All Chapters of 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。: Chapter 51 - Chapter 60

156 Chapters

小話24 御三家の暗躍

「透馬透馬透馬、うまーっ!!」―――ズバァンッ!!おい…。七海。一体何度俺の部屋のドアを破壊したら気が済むんだ…。そして、誰が馬だ。 最近、銀細工より大工仕事の方が上手くなりそうな自分にちょっと落ち込む。 深くため息をついて、部屋に飛び込んできた七海を見ると、そこには泣きそうな顔をした妹の姿があって。 「なんだ?どうしたっ?」 ハッキリ言って七海が泣くなんてこと、こんなに長い間兄妹をやっていてその姿を見た事は数える位。それこそ赤ん坊の時くらいじゃないか? そんな七海が泣きそうっ?動揺しても仕方ないだろっ。 慌てて七海に歩み寄ると、ガシッと腕を捕まれ、 「テレビっ!とにかくテレビ見てっ!」 「お、おいっ!?」 問答無用でリビングのテレビの前まで連れて行かれた。 そして、そのテレビに映っていたのは…。 「おいおい…なんだよ、これっ…」 佳織さんが必死に緊急の連絡をしている姿が映っており、ワイプでキャスター達が速報としてホテルの現状を伝えている。 そう言えば、鴇が今日ホテルで祖母さんの会見があるって言ってたな。まさか、これか…? 「どどど、どうしようっ、透馬っ。美鈴ちゃんが、美鈴ちゃんがぁっ!」 「……俺達が動揺してもどうしようもないだろ。とは言え…気になることがある。…あいつらの所行ってくる。七海、大地に行って将軍さんに来て貰うから戸締りして待ってろ。いいなっ」 「う、うんっ」 俺は上着を羽織って家を飛び出す。 すると示し合わせた訳でもないのに、こちらへ向かって走ってくる奏輔と大地の姿があった。 「奏輔っ、大地っ」 「透馬っ」 「お前も見たかっ?」 奏輔の言葉にしっかり頷く。 「透馬っ。七海ちゃんはっ!?」 大地の後ろから凄まじいスピードで駆けてきた将軍さんが擦れ違いざま声をかけてきた。 「家にいますっ。あいつ、結構怯えてるのでお願いします」 早口に言ったけど。最後まで聞く前に走って行ってしまった。頼むからこれ以上ドアを破壊しないでくれよ、と心の中で祈っておく。 「透馬。家のドアの心配は後にしろ。それより、今は」 「そうだな。鴇達の方が心配だ」 「ホテルでパーティがあるって言ってたけど…まさかあんな事になるなんて…」 「…まぁ、誠さんと佳織さんがいる限りは大丈夫かと思うが…」 最強の二人がいる。そんじょ
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第十一話⑤  ※※※ 

