** 両手に荷物を提げ持った和彦を見るなり、イスに腰掛けた鷹津はふっと笑みをこぼした。 スーパーの一角にある自販機が置かれた休憩所で、壁際のテーブルについた鷹津の前には、空の紙コップと新聞紙があった。和彦を待っている間、よほど暇だったらしい。ここぞとばかりに本を買い込んできた和彦は、さりげなく書店の紙袋を後ろ手に隠すが、それに気づかない鷹津ではない。 「お前に本を頼まれるたびに、正直頭を痛めてたんだ。――欲しい本は買えたか?」 「……ああ。これでしばらくは大丈夫」 「そりゃよかった」 ドラッグストアでも必要なものは買えたので、和彦は非常に満足している。鷹津はのっそりと立ち上がると、テーブルの上を片付ける。スーパーで野菜とアルコール類を買っておきたいというので、和彦もつき合う。 そのあと、待ちかねていた温泉へと向かう。 「昼間から温泉に入るなんて、贅沢だ……」 山間にあるという温泉に向かうため、ちょっとしたドライブとなる。車にカーナビはついていないのだが、鷹津の運転に迷いはない。やはりこの土地に馴染み深いようだ。登山をしていた頃、この近くの山にもよく登っていたと話してくれたことはあるが、誰と、いつ頃のことなのか、そこまでは聞けなかったのだ。 鷹津の過去にどこまで踏み込んでいいのか、和彦はいまだ測りかねている。知らなくてもいいことなのだろうが、こちらの家庭事情のほとんどを把握されていることを思うと、なんとなく不公平ではないかと和彦は感じる。 カーラジオからは天気予報が流れている。明日から天候が荒れ、雪が数日続く見込みだという予報に、鷹津が小さく舌打ちをする。和彦はのんびりとしたもので、日課となったジョギングができない間は、ログハウス周辺の雪かきをして体を動かそうかと、ぼんやりと考えていた。すると唐突に鷹津に問われた。 「――帰りにケーキでも買って帰るか?」 「どうして」 数瞬、鷹津が言い淀む。 「……やっぱりいい。今の提案は忘れろ」 そんな言い方をされると、かえって気になる。和彦がじっと視線を向け続けると、渋々、鷹津は口を開いた。 「たぶん、お前の誕生日当日は
Dernière mise à jour : 2026-09-10 Read More