「どうしてこうなった…」 机の上に置いた鏡と向かい合い、自分のやたら整った顔から零れた溜息混じりの呟きは宙に消えた。 この世に生を受けて5年目。でもって明日六歳の誕生日を迎える今、私は覚醒した。 いや、こんな言い方するとおかしいよね。 正しくは『思い出した』だ。 でもね、あのね。一つ言わせて欲しい。 私だってこんな状況思いもよらなかったよ。 だってさ?誰が思う? 生まれ変わったら、前世でプレイしていた乙女ゲームのヒロインになっているなんて。 はぁ…とまた溜息をついて、私はぼんやりと前世の事を思い出す。 前世の私は所謂隠れオタって奴だった。 外では普通に三十路に近い何処にでもいるであろうOLに擬態し、家ではネットサーフィンをおやつに乙女ゲームを主食として生きてきた本もゲームも美味しく頂ける活字中毒者。 二次創作や薄い本も嫌いじゃない。ううん、この言い方は卑怯だね。大好物です。常に美味しく摂取してきました。腐女子って言葉を正しい意味で私に与えられた称号として意識していた。 しかし、前世の私はすこぶる健康体だったし、まぁ脳内はある意味異常者かもしれないけどそれはそれなりに擬態してきた為、世間的にも悪い印象は与えていないはず。 そんな私は何故死んだのか。 これが、怖い話で家に押し入られたストーカーに刺されのだ。 刺された瞬間のあの男の顔は生まれ変わった今でも瞼の裏に焼き付いて忘れられない。さっきまで忘れてたじゃんって突っ込みはなしの方向で。 そして、何よりも気がかりがある。部屋に残った腐の産物、黒歴史を誰かが片したのかと思うと私は新しい今の人生を投げ出したくなるくらい恥ずかしい。羞恥で死ねる。 もう、どっちを後悔していいのやら…。 ……。 いやいや。落ち着け私。 話が盛大にそれている。 前世の私の話は今は置いておくとして、問題なのは前世でプレイしたそこそこ気に入っていた乙女ゲームの世界に生まれ代わっていたって事だ。 こういうのってさ?普通はさ? 悪役令嬢、とか、学校一人気のクラスメート、とかさ? そういうヒロインのライバル的な悪い立ち位置とか一切関係ない脇役とか、所謂ヒロイン以外の立場に生まれ変わってさ?運命なんて変えてやるっ!!とか言って盛り上がっていくのが常套句って奴じゃないの? え?なんでヒロインなの? ヒロイン
Terakhir Diperbarui : 2025-10-28 Baca selengkapnya