** 夕食前に和彦は、鷹津がキッチンに立っている隙に少しだけ外に出てみたが、世界が一変したかのような静寂と、積もる雪の白さに息を呑んだ。このまま降り続いたら、この場所はすっぽりと雪に覆われてしまうのではないかと不安が首をもたげたが、一方で、物理的に隔絶されるということに、抗いがたい魅力も感じていた。 外はすでに真っ暗で、玄関灯の明かりがかろうじて周囲をぼんやりと照らしているだけだ。明かりの届かない場所まで行ったとき、そのまま闇にさらわれてしまうのではないか――。 和彦はふらりとウッドデッキの階段に足を踏み出そうとしたが、試みは成功しなかった。背後から鷹津に首根っこを掴まれて、部屋に連れ戻されたからだ。 今晩は特に冷え込むということで、夕食はおでんだった。手の込んだ料理は作れないため、ダシもついたおでん種のセットを鷹津が買ってきていたのだ。煮込み担当も鷹津で、料理ができないというわりに、意外に刃物の扱いや準備などが手慣れている理由を問うと、山登りをしていた頃はやむなく自分で作っていたのだという。 その頃の話を和彦はもっと聞きたかったが、おでんを食べて体が温まっているうちにシャワーを浴びてこいと、追い立てられてしまった。 まず熱湯を出して狭いシャワー室内を暖めてから、急いで体を洗う。換気扇から入り込んでくる冷気は厄介で、のんびりしていると、湯を浴びている端から体が冷えてくるのだ。替えのスウェットの上下を着込み、慌ただしくリビングダイニングに戻って薪ストーブの前に陣取る。水滴が落ちている髪を拭いていると、キッチンから鷹津が出てきた。「しっかり髪を乾かしておけよ。湯冷めするぞ」「湯冷めどころか、そもそも温まる暇がなかった。――早く、温泉に入りに行きたい」「お前、毎日言ってるな。それ。……残念だが、確実に明日は無理だろうな」 夜のうちに水道が凍るかもしれないからと、鷹津もシャワーを浴びてくるのを待ってから洗濯を済ませる。梁と梁の間に張ったロープに洗濯物を干していくと、それでなくてもコンパクトな部屋は一層狭く感じられるが、仕方ない。それに、生活感が増した空間を和彦は嫌いではなかった。 総子が送っ
Huling Na-update : 2026-09-06 Magbasa pa