、急いで彼の横に並んで。 なおちゃんにそっと背中を押される様にして部屋に入った。 それと同時――。 荷物を床に置いたなおちゃんに、我慢できないみたいにギュッと抱きしめられた。 まだ背後の扉が閉まり切っていないのに、ってドキドキする気持ちを掻き消すみたいに、なおちゃんが私に深く口付けてくる。 「あ、んっ、……な、おちゃ――」 なおちゃんの腕にギュッとしがみつくようにして、私は懸命に自分の身体を支えながら彼のキスに応えて。 「ねぇお願い。部屋に入ったばっかで悪いけど……先に菜乃香を補充させて?」 唇を離すと同時、甘く切ない声音で耳元にそうささやかれた私は、小さくコクンと頷いた。 仕事から帰宅してすぐ、シャワーを浴びて着替えたのは、私自身彼と再会したらすぐ、こういうことになるかも?って期待していたんだと思う。 私となおちゃんは、どこまでも身体と身体で繋がった関係なのだと。 下腹部に燻りはじめた身を焦がすような熱に溺れながら、嫌と言うほど実感させられる。 私は、彼を誘うように情欲に潤んだ瞳でなおちゃんを見上げた。 「ピアス、外さないとな」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-08
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13.*母からの留守電①

「お母さん、直太朗のこと有難うね」 週末をなおちゃんと一緒に九州で過ごした私は、旅行からの帰り途中、家に直帰せずにフェレットの直太朗を連れ帰るため、実家に立ち寄っていた。 「直太朗、いい子にしてた?」 聞くと、母が「してたよね〜?」と直太朗を愛しそうに見つめて。 その甘々な声音だけで、この子が私不在の数日間を、母に溺愛されて過ごしたのだと実感出来てホッとする。 「あ。これ、お土産ね」 母が好きな、九州の銘菓が入った包みを差し出すと、「わあ、『通りもん』。お母さん、これ大好きよ」とすごく喜んでくれた。 私も大好きなそのお菓子は、柔らかな白餡が舌の上でとろけるような平べったいお饅頭だ。 なんでも「博多西洋和菓子」をコンセプトに、和菓子の伝統技術に、生クリームやバターなど西洋菓子の素材を組み合わせた銘菓らしい。 ねっとりとした白餡と、しっとりした皮が本当に美味しい。 福岡といえばすぐに名前が上がるほど有名な『博多通りもん』は、裏を返せば現地にいれば比較的簡単に手に入るお菓子でもあるということで。 実は金曜の夜から二泊三日、福岡に滞在していたにも関わらず、私、観光らしい観光をしたわけじゃなかった。 *** 地元にいては出来ないから、となおちゃんとふたり、街に繰り出して白昼堂々腕を組んで――まるで普通の恋人同士みたいな――甘い時間を過ごした土曜日。 キャナルシティ博多に行って、お買い物を楽しんだり、噴水ショーを見たり……そういうのを楽しもうねってワクワクしながら行ったんだ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-09
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13.*母からの留守電②

そうしながらノロノロと頭をもたげて背後を振り返った私は、なおちゃんが新たなスキンを開封しているのを見て、思わず息を呑んだ。 「まだ……す、るの?」 およそ私よりひとまわり以上も年が離れているとは思えないほど、なおちゃんは絶倫なのだ、と今更ながら思い知らされる。 「さっき言っただろう? 菜乃香とは何回だってできる気がするって。それに――」 そこで身動きがままならない私の腿をほんの少し抱え上げるようにして、なおちゃんが私の中へ分け入ってきた。 「あぁ、んっ」 もう無理だ、と思っていたはずなのに、私となおちゃんはまるで鍵と鍵穴。 そこになおちゃんが居ることのほうが、まるで常態みたいに私の穴は貪欲に彼を飲み込んで、すぐさまピッタリと肌が馴染んでしまう。 「――こんな風に菜乃香を朝も昼も夜も考えずに抱くことが出来るなんてすごく贅沢だと思わない?」 いつもなら、どんなに激しく求め合って気怠く疲れ果てたとしても、なおちゃんは奥さんとお子さんが待つ家に帰らなければならない。 それを考えなくていいというのは、制約の中でしかお互いを愛することのできない私たちにとって、確かにとても贅沢な時間に思えた。 「私も――」 同じ気持ちだよ、って答えようとしたら、まるでそのタイミングを見計らったみたいに、なおちゃんが赤くぷっくり膨らんだ私の陰核と、ずっと勃ち上がりっぱなしの乳首を指の腹で優しく押しつぶすように可愛がってきて。 「やぁ、んっ。ダメぇっ。いま、そ……んなことされたら、私またっ――」 「何度でもイけ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-10
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14.お母さんの言葉①

