All Chapters of 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。: Chapter 61 - Chapter 70

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小話32  皆で遊ぼうっ!:美鈴小学四年の夏

……。 …………おかしい。 何がおかしいのかと聞かれると、説明が難しいんだけど。それでもやっぱりおかしい。 僕の気の所為かな?とも思ったんだけど、でも…。 「ねぇ?鈴?」 「なに?棗お兄ちゃん」 にこにこ笑ってるはずの鈴ちゃん。それはいつも通り。 いつも通りなんだけど…。そう、いつもなら、僕達が鈴ちゃんの名を呼ぶと、「なぁに?葵お兄ちゃん」って優しく返してくれる。 それが、今は返事を返してくれはするけれど、どこか棘を感じると言うか…。 僕は優兎を手招きした。 気付いた優兎がテレビの前のソファから立ち、僕の側へ駆け寄ってくる。 「鈴ちゃん、何かあったの?」 こそっと聞くと、 「それが、良く解らなくて。夏休みが始まるまではむしろ上機嫌だったんですよ?」 夏休みが始まったのは一週間前。 って事は、一週間もこの調子ってこと? 「僕はてっきり佳織さんが何かやらかしたのかと…」 「その線もなくはないけど…」 佳織母さんにはむしろ、ここ数日鈴ちゃんは甘えたになってる気がする。 本当に何があったんだろう?何も出来ないってもどかしい…。 僕がじっと鈴ちゃんを見ると、小首を傾げて、にこにこ。 うん。可愛いよ?可愛いんだけど…。 どうしたらいいんだろう…? 僕も棗も鈴ちゃんにこんなに壁を作られた事がなかったからどうしたらいいか対処に困る。 そんな時、学校から帰って来た鴇兄さんがリビングのドアを開けて「ただいま」と入って来た。 天の助けとばりに僕達は鴇兄さんに視線を飛ばす。 けれど、鴇兄さんは僕達に視線を飛ばされずとも、すぐに鈴ちゃんの異変に気付いた。 「美鈴?ただいま?」 「うん。おかえりー。鴇お兄ちゃん」 にこにこ。変わらない笑顔。 鴇兄さんはそんな鈴ちゃんを見て、ふっと笑みを浮かべて鈴ちゃんを抱き上げて一緒にソファに座った。 珍しくジタバタと暴れる鈴ちゃんにやっぱり何かあったのだと僕達は確信して鴇兄さんの両隣に陣取る。優兎も僕の隣にある一人掛けのソファに座った。 「みーすーず」 ぎゅむっと両手でほっぺを包まれ、鈴ちゃんは強制的に鴇兄さんと視線を合わせさせられた。 「なに拗ねてるんだ?」 「ふみっ!?」 えっ!? 僕達は声に出さずに驚く。 え?え?鈴ちゃんは怒ってたとか何かあった訳じゃなくて拗ねてたのっ!?
