彩葉は、シンプルながらも洗練されたデザインの服を二着試着した。無駄のないラインが彼女のほっそりとしたウエストに美しく映え、しなやかなボディラインをはっきりと際立たせていた。その見事な着こなしに、夢は目を丸くしてすっかり見惚れてしまっていた。「ほんっとうに信じられない!氷室社長って、毎朝顔も洗わないから、何も見えてないんじゃないですかね!?彩葉さんみたいなこんなに素敵な奥さんがすぐそばにいるのに満足できなくて、よりによってあんな薄っぺらい性悪女をどこかから引っ張ってくるなんて、絶対にどうかしてます!」「……あの人の話はもうやめましょう。気分が悪くなるわ」彩葉は静かに首を横に振り、元の服に着替えると、試着した二着を店員へ差し出した。「この二着を包んでいただけますか」店員はパッと顔を輝かせ、愛想の良い笑みを浮かべた。「ありがとうございます!二着で合計、487万円でございます。お支払いはどのようになさいますか?」夢は、ぽかんと口を開けた。「……えっ?」その金額を聞いた瞬間、夢は危うく目の前が真っ暗になりかけた。一方、彩葉は眉ひとつ動かさずにカードを差し出した。――内心では、さすがに少し痛い出費だとは思っていた。だが、今の彩葉の立場は以前とは違う。ターナルテックの代表として、これから様々な公の場へ出る機会が避けては通れない。あまりにも地味な格好をしていては周囲から見くびられるし、商談の席でも足元を見られてしまう。「人は見た目で判断される」という残酷なルールは、ビジネスの世界に確かに存在しているのだから。二人は会計を済ませ、エスカレーターで下の階へと向かった。その途中で、一階のフロアから雫の甘ったるい声が聞こえてきた。「ねえ、蒼真さん。この背中のジッパー、上まで上げてもらえる?手が届かなくて……」蒼真は長い睫毛を静かに伏せ、大きな手のひらを雫の腰のあたりへそっと手を添えると、途中まで上がっていたジッパーをゆっくりと引き上げてやった。ブティックの柔らかな間接照明の下、二人の間には、ふわりと親密で甘やかな空気が漂っている。そんな何気ない、ごく自然なスキンシップ。蒼真が彩葉に対して、ただの一度もしてくれたことのない仕草だった。それが雫に対しては、まるで息をするのと同じくらい当たり前のこととして行われている
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