昨日は大変でした。 事件の後片付けでママ達は引っ張り凧状態で。 私達子供は、帰る様に言われたんだけど、この状況で子供だけ帰宅?しかも、家が狙われる可能性もあるよね? だけど大人達は後片付けがある。 結果、皆で白鳥家に帰宅する事になりました。護衛の代わりに金山さんと、樹先輩の執事で尚且つ金山さんの長年のライバルである銀川さんがついてくれて。 客室を全て解放して、お風呂も準備して、疲れMAXな私達は直ぐに眠りに着いた。 で、爆睡した私は今こうして棗お兄ちゃんの横で二度寝しようかどうしようか考えてる最中であります。 棗お兄ちゃんも爆睡中で起こすのも躊躇ってしまう。 ふみ~…どうしようかな。 でも、朝ご飯、皆食べたいよね?うん。ご飯の準備しよう。 起こさないようにそっと抜け出し、部屋に戻って手早く着替えて、洗面所へ行き身だしなみを整えてリビングに入る。 キッチンへ行って材料を覗く。 そう言えば大晦日に皆で作ったお餅があったな。うん。お雑煮にしようっ!ちょっと邪道かもだけど具を一杯いれて。 私はお汁粉にしようかな。 鍋を二つ用意してテキパキと準備を進める。あぁ、そうだ。洗濯機も回さなきゃ。 材料を切って、鍋に水を入れて下準備を終えたら、洗面所へ走り洗濯機を回す。 そのままキッチンへ戻って料理を続ける。 後はお餅を入れるだけの状態になると、リビングのドアが開けられて、そこには樹先輩が立っていた。 「先輩、部屋が冷えるので閉めてください」 キッチンから言うと、私の姿に一瞬驚きながらもドアを閉めてキッチンの向かい、カウンター席からこちらを覗き込んでいった。 「何してるんだ?」 「朝ご飯の準備ですが?」 「お前がか?」 「そうですよ?私がこの家の家事を全てやってます」 ちょっと、その嘘だろって顔はどういう意味? そんな事も出来なさそうに見える訳?…いや、違うか。小学生がここまで料理出来るって普通思わないよね。 いけないいけない。つい自分が小学生だって事を忘れそうになる。 ……ここまで来たら今更か。 「樹先輩はお雑煮とお汁粉どっちがいいですか?」 「甘い物は苦手だ」 「あ、じゃあお雑煮にしますね」 お餅何個あれば足りるかな~…。これだと別に煮込んでお餅を用意してた方がいいかもしれない。 私はつい面倒で鍋に突っ込んじゃう
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第十二話 計画の結果2

時が過ぎるのは速いもので。 もう私も小学校卒業間際とあいなりました。 あのね…一つ、一つだけ言わせて欲しいっ!どうしてこうなったっ!?久々の叫びだよっ!!ほんとにさぁっ!! 小学校生活での私の目標っ!『極力地味に過ごして攻略対象キャラの視界に映らないようにしよう』何一つ出来てないよっ!! なんなら世界規模で派手に過ごしてるよっ!! いや、こう言うと語弊があるかもしれない。 プライベートは地味なまま、毎日家事をやって過ごしてる。 ただ、その合間に鴇お兄ちゃんと一緒に財閥の引継ぎをして、良子お祖母ちゃんと一緒に三年生から始めた薙刀をやりつつ、葵お兄ちゃんと棗お兄ちゃんと一緒に先輩達から逃げ続け、とまぁ忙しいながらも普通で地味な…地味な毎日をね、送っているのよ、うん…。 あ、そうそう。私に旭の他に弟が増えました。…三人。 よりによってママが三つ子を産みました。しかも三人とも男児。名前はここまで来たら皆漢字一文字でという事で、『蓮(れん)』『蘭(らん)』『燐(りん)』に決定したんだけど、皆、誠パパ譲りの蘇芳色の髪とママ譲りの水色の瞳をしていてとても可愛いものの、そっくり過ぎて産まれてから暫く区別がつかない日々を過ごした。なので私お手製のブレスレットが彼らの腕につけられている。蓮には水色、欄にはピンク、燐にはオレンジ。 そういう区別の仕方ってどうなのって思われるとこだけど、名前を間違えて呼んだりして一緒くたにされたら可哀想だし。あ、家族は全員…ママ以外は区別ついてるよ。ママはほら、息子達を一律に野郎共と呼ぶようになったからさ。うん。母親ってこんなだっけ?…こんななのかも。息子だけで七人もいたらそうなるか。あ、でも、ママ嬉しそうだよね。前世では私一人だったから尚更子沢山が嬉しいのかも。 …とは言えもう弟はいりません。妹なら少し考えます。 っといけないいけない。話がそれた。 生活は騒がしくなったとはいえ変わらずな感じ。 問題は外での事。 まずFIコンツェルンが白鳥財閥に吸収合併されて事実上の日本トップの企業に躍り出た白鳥財閥。その跡取りな私に物凄い量のお見合い写真が届く。それに伴いお祖母ちゃんが樹先輩、猪塚先輩、優兎くんを婚約者候補として名を上げさせ、他の企業の息子を追い払った。 そんな中、お兄ちゃん達と一緒に財閥の事について勉強を始め、
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小話25 遠足(美鈴小学二年生:春)