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小話33 駄々っ子美鈴~鴇編~:美鈴小学三年の冬

「良いから、それ寄越せっ!」 「だから、嫌だって言ってるじゃないですかっ!」 さて。どうしたものか。 俺と言う壁を挟んで、妹と多分妹のクラスメートが攻防戦を繰り広げている。 「アンタが持ってても仕方ないだろっ!」 「そう言う問題じゃないですっ!これは絶対に捨てるのっ!」 捨てる? 美鈴は一体何を持ってるんだ? 自分の足にしがみついて隠れている美鈴の手を見ると一枚の手紙が握られていた。 何だ?それは? じっと見ているとそれに気付いた美鈴が手早く着ていた上着のポケットに二つ折で突っ込んで隠してしまう。 「おいっ、いい加減にしろよっ!それはおれが貰った」 「絶対渡しませんっ!それにあげた覚えもありませんっ!」 ぎゅっと俺の足にしがみつく美鈴。 さっきからこの状態が続いている。 今日はたまたま授業も早く終わり、商店街を通って帰って来たんだが、その向こうから男子生徒に追われた美鈴を見つけて。 美鈴も俺の存在に気付き、俺の足に飛び付いてきた。 その男子生徒は一瞬俺の顔を見て怯んだものの、直ぐにどやっとまるで自分が俺より上かのような態度でこちらを見てきた。 正直、…このクソガキが、と思わなくもない。 だが、美鈴がそいつの何かを奪い取ったようだったので何も言わないでいたのだ。 けど、今現在の攻防戦を見て、何か言った方が良かったのかと俺はただただ首を傾げている。 「と、鴇お兄ちゃんっ。も、もう行こうよっ!お家帰ろうっ!」 美鈴が訴えて来ているから、とりあえずそれに頷く事にして俺は美鈴を抱き上げた。 「…お前、ほんっと軽いままだな…」 「そ、そんな事ないもんっ!鴇お兄ちゃん達が力持ちなだけだもんっ!」 と俺に文句を言いつつも首に抱き着いてくるあたり早くこの場から去りたいんだろう。 俺が家に向けて歩き出すと、 「ちょ、ちょっと待てっ!せめてそれを返してから行けっ!!」 「いやっ!!」 ぎゅむむっ。 美鈴…前が見えない。首に抱き着くのはいいが、頭に抱き着くのは止めろ。 「……美鈴。お前一体このガキから何盗ったんだ?」 「ちょ、鴇お兄ちゃんっ!人聞きの悪い事言わないでよっ。これは元々私のなのっ!」 「いや、お前のじゃねーしっ!」 むむむむむっ! 美鈴とそのガキが睨み合ってる。 あー……さっぱり意味が分からん。 「何が
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小話34 花火:美鈴小学五年の夏

「姫ー。材料はこれで全部かー?」 「あ、透馬お兄ちゃんっ、ちょっと待ってねっ」 美鈴ちゃんが透馬さんに呼ばれて、包丁片手にキッチンを出た。 「鈴。駄目だよ。危ない」 流石、棗さん。スマートに美鈴ちゃんから包丁を受け取りキッチンに戻って行った。 一方玄関へ向かった美鈴ちゃんの後を追うと、そこにはアイスボックスを二つ両肩に下げた透馬さん。段ボール二箱に野菜を山盛りにして持っている大地さん、そして紙袋を持っている奏輔さんが立っていた。 今日は近くの川で花火大会がある。 本当ならそこに出店もでていて、お祭りに行くのもいいかなと予定を立てていたけれど。 『あ、わ、私はいいや。こんな街中のお祭り…男がいっぱい…』 と鶴の一声ならぬ、美鈴ちゃんの一声で白鳥家の二階。鴇さんの部屋の隣にある広いバルコニーで花火を見ながらバーベキューをしようって事になった。 「わーいっ。お兄ちゃん達ありがとーっ!」 「食べ盛りが一杯いるんだ。これ位の補充は当然だろ」 「だねー。…足りるかなぁー?」 「えっ?これでも足りないのっ!?」 