LOGIN鷹津から与えられる痛みは、肉の悦びを引き出すある種の媚薬だ。和彦の体は、そう覚えてしまっている。それを鷹津に悟られたくなくて、つい憎まれ口を叩く。
「相変わらず、あんたとのセックスは、痛い……」「痛いのが、イイんだろ。――和彦」 内奥を犯しながら、鷹津の片手が欲望にかかる。痛いと言いながらも、和彦の欲望は萎えることなく反応し、反り返ったまま透明なしずくを滴らせていた。「舐めてやったばかりだから、反応がいい。ここも、舐めてやった」 柔らかな膨らみを指でまさぐられ、内奥に呑み込みつつある鷹津の欲望をきつく締め付ける。鷹津は低く笑い声を洩らして腰を揺すった。「……ここは、舐めてやるより、突っ込まれるほうがイイみたいだな」「うる、さい……」 突き上げられるたびに、耐え難い苦しさが押し寄せてくるが、しかしそれが、鷹津と深く繋がりつつあることを強く意識させられる。 深々と挿入された欲望が、興奮を物語るよ畳んだ自分の服を抱え、和彦は小さく唸り声を洩らす。守光から与えられている客間は、すっかりもう和彦の自室という様相だ。 自宅マンションから必要に応じて服などを持ってきてもらっているためだが、客人らしく、遠慮しつつ部屋を使っているつもりだったのだ。なのに昨日、これを使ってくださいと、とうとう衣類用の収納ケースが客間に運び込まれてしまった。 勘繰りたくはないが、『和彦のために』と言いながら、これから本格的に家具が配置されていくのではないかと、つい身構えてしまう。「……少し、マンションに持って帰ろうかな……」 せっかくクリニックが休みになるのだし、と声に出さずに続ける。 世間はいよいよ、盆休みに突入する。多忙な生活を送っている和彦としては、堂々とクリニックを閉められる行事は歓迎したいところだが、ゆっくりできると素直に喜べるほど能天気ではない。これまでの経験で、休日を自由に過ごせた試しがないのだ。 明日から約一週間、クリニックを閉めることになるが、どれぐらい休日として過ごせるだろうかと、すでにもう戦々恐々としている。 できることならマンションに戻り、のんびりと寛ぎたいところだが、そういう希望すら、まだ守光に切り出せないでいた。 一人になりたいと思いつつ、一人になるのが少し怖いという気持ちも和彦にはあった。 数日前の鷹津との狂おしい行為を思い返した途端、胸の奥が妖しくざわつく。鷹津の腕の中で肉欲の獣に成り果てたときの高揚感は忘れ難い。同時に、鷹津の強引さに屈服させられた自身の浅ましさを、痛感もさせられる。 鷹津との間にあったことを誰かに知られたらと考えると、寒気がする。賢吾にもさんざん指摘されてきたが、和彦は隠し事には向かない性格だ。特に、特別な関係を持つ男のことについては。 長嶺の男は怖い――と、心の中でひっそりと呟いたとき、客間の外で騒々しい足音が聞こえてくる。和彦が知る限り、こんなににぎやかな気配を立てる人間は一人しかいない。ぎょっとすると同時に襖が開き、慌しく千尋が飛び込んできた。「――先生、海に行こうっ」 夏休みを待ちわびていた小学生かと思いつつ、和彦
早く体を離さなければと危機感を抱きながらも、心の大部分では、今味わっている心地よさを手放せないでいた。それは鷹津も同じらしく、再び緩やかに腰を揺らし始めたかと思うと、内奥に収まっている欲望が熱さと硬さを取り戻していく。まだ、興奮しているのだ。「あぁ――……」 和彦が吐息をこぼすと、鷹津がわずかに唇を緩めた。「まだ俺を、欲しがってるな。お前の尻がいやらしく吸い付いて、締まりまくっている。俺のオンナになれて、そんなに嬉しいか」「……うる、さい……」 内奥深くをぐうっと突き上げられて、喉を反らして尾を引く悦びの声を上げる。露わになった和彦の首筋を舐め上げて、鷹津が囁いてきた。