『なのちゃん、仕事が終わったらうちに来なさい。いいわね?』 お母さんから有無を言わせぬ口調でそんな留守電が入っていた今日。 私はなおちゃんとの電話を切ったあと、なかなか踏ん切りがつかなくて、車の中に一人ぼんやり座っていた。 日頃はのほほんとしているお母さんの聞き慣れない声音に、私はソワソワしてずっと心がざわついている。 何か悪いことが起こったとしか思えない。 一人暮らしで家を出ている私と違い、未だ実家住まいをしている姉のことをふと思い出した私は、姉に聞いてみることにした。 『あんた、悪いことするときはバレないようにやらなきゃダメじゃない。お母さん、相当悩んでたよ?』 開口一番溜め息混じりに姉がそう言って。 私はなおちゃんとのことが母にバレたことを知った。 「な、んで……」 ――分かったのかな? そう続けたかったけど、喉がカラカラに乾いて紡げなかった。 だけどお姉ちゃんはちゃんと察してくれたみたい。 『菜乃香、昨日うちにお土産持ってきたでしょ? あん中にホテルの領収証が入ってたのよ。相手の名前入りの……』 私が市役所で臨時職員(今は会計年度任用職員というらしいけれど私が働いていた時は臨職と呼ばれていた)をしていたことは、もちろん母も知っている。 というより、懇意にしている市議さんを通して私の仕事の世話をきいてくれたのは、小さな運送会社社長を営む母方の祖父だったから。 私が市役所で働けるように頼んでくれたのはきっと母に他ならない。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-11
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14.お母さんの言葉②

幼稚園の先生からそんな指摘を受けた母が、子供らに絵の描き方を教えていた知人に姉の絵を見せて相談したら、「両親から、特に父親からの愛情に飢えてる子供がよくこんな絵を描くよ? 心当たりない?」と指摘されたんだとか。 その話を受けて、父はすぐに車の営業を辞め、元々持っていた大型自動車の運転免許を活かす形で、義父(私からすると祖父)のやっていた会社に転職したらしい。 父親は、私が生まれた時には既に大型トラックの運転手で、私はお父さんがそれ以外の仕事をしていたことがあると言われてもピンと来なかった。 ただ、家にある車が何度買い替えても同じメーカーの車ばかりだったのは、父が勤めていた時の同僚から車を買っているためだと、子供心に聞かされたのを覚えている。 同僚たちがいなくなってからはあちこちの車メーカーの車に買い替えられるようになったけれど、小さい頃は本当、同じメーカーの車ばかりだった。 そんな父だったけど、私たちが小学校にあがる頃には、たまに泊まりがけで走るような距離――大抵行き先は鳥取県――の仕事に出ることがあった。 そういう時は夜帰ってこない。 恐らく今晩はそれだ。 「今日はお父さん、出雲?」 キッチンに立って夕飯の支度をしている母に、何の気なしを装って聞けば、「うん、そう」とつぶやくような返事があって。 お母さんの声も沈んで聞こえて、私は心臓をギュッと掴まれたような息苦しさを覚える。 姉は私が今日ここへ来ることを知っているから、わざと寄り道をして帰るって言ってた。 『私は邪魔しないようにするからしっかりお母さんと話し合いな』 姉にそう言われたのを思い出して、私はギュッと拳を握りしめた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-12
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15.嘘でもいいから①

「あのね、なおちゃん。お母さんに私たちのこと、バレちゃったの」 実家からの呼び出しがあった夜。 私はアパートに戻るなりなおちゃんに電話をかけた。 コール数回。 いつものようになおちゃんは私からの電話にすぐに応答してくれた。 *** なおちゃんは年老いた盲目のお母さんと、奥さん、息子さん二人と一緒に住んでいる(らしい)。 なのに、私にはいつでも電話してきて構わないって言うの。 実際いつかけても彼は問題なく電話に出てくれて、そればかりか別段コソコソした様子もなく受け答えしてくれる。 以前なおちゃんが自嘲気味に「家族は俺のことなんて興味持ってないからね」って話してくれたことがあるけれど、こんな風に電話がいつでも通じてしまうたび、あの言葉は真実なのかなって思わされて切なくなった。 私にとって、掛け替えのない人になってしまったなおちゃん。 そんなに興味ないなら、必要ないなら私にちょうだい?って思ってしまう。 私が全身全霊かけて彼の寂しさを埋めるから、大切にするからお願い!って愚かなことを考えてしまう。 私はお馬鹿さんだから、なおちゃんが私に付き合おうって言ってきた時、最初に何て言ったか、つい忘れてしまいそうになるの。 あの時なおちゃんは「妻に対して恋愛感情はないけれど家族としての情はある。それを分かって欲しいんだ」って言った。 それをわきまえた上で付き合って欲しい、って。 そんななおちゃんが、彼が言うところの〝自分に無関心な家族〟を捨てて、健気に自分だけを想う愚かな小娘のことを選んでくれる日なんて、決して訪れやしないって分かってるのに。 世間一般で言うところの〝コソコソとした不倫〟とは違う自分の境遇に、少しだけ。 そうほんの少しだけ。 もしかしたら明るい未来が拓けるかも? なおちゃんの気持ちが告白時とは変わっているかも?と、有り得ない期待をしてしまう、恋に溺れた哀れな自分が私。 その浅はかさが、ズルズルとなおちゃんとの実りのない関係を引き伸ばしてしまっていたのだけれど、それも今日でお終いにするの。 私は……私を大切にしてくれる家族をこれ以上裏切れない。 だから――。 *** 『親に……バレた? 原因は?』 私にとっては一大事の告白だったの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-13
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