美鈴ちゃんが目を白黒させている気持ちが痛いほど解る。だって僕も同じ気持ちだったから。 これだけあっても足りないとか…どれだけ食べるんだろう…? 「足りなかったら追加したらええやん。あと、優兎。お前はもうちっと食べなあかんよ?」 う…トバッチリが来た…。 正直お肉より野菜の方が好きな僕としては頷き辛い。 「そうそう。優兎くん、好き嫌いは駄目だよー」 どやぁっ。 美鈴ちゃんが胸を張ってるけれど…。美鈴ちゃん、そのセリフ。美鈴ちゃんにだけは言われたくないよ? そう思っていると、 「鈴ちゃんはその台詞言う権利ないと思うよ?」 葵さんが代弁してくれた。うんうんと僕も頷く。 「お前ら、そこでたむろしてないで、必要な物上に運ぶの手伝え。庭の物置にバーベキューの一式があるから」 リビングから鴇さんが顔を出した。 「ほな、俺が行くわ。透馬も大地もそれ運ぶ必要あるやろ?」 「いや。全員で来い。リビング経由して縁側からサンダル履いて庭に行くから問題ないだろ」 「炭やらコンロやら運ぶのはありそうだしな」 「了解ー」 全員でリビングへ戻ると、持って来た食材を全部テーブルの上に置いて、鴇さん達は縁側から庭の物置へ歩いていった。 「よー
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小話35  ○○の日:美鈴小学二年の初夏

コンコン。 ……出て来ない。 コンコンコン。 もう一度ノックしてみたけれど、反応がない。 全く反応がないと逆に不安になるんだが…。 ……仕方ないな。 ここで遠慮して倒れられでもしてたらそれこそ問題だ。それに、美鈴の部屋に突然入るのも今更だろ。 俺は躊躇いもなくドアを開けると、そこにはベッドに寝転がってる美鈴がいて。 なんだ?何を読んでるんだ? ……前もこう言う事があったな。その時は確か…。 足音を立てずに美鈴に近寄り、そして背後から。「何読んでるんだ?」 「ぶにゃああああああああっ!?」そう。今と全く同じ反応があったんだったな。 全く変わってないようで。相変わらずの反応に笑ってしまう。 「お、お、お兄ちゃんっ、び、びっくりさせないでっていっつも言ってるのにーっ!」 「ははっ。悪い悪い。でも俺はノックしたぞ。ちゃんとな」 まだ驚きが収まらないのか、美鈴は胸を抑えたままじと目で俺を睨んでくる。 そんな顔しても可愛いだけなのに。 わしわしと頭を撫でて、今度こそ美鈴の読んでいた物を覗き込む。 カタログ?しかも男性服?美鈴が? ……どちらかと言えば成人男性向け、か? 今は六月……あぁ、そう言う事か。 「父の日に何を買おうか悩んでたのか?」 「ふみっ!?」 あぁ、顔が真っ赤に染まってく。増々可愛いな。 父の日は確か…明後日だったか?だったら。 「美鈴。明日俺と一緒に買い物行くか?」 「え?」 「父の日のプレゼント。一緒に選びに行こうぜ」 言いながら美鈴のベッドに乗り上げて、そのカタログ雑誌を覗く。 「い、いいの?鴇お兄ちゃん。折角の土曜日…」 変な所で遠慮がちになる妹は本当に可愛い。 しっかりと頷いて笑うと、嬉しそうに微笑み何故か俺の上にダイブして来た。 受け止めても良かったがここは敢えて避けて、 「ふみゃっ!?」 ベッドに跳ね返った所を抱きとめて、一緒に寝転がる。 「ふみ~…鴇お兄ちゃん、避けるのはずるいー…」 「直に受け止めたらどちらも痛いだろうが。んで?お前はどんなのをあげようと思ってたんだ?」 「えっとねー」 「あ、ちょっと待った」 「?」 美鈴に自分から聞いておいてなんだが、どうせ父の日のプレゼントするんだ。だったら。 「あいつらも巻き込むぞ。子供全員から貰った方が親父も嬉しいだろ
