駐車場に車が入り、御堂に丁寧に礼を述べて和彦だけが車を降りる。ここで、一人の男がこちらに向かってくるのに気づいた。 駐車場に敷かれたアスファルトから立ちのぼる陽炎を蹴散らす勢いでやってくるのは、南郷だ。 本能的な危機感から、ゾクリと寒気がする。和彦は車のドアに手をかけたまま、軽くよろめいていた。それに気づいた御堂が車中から声をかけてくる。「佐伯くん?」 その御堂も南郷に気づいたらしく、すぐに車から降り、和彦の傍らに立った。 目の前に立った南郷は、珍しく怒気を露わにしていた。鋭い視線を向けた先は、御堂だ。「――勝手に先生を連れ出して、どういうつもりだ、御堂」 自分に向けられたわけでもないのに、南郷の低く抑えた声を聞いて、和彦の身は竦む。一方、凄まれた御堂のほうは表情を動かしもせず、淡々と応じた。「ずいぶんな言い方だな。〈佐伯くん〉が散歩に行きたいと言うから、護衛のために同行しただけだ」 本当かと問うように、南郷がこちらを見る。和彦が頷くと、忌々しげに舌打ちした南郷が、再び御堂と向き直った。 荒々しく凶暴な空気を振り撒きながらも、和彦の前では悠然として、言動も最低限紳士的に振る舞っている男にしては珍しく、余裕がなかった。 御堂はあえて挑発するように、南郷に冷ややかな笑みを向けた。「長嶺会長のために、君が佐伯くんを大事にしているのはわかるが、こちらの事情も斟酌してほしいな、南郷。彼は、わたしの友人である長嶺組長にとっても、大事な人だ。つまりわたしにとっても、大事な人というわけだ」 南郷と御堂が視線を交わす。まるで、眼差しで切りつけ合っているような迫力に、完全に和彦は呑まれていた。同時に、総和会会長の側近である南郷と、ここまで対等に言い合える御堂とは何者なのか、改めて気になった。 いつの間にか御堂の秀麗な横顔に見入っていたが、ふいに南郷の手が肩にかかって我に返る。「先生、こんな暑い場所にいつまでもいたら、体によくない。中に入ってくれ」 南郷の手にわずかに力が入る。ギリギリのところで激情を抑えているのだと察した和彦は、逆らえなかった。御堂に頭を下げてもう一度礼を言うと、南郷に促さ
Read more