息子の名門校への入学手続きの最中、思いもよらぬ事実が発覚した。夫との七年間の結婚生活が、すべてとんでもない茶番だったということに。「申し訳ございません。お調べしたところ、保護者様の婚姻状況は『未婚』となっております」「そんなはずありません!夫のエドウィン・ボルトンと結婚して、もう七年になるんですよ!」信じられない思いで言い返す私の背後で、列に並んでいた他の保護者たちが、あからさまな嘲笑を込めて噂し始めた。「エドウィン・ボルトンですって?よく言うわね!」「偽造証明書で名門校に入ろうだなんて、浅はかすぎますわ!」「どこかの愛人かしら?ささっと追い出してちょうだい。うちの娘の手続きが待っているのよ!」受付の職員も苛立ちを隠せない様子で、冷たく繰り返した。「この方。家族関係を証明できないのであれば、これ以上業務を妨害しないでいただけますか」その場にいることなどできず、私は市役所へと急いだ。そこで改めて調べてもらうために。けれど、結果は同じだった。婚姻状況の欄には、はっきりと「未婚」の二文字。信じたくなくて、最後の望みを託すように尋ねる。「では、エドウィン・ボルトンの法的な妻は、いったい誰なのですか?」職員は事務的に、ひとつの名前を告げた。「ハンナ・ブラウン様です」偽物の婚姻証明書を握りしめる手に、爪が食い込むほど力が入る。目の前がぐらりと揺れ、その場に崩れ落ちそうだった。ハンナ・ブラウン。ええ、もちろん知っている。その名前を、私は決して忘れはしない。あれはエドウィンと結婚して三年目のこと。一ヶ月の出張から、彼を驚かせようと予定より早く帰国した日があった。まさか、オフィスで彼が見知らぬ女性と熱烈なキスを交わしている場面を目撃してしまうなんて。その女性こそ、会社に新しく来たインターンの子、ハンナ・ブラウンだった。私はその場で激怒した。エドウィンもさすがに顔面蒼白になり、私の前に跪いて謝罪した。彼の言い分は、酔っていてハンナを私と見間違えただけだ、というものだった。その後、彼は半年間も必死に許しを請い続け、二度とハンナと関わらないと何度も約束した。私は、半ば無理やり自分を納得させるようにして、彼を許した。ハンナは即座に解雇され、海外へ渡ったと聞いた。それ以来、彼女のことを耳にすることは
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