乾いた音が響き、雅人の顔が横を向いた。彼女がこれほど怒りを露わにするのを見るのは初めてだった。しかも、その怒りは自分に向けられている。雅人の顔に、罪悪感が浮かんだ。「ごめん、音。こんなことになるなんて思わなかったんだ。あの日、君のドレスの生地があまりに綺麗だったから、葉山さんに頼んで端切れをもらって、ポケットチーフに仕立てただけで……」「でも、私が今夜宗也と一緒にパーティーに出席するって知っていたでしょう」「すまない、俺は……」「もう結構よ」音は冷ややかに言った。「あなたが私と宗也の婚姻関係を壊そうとしているのは分かっていた。でも、まさかこれほど容赦なく、こんな場で私を陥れるなんて思いもしなかった」「音……」雅人は彼女の瞳の奥にある怒りを見つめた。そして、開き直るようにうつむいて認めた。「ああ、認めるよ。君たちの仲を引き裂きたかった。君が好きだからだ。君と一緒にいたいからだ」「何を――」「誰にだって愛を追い求める権利はあるだろう。宗也だって忘れられない人のために、夏川さんを身代わりにして可愛がっている。夏川さんだって宗也を手に入れるために手段を選ばない。みんな必死に戦っているのに、どうして俺だけがダメなんだ?」「……」音は呆気に取られた。この男の頭の中はどうなっているのだろう。真実の愛なら何をしても許される、とでも言いたいの?「音には悪いことをしたと思っている。でも、これだけは言わせてくれ。俺は君が好きだ。君と一緒になるために、これからも努力する」「正気なの?」音は怒りで声を荒げた。「私には夫も息子もいるのよ。今、離婚するつもりなんてない。どうやって『努力』するつもり?」「前はあんなにも離婚したがっていたじゃないか。今だって本心では離婚したいはずだ。だって宗也は君を愛していない」「私はもう、自分の望む生活を手に入れたの。だから離婚はしない」「俺、ずっと待っているよ」雅人は真っ直ぐな瞳で彼女を見つめた。その目には、かつてないほどの真剣さがあった。音はこの男には何を言っても聞く耳を持たないと悟った。もうすぐスタイリストが上がってくる。彼女は慌てて彼をドアの方へ押しやった。「早く出て行って。あなたと二人きりでいるところを誰かに見られたくないの」「音……」
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