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小話36 美鈴の読み聞かせ:美鈴小学五年の秋

ドタバタドタバタ…。 階段を駆け上がる音が聞こえる。 この足音は…旭と三つ子かな? 旭も三つ子もすっかり大きくなって家中走り回れるようになったのは良いけど。 (少し、やかましい…) 本を読んでも全然内容が頭に入らないくらいには騒がしい。 …まぁ、仕方ないか。 集中力が途切れたのに勉強しても効率が悪い。 そもそもあいつらはなんであんなにダッシュしてたんだ? ドアを開けて廊下へ出ると、 「あ、葵兄ちゃんっ!」 「あおい兄ちゃっ」 「葵兄ちゃんっ」 「あお兄ちゃんっ」 四人が一斉に僕に群がった。 「旭、蓮、蘭、燐。一体何をそんなに急いでるの?」 聞くと、旭がにこーっと人懐っこい笑みを見せた。 我が家で一番人懐っこいのはきっと旭だろう。甘え上手とも言う。 「お姉ちゃんに本、読んでもらうのーっ」 そう言って差し出したのは、シンデレラ。 って、これあれだよね?灰かぶり姫。意地悪な継母や義理の姉に苛められていたシンデレラが魔法使いの力を借りて王子の花嫁探しであるお城の舞踏会へ行って見事王子の心をゲットし、でも十二時に魔法使いの魔法が解けてしまいガラスの靴一つ置いて逃げると言うあれ。 …女の子向けの本だよね? あー…でも、鈴ちゃんが読み聞かせてる姿はみたいかも…。 「旭、僕も着いて行っていい?」 「うんっ。あのね、葵お兄ちゃんっ!今ね四人パーティでラスボスの王子に挑んでるんだよっ!」 「………うん?」 「あおい兄ちゃっ、早く行こうっ」 「あ、あぁ、うん…」 言葉の意味は分からないけれど、取りあえず弟達と一緒に僕は鈴ちゃんの部屋へと向かった。 鈴ちゃんの部屋をノックすると、ドアが開いてひょいっとほわほわの金色が顔を出した。 「あれ?葵お兄ちゃん?どうしたのー?」 「お姉ちゃんっ!今日こそ、リベンジっ」 僕の影から弟達が顔を出す。 「なるほどね。いいよっ。もしかして、葵お兄ちゃんも一緒に見るの?」 「うん。ちょっと興味あって。いいかな?」 「うんっ。勿論、良いよ~」 鈴ちゃんの部屋に入る。けど五人は結構狭いよね。四人はテーブルを囲んで床に座るみたいだし、…僕は鈴ちゃんの勉強机の椅子に座ろうかな。 …って、うん? 本を読み聞かせるんだよね?その小道具一式は一体…? 「えっとー。確か、白雪姫の蓮がやっと合流した
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小話37  お姉ちゃんの読み聞かせ~三つ子ver~:美鈴小学五年の冬~

タタタタタッ。複数の足音が聞こえる。その複数の足音と言えど、足音が鳴る瞬間は一緒なおかげで三つ子の弟の足音だと分かる。とは言え、何で走り回ってるんだろう?僕は自室のドアを開けて、そっと廊下を見ると三つ子は旭の部屋を覗いていた。「…蓮、蘭、燐。旭は今日佳織母さんと出掛けてるよ?」声をかけると、三つ子は驚きよりむしろとても嬉しそうな顔で僕に駆け寄ってきた。「ほんと?なつめ兄ちゃっ」「棗兄ちゃんっ」「なつ兄ちゃんっ」足下でぴよぴよと騒ぐ三つ子を苦笑しながら見ていると、三人の手に小さな箱がある事に気づいた。「?、三人共それは何?」「こうげきっ」「ぼうぎょっ」「かいふくーっ」…………うん。三人共、元気が良く答えてくれた所悪いけど、お兄ちゃんには何が何だかさっぱり分からないよ。「らん、れんっ。いまがチャンスだよっ」「うんっ。おねえちゃんに『ほん』よんでもらおっ」「おねえちゃん、たしか『ごはんたべるおへや』にいたよっ」鈴に本を読んで貰う?……ちょっと興味あるな。鈴がどう言う風に本を読むか。