夜も更けた頃、佐久間家の広大な庭園の一角、白亜の東屋でのこと。澪は石の腰かけにゆったりと腰を下ろし、夜の庭園を眺めていた。その前に頭を垂れ、恭しく立っているのは、どこか端正な顔立ちをした男のボディーガードだった。「知生さん、久しぶりね。元気にしてた?」「おかげさまで。お嬢様」志賀知生(しが ともお)は澪より六つ年上で、長年光一のそばに仕えてきた男だ。瑠璃子と同じく光一専属のボディーガードであり、澪が少女から大人へと少しずつ成長していく様子を間近で見守ってきた分、言葉では言い表せない感情を積み重ねていた。「お嬢様、またこうしてお目にかかれて光栄です。ずっと、お会いしたかったです」彼は澪のビスクドールのように精巧な顔を見つめながら、あふれる本心をそのまま口にした。澪は目を細めて、蕩けるような笑みを浮かべた。「私も会いたかったわ、知生……」「知生」という甘い響きに、知生の頬がかっと熱くなり、胸の奥を痺れさせるような甘美な感覚に包まれる。男の赤くなった顔を眺めながら、澪は内心で冷ややかに鼻で笑い、口には甘い蜜をたっぷりと塗りたくったような声を乗せた。「実はね……あなたにしか頼めないことがあるの」「なんなりとおっしゃってください、知っていることは何でもお話しします!」と知生が勢い込んで答える。「小山瑠璃子のこと」澪は手で頬杖をつきながら言った。「お兄ちゃんとあの子、本当のところどんな関係なの……愛人とか?」知生の瞳が大きく揺れた。彼は視線をさまよわせ、言葉を濁す。「そ、それは……小山さんは光一様のボディーガードですよ。確かに人目を引く容姿をしていますが、光一様にとって彼女は使い勝手のいい部下というだけで――」澪の表情が明らかに強張ったのを見て、知生は慌てて付け加えた。「でも彼女なんて、ありきたりな美しさでしかありませんよ!お嬢様の若さと美貌、そして気品には、遠く及びません。あの人はお嬢様の髪の毛一本にも敵いませんよ!」その言葉に、澪の強張った顔がわずかにほぐれた。「それにほら、小山さんは以前、光一様の命を救ったことがあって、銃弾を受けて、旦那様の制裁まで受けたんです。光一様にとって彼女は命の恩人ですから、多少特別扱いするのも無理はないんですが……」「ふん、命を救うのがボディーガードの仕事でしょう。それが『盾』
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