「もう一度犯してやる。俺の汗と精液の匂いがこびりつくほど、たっぷりとな」 和彦が感じたのは恐怖でも嫌悪でもなく、狂おしい肉欲の疼きだった。すでに二度も精を放ったというのに、熱いものが出口を求めて、体の奥でドロドロと渦巻いている。 鷹津の舌先に胸の突起を転がされ、激しく濡れた音を立てて吸われてから、歯を立てられる。痕跡を残すなと、もう言えなかった。 蕩けた和彦を見下ろして、鷹津が真剣な表情で肌にてのひらを這わせてくる。〈オンナ〉となった和彦の存在を確かめるかのような手つきに、鷹津が変わったのか、自分が変わったのか、和彦はひどく感じてしまう。「あっ、やめっ――」 力を失った欲望をてのひらに包み込まれ、上擦った声を洩らす。「今の乱れっぷりなら、空になるほど精液を搾り取れそうだな」 淫らで物騒なことを呟きながら、鷹津の手が柔らかな膨らみにかかる。きつく揉みしだかれて、和彦は腰をくねらせて反応しながら、食い千切らんばかりに内奥で脈打つ欲望を締め付ける。すがるように鷹津を見上げると、どこか恍惚としたような笑みを向けられた。「……忌々しいほど、いいオンナだ。お前は。わかっていても、骨抜きになる。……クソむかつく」 次の瞬間、内奥から欲望が引き抜かれ、和彦の体は乱暴にうつ伏せにされて腰を抱え上げ
「――俺も味わいたくなった。お前をオンナにしている男たちの気分を」 快感で鈍くなった頭では、鷹津の言葉の意味を瞬時に理解するのは無理だった。和彦はゆっくりと瞬きを繰り返し、目の前で見たこともない表情を浮かべている男を凝視する。鷹津は、怖いほど真剣な顔をしていた。両目にあったドロドロとした感情の澱は払拭され、純粋な欲情だけを湛えている。 この男は誰だと、和彦は自問する。まるで知らない男が体の奥深くに居座っているようだった。 本能的な怯えから身を捩ろうとしたが、当然できるはずもなく、それどころか内奥を深く突き上げられて快感に身を震わせ、鷹津にすべてを委ねることしかできない。「はあっ、あっ、くうっ……ん」「なあ、俺のオンナになれ」 緩やかな律動とともに、鷹津が掠れた声で囁く。和彦は首を横に振ることも許されず、唇を塞がれる。体が鷹津に満たされ、窒息してしまいそうな危惧を覚える。「ダメ、だ。それは……、そんなこと、知られた、ら……」「長嶺の男たちに八つ裂きにされるか? なら俺が、そいつらを引き剥がしてやる」 無理だと言いたかったが、やはり鷹津は聞く気がないらしく、また口づけを与えられる。和彦から、欲しい返事をもぎ取る気なのだ。 律動が早くなり、和彦は必死に鷹津にしがみつく。下肢から送りこまれる肉の愉悦に、思考力が押し流されてしまいそうだ。そこに鷹津がつけ込む。「そう、深く考えるな。仮にも俺は、刑事だ。お前の生活を支配できる力なんてない。言葉遊びのようなもんだ。俺はただ、お前をオンナと呼んで、愉しみたいだけだ」「……どうして、そんなこと……。いや、ダメだ――」「お前が認めないなら、ずっと続けるぞ。俺はそれでもいいが、外でお前を待ち続けている連中は、さすがに何事かと思うんじゃねーか。電話をかけて様子をうかがってくるか、いきなりここまで上がってくるか。どっちだと思う?」 鷹津がこんなことを言い出した意味を必死に考えようとするが、返事を急かすように鷹津は動き続け、快感に弱い和