「なつ兄ちゃんもくるっ?」燐が誘ってくれたので。「そうだね。行こうかな?」そのお誘いに乗ることにした。まだ頭の方が重い三つ子のよたよたとした階段降りを見守りつつ、階段を降りて僕達は揃ってリビングへと入った。『おねえちゃんっ』三人がドアを思い切りよく開けて、中へ元気よく入っていく。すると、エプロンで手を拭きながらキッチンから出てくる鈴が、「こら、蓮、蘭、燐。ドアは静かに開けなきゃダメでしょう?」窘めるのを見ていると、つい笑みが浮かんでしまう。「ふふっ。鈴。言ってる事がもう完全に母親だよ?」ついでに突っ込みを入れると、鈴が僕を見て穏やかに微笑んだ。「ママが注意しないから、私がするの。それにママだったら…元気があって良いで片づけそうだし…」「あぁ、それは、まぁ、そうだね」沈黙。佳織母さんだったら本当にそう言いそうだ。なんならドアを壊しても直せばいいとケロッと片づけそうだ。「それで?蓮、蘭、燐は私に何かご用?」「ごほん、よんでっ」ずいっと蓮が絵本を鈴に突き出した。箱しか目に入ってなかったけど、本も持ってたのか。えーっと…『三匹の子ブタ』…?「ごほんっ」蘭が絵本を鈴に突き出す。……『マッチ売りの少女』…?「よんでっ
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小話38 成人式:美鈴小学四年の冬

「鴇お兄ちゃんっ、ネクタイどれにするのーっ?」 「あ、こら、旭っ。足下にいると危ないよ」 「佳織母さんっ。三つ子が鴇兄さんの足に特攻かけようとしてるよっ、捕まえてっ」 「あらあら?三人は金山さんに見て貰いましょう」 「お任せをっ」 「美鈴ちゃん、カメラ持って来たよっ」 「ありがとうっ、優兎くんっ」 …………。 家の中が滅茶苦茶騒がしい。 今日が成人式なのはいいとして。 成人する俺より、家族が慌ててると言うのはどう言う事だ…? 唯一、美鈴だけがまともな行動をしている気がするのは気のせいだろうか? ネクタイを腕に数本かけて、俺の着ているスーツとシャツに合うネクタイを物色している。 「カジュアルな黒もカッコいいと思うんだけど…でも折角の成人式だし…赤もいいよね…。あぁでも、鴇お兄ちゃんは綺麗な蘇芳色の髪してるから赤だと…」 「美鈴…そこまで悩むことか?」 「悩むことだよっ!一生に一度のことだもんっ!」 美鈴、お前は俺の母親か? 思わず心で突っ込みを入れつつも、それでも真剣なその顔についつい笑みを浮かべてしまう。 「ねぇ、鴇お兄ちゃん」 「うん?」 「透馬お兄ちゃん達は何色のネクタイにしてるの?」 「…さぁ?」 「衣装合わせとかしないの?」 「いや、しないだろ。女じゃないし」 「そういうもの?」 首を傾げる美鈴から、俺は赤いネクタイを一本抜き取って自分の首に巻く。 親父の仕事を手伝うようになってから、ネクタイ締めるのも問題なく出来る様になった。 っと、鏡が必要だな。見ずにしめると曲がる。 洗面所へ行くか?もしくは部屋? 「はい、鴇お兄ちゃん、鏡っ」 「……サンキュ」 気がきくと言うか何というか…。 相変わらずの準備の良さに感心してしまう。 美鈴が持ってくれている鏡を覗き、ネクタイをつけていると…。―――ピンポーン。チャイムが鳴った。 思わず腕時計で待ち合わせ時間を確認する。……まだ早いよな?―――ピンポーン…。ピピピピンポーンッ。…焦りを感じるチャイム連打が聞こえる。 いったい誰だ? 「僕が行きますねっ」 優兎が代表して玄関へ駆けて行った。 話し声をしたかと思うと、再びリビングのドアが開いた。 苦笑いする優兎の後ろに、ぐったりと疲れ切っている透馬の姿。 「……おい、透馬。それで行くつも
