宗也は、この事態にどう向き合うべきか、まだ答えが出せないでいるようだった。ビジネスの世界で長年名を馳せてきた宗也でさえ、こんな板挟みに陥ったのは初めてだった。四年前、もし誕生日パーティーの会場に郊外を選んでいなければ、美月がそこへ向かう途中で交通事故に遭うこともなかった。宗也と美月が離れ離れになることもなかった。そして美月が目を覚ました時、自分がすでに結婚して子供までいるという現実を突きつけることもなかったはずだ。美月を裏切らなければ、音を裏切ることになる。どちらにしても、一人は傷つけることになる。音からすれば、宗也の沈黙こそが、最も明確な答えだった。喉の奥に込み上げる苦さを飲み込み、音は無理に笑顔を作って言った。「あなたが困ってるのは分かってるわ。自分でよく考えて。あなたがどんな決断をしても、私はそれに従うから」相手が他の女だったなら、争う気持ちもあっただろうし、全力で勝ち取ろうともしただろう。だが今、相手は美月なのだ。宗也がずっと心の奥に秘めてきた女だ。宗也が美月を抱きかかえて会場を去ったあの時、音は自分に勝ち目などないと悟っていた。「もう遅いから、早く部屋に戻って休んで」その一言を残し、音は背を向けて足早に二階へ上がっていった。「音……」宗也は逃げるような音の後ろ姿に声をかけたが、引き止めることはできなかった。後を追うこともしなかった。宗也自身も、本当は逃げたかったのだ。その夜、音は自らゲストルームで寝ることを選んだ。宗也も止めなかった。互いに、一睡もできなかった。翌日、音はわざと宗也が出勤する時間を過ぎてから、一階へ降りた。だが思いがけず、一階で宗也と鉢合わせてしまった。音は一瞬呆気にとられたが、平静を装って声をかけた。「藤堂さん、まだ仕事に行ってなかったの?」また「藤堂さん」と呼ぶようになっていた。やっと親しげに呼んでくれるようになったばかりだというのに、突然の距離感の変化に宗也は居心地の悪さを覚えた。だが、何も言わなかった。三日間も姿を消していた自分が、音に何を求められるというのか。「出かけるのか?」宗也は音に尋ねた。音は頷いた。「羽音工房に行くの。最近ちょっと忙しくて」そう言い終えると、音は外へ向かって歩き出した。宗也
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