玲は納得しきれていないようだが、だからといって抗弁もしてこない。多少なりと警戒心が芽生えてくれたらと願わずにはいられない。「無茶をするのは今日でやめます。次からはきちんと連絡して、佐伯さんと約束を取り付けるようにします」 ううーん、と唸って和彦は首を捻る。それはそれでこちらが困るのだと言いかけたとき、テーブルの上に置いてある玲のスマートフォンの画面が光った。どうやらメッセージが届いたらしい。スマートフォンを取り上げた玲が、しまった、という顔をする。「父さんからだ……」 ぽつりと呟いて、顔をしかめながらメッセージを確認している。「何て書いてある?」「……めちゃくちゃ怒ってます。父さんには言わないで、今日ここまで来ましたから。でも――」 二人揃って外の通りに目を向ける。外で待機している男たちは、必死で玲を追跡してきたのだろう。名も知らぬ男たちに対して急に労わりの気持ちが湧いてくる。本人は不本意だろうが、伊勢崎組の人間を引き連れてとなると、玲を普通の大学生と称するのはかなり無理があった。そこに総和会の第一遊撃隊も加わっているかもしれないとしたら、なおさらだ。 物言いたげな和彦の視線を受け、玲はもごもごと言い訳のように呟いた。「俺としてはバレないよう動いてたつもりですけど、行動を読まれてたみたいです」「君についてる人たちは有能なんだよ。ほら、今から帰るって、お父さんには早く連絡するんだ。さらに大事になったら困るだろ」 和彦の呆れた表情からさすがに危機感が芽生えたのか、玲は慌ただしくメッセージをやり取りをしていたが、急に大きくため息をついてガクリと肩を落とした。「大丈夫、か?」「すぐ帰って来いと言われました。帰ったら絶対、ぶん殴られます」「顔はやめてもらうんだよ」 本気で気遣う和彦に、玲は情けない顔をして頷く。財布を取り出そうとしたので、ここは自分が払っておくと告げる。 立ち上がった玲が片手を差し出してきた。何事かと首を傾げた和彦を、ただじっと玲が見下ろしてくる。おそらく握手を求めているのだろうと察して、おずおずと手を握る。
Huling Na-update : 2026-10-14 Magbasa pa