北都第三病院!?その名前を聞いた瞬間、彩葉の心臓は激しく締め付けられ、脳裏に鋭い閃光が走った。記憶の糸が、するすると手繰り寄せられていく。六年前の、あの嵐の夜の記憶が……瀕死の重傷を負った蒼真を必死に担ぎ込み、彼を救うために自らの血を分け与えた病院――それこそが、北都第三病院だった!とうの昔に心の奥底へ封印したはずの記憶が、濁流となって押し寄せてくる。強烈な衝撃に顔からさあっと血の気が引き、華奢な肩がかすかに震え出した。その時、震える肩にずしりと温かな重みが落ちた。翔吾の大きくて力強い掌が、そっと彼女を抱き寄せるように添えられたのだ。その温もりが、ざわめく彼女の心を少しずつ、確実に静めていく。「社長の読み通り、ご明察です。あの男、本当に元医師でした!」弘明は憤りを隠そうともせず、吐き捨てるように言った。「あんな陰険で薄汚い人でなしが医師を名乗っていたなんて、人の命を救う聖職の面汚しですよ!」翔吾は彩葉の、硝子のように澄んだ瞳をまっすぐに見つめたまま、電話口に向かって静かに言った。「それで?続けろ」「名は五十嵐、五十嵐駿といいます。かつて北都第三病院の循環器内科でかなり優秀な医師として勤めていたんですが、ある時期を境に突然退職して、前途洋々だったはずのキャリアをすべて自ら捨ててしまったようで。不思議でしょう?」「いや、不思議でも何でもない」翔吾は冷淡に言い放った。「なぜ奴が突然医師を辞めたか、だいたいの見当はつく」彩葉は、まるで信じられないものを見るような気持ちで翔吾を見つめた。この人は本当に、恐ろしいほど頭が切れ、鋭い。まるでこの世の何もかもが、彼の手のひらの上に収まっているかのようだ。でも、今彩葉が見ているのは、翔吾が彼女に「見せようとしている」頼もしい一面に過ぎなかった。その絶対的な力の裏にある苦労も痛みも辛さも、そして何より、彼女を陰から守り抜くためにどれだけの途方もない努力を重ねてきたかも。何年もの長い間、心の奥底に深く沈め続けてきた切ない愛も、彼はこれまで一度たりとも、彼女には見せていなかった。まるで一陣の風が通り過ぎても跡形も残さないように、すべてを完璧に隠し通していたのだ。翔吾は、ゆったりとした余裕のある口調で先を促した。「今日、そいつはその病院で何をしていた?」「その板野
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