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小話39 妹の読み聞かせ:美鈴小学六年の春

「反撃スキル『池になんでも落としてんじゃねーよっ!』が発動っ」 「えっと…回避スキル『舞踏会からの逃走』を発動っ!」 「シンデレラの舞踏会のカードから、回避スキル『舞踏会からの逃走』発動っ!池の女神の攻撃が回避されたっ!」 「ついげきーっ。こうげきスキル『まさかりアタック』発動っ!」 「追撃、金太郎のアイテムカードから攻撃スキル『マサカリアタック』発動っ!!池の女神に1900のダメージっ!!残り3042っ!」 「さらについげきーっ。こうげきスキル『おばあさんにあげるワイン』はつどうっ!きょうりょくたいしょう、マッチうりのしょうじょっ!」 「あかずきんときょうりょくっ!こうげきスキル『うれのこったマッチ』はつどうっ!」 「赤ずきんちゃんのアイテムカードから攻撃スキル『お祖母さんにあげるワイン』発動っ!協力対象にマッチ売りの少女を選択っ!マッチ売りの少女が協力許可っ!マッチ売りの少女のアイテムカードから攻撃スキル『売れ残ったマッチ』を発動っ!協力技発動っ!強力スキル『強力火炎瓶』の攻撃っ!池の女神に3000のダメージっ!」 「あと一押しだよっ!蓮、蘭、燐っ!」 『おっけーっ!』 「池の女神、最終スキル『女神の怒り』が発動っ!この攻撃は圧倒的な攻撃力を持った超ド級の技です。発動まで3分あります。その間に4万の攻撃を耐えれるように防御スキルの重ねがけをしましょう。よーいスタートっ!」 美鈴が砂時計をひっくり返した。 下の弟達はカードボックスをひっくり返して必死に防御スキルのあるカードを集めている。 でもなぁ…。 ざっとカードを見る限りだとこいつら皆攻撃スキルのカードばっかり集めている。 まぁ唯一やりこんでいる旭と、防御スキル中心に集めている蘭はどうにかなりそうだが…。蓮と燐は駄目だな。 暫く様子を見ていると、案の定蓮と燐は即行でやられて。 防御スキルを何とか集めていた旭と蘭もギリギリの所で守り切れず、ゲームオーバーとなってしまった。 「…ねぇ、鴇兄さん」 「うん?どうした、葵」 「今日僕達三人揃ってるし、ちょっと僕達もやってみない?」 棗が悪戯に誘うかのように俺に言ってくる。 下の弟達は美鈴にこうしたら駄目だ、この手は良かったなどレクチャーを受けていて。 それを眺めていたら、確かに
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幕間2 野郎達の緊急会議

「おやつのフライドポテトは沢山揚げてあるから食べてね。お昼ご飯は皆で焼いて食べれるようにお好み焼きにしといたから。奏輔お兄ちゃんなら出来るよね」 「あぁ。こっちは大丈夫だから行って来い」 「うんっ。じゃあ、行って来まーすっ!」 「行ってらっしゃい。楽しんで来いよ」 美鈴と迎えに来た透馬の妹を見送り、俺は家の中へと戻る。 リビングで話すには狭いだろうと、美鈴が和室を片付けてテーブルを設置し、お菓子や飲み物も大量に用意していった。 和室の引き戸を開け中へ入ると、既に美鈴手製の菓子を堪能している野郎達が争いを繰り広げていた。 「お前らなぁ…」 「お、鴇。帰ってきたか。んじゃ、早速始めるぞ」 「へいへい」 俺は透馬が指さす席に座り、軽く部屋全体と集まった顔ぶれを見渡す。 俺はお誕生席と言われる場所に座っており、俺の右側は葵、透馬、樹、旭、燐、優兎、逆に左側は棗、大地、奏輔、猪塚、蓮、蘭と座っている。 …計13人の男が揃いも揃って何だこの状況…。 「議題はお姫さんの女子中入学についてや」 必要か?この会議。 正直俺としては美鈴が決めた事なら尊重してやりたいんだが。 「まずはー。