鷹津から与えられる痛みは、肉の悦びを引き出すある種の媚薬だ。和彦の体は、そう覚えてしまっている。それを鷹津に悟られたくなくて、つい憎まれ口を叩く。「相変わらず、あんたとのセックスは、痛い……」「痛いのが、イイんだろ。――和彦」 内奥を犯しながら、鷹津の片手が欲望にかかる。痛いと言いながらも、和彦の欲望は萎えることなく反応し、反り返ったまま透明なしずくを滴らせていた。「舐めてやったばかりだから、反応がいい。ここも、舐めてやった」 柔らかな膨らみを指でまさぐられ、内奥に呑み込みつつある鷹津の欲望をきつく締め付ける。鷹津は低く笑い声を洩らして腰を揺すった。「……ここは、舐めてやるより、突っ込まれるほうがイイみたいだな」「うる、さい……」 突き上げられるたびに、耐え難い苦しさが押し寄せてくるが、しかしそれが、鷹津と深く繋がりつつあることを強く意識させられる。 深々と挿入された欲望が、興奮を物語るように力強く脈打ち、和彦の官能を内から刺激してくる。「あっ、ああっ――」 甲高い声を上げると、誘われたように鷹津が顔を覗き込んでくる。寸前に品のない台詞を口にしたばかりとは思えない真摯な表情をしており、和彦は見入ってしまう。唇が重なってきても、素直に受け入れていた。 舌を絡め合いながら、下肢では繋がった部分を擦りつけ合う。和彦は、両手をさまよわせるように鷹津の背に回し、熱くなった肌を撫で回す。悔しいが、鷹津と繋がり、重なっている感触が気持ちよかった。「――……気持ちいいだろ、俺とのセックスは」 口づけの合間に鷹津に囁かれ、快感に酔いつつあった和彦は意地を張ることもできなかった。「ああ……」「俺もだ。クソ忌々しいほど、お前とのセックスはいい」 他に言いようがないのだろうかと思ったが、なんとも鷹津らしいとも思え、意識しないまま和彦は唇を緩める。自分が笑っているのだと気づいたのは、食い入るように見つめてくる鷹津の眼差しによってだった。
すでにもう期待で凝っている胸の突起をきつく吸い上げられ、堪らず甘い声を上げる。勢いづいたように鷹津が執拗に突起を舌先で擦り、軽く歯を立て引っ張り上げる。もう片方の突起も指の腹で転がされたかと思うと、強く指で摘まれる。 濡れた音を立てて鷹津が突起から唇を離すと、唾液で濡れ、真っ赤に色づいていた。その様子に満足したように鷹津はそっと目を細めると、胸の中央に唇を押し当て、肌を吸い上げる。二度、三度と繰り返されたところで和彦は、鷹津の意図を察した。「跡は、つけないでくれ」「毎晩、総和会のジジイに体をチェックされるのか?」「そうじゃないけど……、何があるか、わからない」「相手をする男が多いと大変だな」「……そうだ、大変なんだ」 鷹津の皮肉に素直に応じると、さすがに苦笑で返された。 胸の中央から腹部へと舌先を這わされながら、両足を押し広げられる。途中、ヘソにも舌先を潜り込まされ、和彦は下肢をもじつかせて感じる。しかし、やはり一番敏感に反応してしまうのは、すでに身を起こしかけた欲望をじっくりと舐め上げられたときだった。「んあっ……、あっ、あっ、はあぁっ――」 無意識に、腰を浮かせて愛撫から逃れようとしていたが、しっかりと鷹津に両足を抱え込まれる。 鷹津からの口淫をあまり受けたことのない和彦は、クリニックの仮眠室で、いきなりこの行為に及ばれたことに戸惑う。だが、与えられる感触には素直に反応してしまう。 括れまで口腔に含まれ、唇で締め付けられながら、先端を舌先で弄られる。和彦は吐息をこぼして仰け反る。ためらいつつも片手を伸ばし、鷹津の頭に触れる。きちんと整えられたオールバックの髪型を崩すのはしのびなかったが、先端をきつく吸われて、呆気なく理性が弾け飛ぶ。「あうっ……」 鷹津の髪に指を差し込み、狂おしく掻き乱す。鷹津は制止することはなく、それどころか和彦にさらに乱れてみせろと言わんばかりに、欲望を口腔深くまで呑み込んでしまった。口腔全体で欲望を締め付けられながら、柔らかな膨らみをてのひらできつく揉み込ま
