ここまで来れた。20年以上かけて貴方の元へと届いたの。私の心と体と瞳が貴方の姿に触れて涙を流していく。 幼い頃に一度出会っただけだったわね。貴方とは。私はまだ幼く、貴方は大人の階段を上ろうとしている段階だったのを覚えてる。憧れだと思った、そう勘違いしていたのよ。幼い私にその違いも、言葉も何も理解出来なくて、この感情の答えが分からないまま、漂っていた。 目を閉じると貴方に会える。そして心の中で貴方に触れる事が出来るの。まるで包まれているような安心感の中で赤ん坊になっている自分がいる。 「君にプレゼントをあげようか。いつも頑張り屋さんな|塁《るい》に」 私の名前を憶えていてくれた事が凄く嬉しくて、嬉しくて、言葉が頭から弾けて無になっていく。これは軽くパニックになっているのかもしれないね。 嬉しさと込み上げてくる悲しみに嘘は吐けなくて、夢の中でしか会えない貴方を探し続けてる。 現実の中で、貴方の影を追いかけて、私は大人になっていったのよ。 ――もう泣き虫なんて言わせないから。一回目 貴方に出会った□□ あの時のあたしは子供で強がってばかりな我儘っ子だったのよね。まだ小学生だもの、仕方ないじゃない。環境だっていいとは言えない方だし。どうしてだろうね、あんだけ頑張って働いていた父。裕福なはずなのに、心は一人ぼっちだった。 ――本当の幸せを知らないんだ。 あたしは一人だった、ずっとずっと一人ぼっちだったの。人前で泣かないように頑張った。その代わり、一人になると泣き崩れた、そんな日常の繰り返し。 「それでも貴方に出会った」 目を瞑りながら、優しい匂いを思い出すとね、瞳から涙が毀れ落ちるの。 あの時とは違う『温もり』に満ちた涙がね。 『塁。君は一人じゃないよ。僕がいるから』 「……うん」 見えない影を追いかけながら、貴方に抱き着くあたしがいる。 『塁。愛しているよ』 温かい言霊は、心を縛り付け、あたしを大人にしていく傷跡をつけるの。 まるで砂のように、消える貴方。 ――待って、行かないで、なんて言えないよ。第二回目 特別□□ いつもの駅で貴方を待ってた。一人ぼっちな私……ううん、少し成長した私は『友人』が出来たはずなのに、心にポッカリと穴が開いてる。 どうしてかな?悲しくないのに、何も感じないのに……。 ――
Last Updated : 2025-10-18 Read more