オレが調べてきた、聖カサブランカ女学院についての資料を配るねー」 資料まであるのかよっ! お前ら、こんなのに労力割く位なら大学の論文でかせよ…。 呆れ半分で大地を見つつ、受け取った資料を覗く。 えっと、何々? 『聖カサブランカ女学院は創立150年を迎えた由緒正しき女学校である。学院のモットーは清く正しく美しく。入学した生徒を女性らしく育て、卒業させる。一種の花嫁修業の場。尚例外は多数あり』 例外は多数ありって、それは…。いや考えないでおこう。 『山奥に校舎はあり、その山は男禁制であり、男は山に足を一歩でも踏み入ってはならず、それは職員や寮監も適応され、敷地内は全て女性だけである』 ん?寮監?なんだ、聖女って寮制なんだな。 『山奥にある為、生徒は寮生活を余儀なくされ、しかも一年から二年の内は山から出る事も禁止されている。長期休暇の帰省も禁止。休日も外出は禁止で男と会おうものなら停学を通り越して退学になる』 すっげぇ…厳しいんだな。 後は細かい事がチラホラと書いてある程度か。 まぁ、男性恐怖症の美鈴には随分と都合のいい学校じゃないか。 …って、俺は
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小話40 優兎の修行(美鈴小学六年卒業間際)

「さ、優兎くんっ。制服を選びに行くよっ」 「………え?」 突然部屋に飛び込んできた華菜ちゃんに驚くべきなのか、それとも制服を選びに行くと言う言葉に驚くべきか。 「え?じゃないよー。美鈴ちゃんを守るために聖女に行くんでしょうっ?」 ………え?、それって冗談なんじゃ…? 目を丸くしていると、 「残念ながら優兎。僕達は本気なんだ」 「あ、葵、さん…?」 「今日は鴇兄さんが美鈴と一緒に出掛けててタイミングとしてはバッチリだよ」 「な、棗さんまで…」 どうしよう。 悪魔の言葉が聞こえる。 けどその目を見ると本気その物。 「さ、とにかく行くよっ」 「え?え?」 「美鈴ちゃんの為なら、私は友達でも容赦しないよーっ」 「ええええええっ!?」 華菜ちゃんは宣言通り。容赦なく僕を奏輔さんの店にまで連行した。 奏輔さんのお店で待ち構えていたのは奏輔さんのお姉さん達で。 僕は容赦なく着せ替え人形にされた。僕が着ても違和感のない女物の服。アクセサリー。当初の予定である制服。更には男だと分からなくする為の化粧などなど…。 「ねぇ、咲さん。これだと男だとばれちゃうんじゃない?」 「大丈夫よ、華菜ちゃん。こういうのは女を作るんやなくて、身につけさせるんよ」 ……身につけたくないんだけど…。 「ええか?優兎くん。女の中に紛れるには、いっそ堂々とせなあかん。偽ってしまったらいつが限界が来るからね」 「あの…バレそうな危険は犯さない方が…」 「…………優兎くん?」 ビクッ! か、華菜ちゃんの声が低くなった…。駄目だ、今逆らったら僕が死ぬ。 「あ、そうだ。優兎、ちょっとこっち来て」 葵さんに呼ばれて、彼女達からちょっと離れて葵さんに差し出されたプリントを受け取った。 ……うん?国語、数学、理科、社会、英語…?これは一体? 「今から三十分計るからやって」 「え?」 「はい、鉛筆。いい?」 「いや、あのっ」 「はい、スタートっ」 うえええっ!? 仕方なく鉛筆を持って近くの衣装棚の上を開けてガリガリと書いていく。そんなに難しい問題でもないから解くのに三十分もいらなかった。 とは言え、なんで制限時間が必要?って言うか、これなに? 葵さんはその僕が解いた問題を見て満足気に頷いて封筒に入れた。 え?で、これは一体何なの? 「これで入試
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