鷹津の意図を察して後退ろうとしたが、再び両腕の中に捉えられる。和彦は、迫ってくる鷹津の顔をじっと見つめていたが、息もかかるほどの距離となったところで、思わずこう言っていた。「この間も思ったが、あんた、少し様子がおかしい……」 鷹津は唇を歪めるようにして皮肉げな笑みを浮かべた。「具体的には」「どうして、目立つようなことをした。あんなことをしたら、総和会に目をつけられるだけだ。せめて、目立たないよう見張ることぐらいできただろ。今日だって、連絡もなしにいきなりやってきた。もし、ぼくがもう帰っていたら――」「飼い主を心配しての行動だと言ったら、信じるか?」 冗談めかして言われた和彦は、鷹津の頬に手をかけ、間近から目を覗き込む。ドロドロとした感情の澱が透けて見える目は、いつもの鷹津だ。だが、何かが違うのだ。「……あんたがそんなに、飼い主思いだったなんて、初めて知った」「冗談だ。ただ、ムカついているだけだ。クズどもの集まりの中で、お前が姫様みたいにちやほやされているのかと思ったら」「ムカつくのは勝手だが、あんたに迷惑はかけてない」「それだ。俺の知らないところで、お前は物騒な男たちの理屈に翻弄される。それがムカつく」 いい歳をした男の語彙として問題があるのではないかと思いながらも、不思議な感覚だった。無礼で嫌な男である鷹津が、和彦のことで苛立っているのだ。「自分勝手なことを言っていると、わかってるか?」「ああ。ただもう、理屈なんてどうでもよくなってきた」 次の瞬間、堪え切れなくなったように鷹津が唇を重ねてきた。驚いた和彦は軽く目を見開いたものの、鷹津が洩らした吐息が唇に触れた途端、胸の奥から狂おしい感情が突き上げてくるのを感じた。 鷹津だけではなく、和彦自身もおかしかった。患者を見殺しにしてしまい、気持ちが塞ぎ込んでいるときに鷹津と体を重ねたが、あのとき、この嫌な男は確かに特別な存在となっていた。和彦は、鷹津の体を〈愛した〉のだ。そう実感しながらのセックスは、体だけではなく心でも気持ちよかった。 情が湧いたあと、体だけの関係とは
**** 別に、やましいことはしていないのだ。 誰に対してなのか、和彦は心の中で言い訳する。やましいことはしていないはずなのに、どうしてこう、悪いことをしているような妙な罪悪感を覚えるのか――。 ガラス張りのショールームをぐるりと見回した和彦は、落ち着かない気分で髪を掻き上げる。自意識過剰のつもりはないが、この店に着いたときから、誰かに見られているような気がして仕方ない。 原因はわかっている。和彦についている、長嶺組の護衛のせいだ。「――佐伯先生、どうかしましたか?」
「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく
**** ブランケットに包まってうとうとしていた和彦は、窓を叩く雨の存在に気づいていた。朝から雨というと、普通なら憂鬱になりそうだが、ここのところの晴天続きに辟易していたところなので、雨音が妙に耳に心地いい。 ただし、湿気を含んだ暑さを堪能する気はないので、今日は部屋に閉じこもって、書類仕事を片付けてのんびりしよう――。 和彦は取り留めもなくそんなことを考えながら、雨音を聞いていた。しかし、そんな穏やかな目覚めをぶち壊すように、無遠慮に電話が鳴った。この時間、電話をかけてくる人物はわかっている。
嫌という生易しい感覚ではなかったが、さんざん快感を与えられ続けた体は、蜜を含んだように重く、思考もまた、同じような状態だった。 「―― 俺の〈オンナ〉の中を、指できれいにしてやってくれ。お前も、まったく知らない場所じゃないだろ。うちの組で、俺と千尋以外に先生の尻を開いてやったのは、お前だけだ」 ビクリと腰を震わせて、一瞬だけ和彦は抵抗しようとしたが、三田村の指が内奥に挿入されたとき、賢吾の腕の中で悶え、溶けていた。**** 長嶺の本宅で、布団に横になっていた和彦は、三田村の手を取って胸元に







