御堂を『あいつ』と呼ぶ賢吾の口調は、特別な響きを帯びている。胸の奥で不穏なものを呼び起こされそうで、和彦はうかがうように賢吾の横顔を見る。すると賢吾が、横目でこちらを一瞥した。「――俺が秋慈と寝たんじゃないかと思ってるだろ、先生」「べっ、別に、そんなこと……。もしそうだとしても、ぼくは気にしない。責める権利もないし」 握られたままの手を掴み寄せられ、手の甲に賢吾の唇が押し当てられる。触れたところがジンと痺れるほど、熱い唇だった。「俺と秋慈は、戦友ってやつだ。色っぽいやり取りは一切ない。俺のほうが年上だが、総和会の総本部では、俺があいつに頭を下げていた時期もあったんだぜ。そんな奴に手を出すほど、俺も命知らずじゃねーしな」「……ぼくに手を出すのは、容易かっただろ」 思わず冷たい眼差しを向けると、賢吾は悪びれることなくニヤリと笑った。「まあな。だが、俺が先生にとことん骨抜きになったのは、自分でも予想外だった」「そんなこと言われても、ぼくは喜ばないからな」 御堂との関係を誤魔化そうとしているのではないかと、いつになく疑り深くなっていた和彦は、素っ気なく顔を背ける。 機嫌を取ってもらうのを待っているなと、自覚はあった。まるで賢吾に媚びているようで、そんな自分が堪らなく嫌なのだが、どうしても胸の内に抱えた感情を表に出さずにはいられない。御堂に対して、個人的に好印象を抱きつつあった中、あんな衝撃的な光景を見てしまったため、頭が混乱しているせいもあるだろう。 ふと、髪に何か触れる。慌てて振り返ると、賢吾が髪に指を絡めていた。「まだ話は終わってないぞ、先生」 賢吾の真剣な顔を見た和彦は、まだ肝心なことを聞いていないことを思い出す。「さっきの〈あれ〉は……」「先生に見せてやれと言ったのは、秋慈だ。あの辺りは清道会のシマで、二人にとっては、逢引するには最適で、もっとも安全な場所なんだそうだ。――突然、秋慈が俺に電話してきたかと思ったら、先生の人生を奪って、オンナにしたんなら、惨めな思いはさせるなと説教された。&helli
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