まだあんなに若いのに、彼女の心が枯れ果ててほしくなかった。誰かを愛する力まで、あの男への絶望と一緒に失ってほしくなかった。だが彼女は、北川翔吾という男と出会えた。この時期にあの男が現れたことは、彩葉にとって単なる頼もしい支えになっただけでなく、人生そのものの救いになったのだと、樹は確信していた。「先輩、理屈は全部、痛いほど分かってるの。こんなに長い間、自分に何度も言い聞かせ続けてきたわ。会社のトップとして現実を冷酷に受け入れよう、情に流されず大局のために考えようって」彩葉はカップを両手でぎゅっと包み込みながら、胸が張り裂けそうな表情を浮かべた。「でも、やっぱり心が痛むの。今の世の中がこんなに厳しいのに、ターナルテックを去っていく人たちのその先の人生は、一体どうなってしまうんだろうって……先輩、もし母がまだ生きていたら、誰も切り捨てずに、もっとうまく全員を守り抜く方法を見つけてくれたと思うわ。やっぱり私は、どこまでいっても母の足元にも及ばないな……」「そんなことはないよ。彩葉と志乃さんは、生きている時代も、会社を取り巻く環境もまるで違う。単純に比べるものじゃない。君はきっと、これからいろんな痛みを乗り越えて、志乃さんよりもずっと大きくて強い人間になる」樹は、自分を責める彼女を根気よく、優しく慰め続けた。「会社が無事に立て直せて業績が上向けば、今回退職してもらった人たちの中で、どうしてもここへ戻りたいと思っている人がいれば、その時にまた君から声をかけてあげればいいじゃないか」先輩の温かく前向きな言葉に、彩葉の胸の中で固く結ばれていたわだかまりが、少しずつゆっくりとほぐれていった。一緒に短い昼食を取った後、病院にいる夢から彩葉に電話が入った。「夢ちゃん、瑠璃子さんの様子はどう?少しでも目を覚ました!?」彩葉はすがるように聞いた。「いいえ、まだです……でも代表、どうかあまりご心配なさらないでください。先ほど森田先生が直接数値を診てくださいましたが、身体的な回復はとても順調だそうです」「森田先生は、いつ頃目が覚めるか、何かおっしゃっていた?」「それが、先生にもこればかりは何とも言えないそうで……」彩葉は不安げに樹と目を合わせて、深くため息をついた。「分かったわ。今夜、仕事が終わったら私も病院へ行くから」……一
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