「美鈴ちゃんっ!」 私は目当ての姿を発見して駆け寄る。 すると美鈴ちゃんも手を振って駆け寄ってくれた。 二人でぎゅっと抱きしめ合う。 「……美鈴ちゃん、華菜ちゃん。僕の存在覚えてるよね…忘れてないよね?」 美鈴ちゃんの背後で何か呟いた声が聞こえた気がするけどきっと気のせいだね。うん。気の所為だよ。 「忘れてなんかないよ。ごめんね、優兎くん。華菜ちゃんに会えたのが嬉しくてついつい」 「うん。美鈴ちゃんはそう言ってくれると思ってた」 ちっ。折角美鈴ちゃんと抱き合えるチャンスを…。じろりと優兎くんを睨むと、平然とした顔で返された。 「聞こえてるよ。華菜ちゃんの心の声。舌打ちなんて女の子がする事じゃ無いと思うけど?」 「べー、だ。ふふん。優兎くん、本当は羨ましいんでしょ」 「うん。そうだね。羨ましいよ」 ……そうだった。優兎くんには何故か私の嫌味は通じない。ある時を境に優兎くんはどんどん男らしくなっていってる気がする。 それがいつだったかはもうあんまり覚えてないけど。 そもそも美鈴ちゃんの事以外頭に入れておく必要がないとも言う。 あ、でも、美鈴ちゃんに優兎くんが害をなしたら、それは話が別。その時は叩き潰す。 「二人共ー?仲が良いのはいいけど、そろそろ行かないと集合時間になっちゃうよー?」 集合時間…? 何の話だろうと考えて、ハッと思いだす。 そうだっ!今日は遠足でバス時間があるから早く行かなきゃいけないんだったっ! 「行こっか」 美鈴ちゃんが私と手を繋いでくれて走りだす。 それが嬉しくて私は「うんっ」と頷いて美鈴ちゃんと一緒に走りだした。 その後ろを余裕顔でついてくる優兎くんにはちょっとイラッとしたけど。 美鈴ちゃんに手を引かれてるからその背中が目線に入る。美鈴ちゃんの白猫リュック可愛いなぁ。お耳がついてて尚更可愛い。 これが手作りだって言うんだから凄いよね。しかも美鈴ちゃんの手作り。 そして私が背負ってる白兎リュックも美鈴ちゃんお手製でお揃い。これを貰った時すっごく嬉しかった。 因みに優兎くんもお揃いだ。優兎くんのはクマさんリュック。本当は黒兎にしたかったって言ってたけど、私と優兎くんが断固拒否した。どうして優兎くんと美鈴ちゃん以上にお揃いにしなきゃいけないのよ。 うんうんと頷きながら走っていると、校庭に到着した。
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小話26  恥ずかしいのっ!

「えっと、右足が前で、左足が後ろ…」 「美鈴ちゃん。違うよ~。逆だよ~。左足が前で右足が後ろ」 「え?うそっ」 美鈴ちゃんが動きを止めて私の持っていた振付の載った紙を覗き込む。 今度の授業参観が丁度体育の授業で。その日はお父さん達にパフォーマンスを見せるとかで私達は今頑張って練習をしていた。 勿論家の中だと出来ないから、美鈴ちゃんと待ち合わせした公園で。 「ちょっ、棗っ。足、逆っ」 「え?あれ?」 向こうで美鈴ちゃんの双子のお兄さんも同じくパフォーマンスの練習をしていた。 双子のお兄さん達のクラスも授業参観の日は体育らしく、私達のクラスともう一クラス。そしてお兄さん達のクラスの四クラスの合同パフォーマンス。 だから、覚える内容は一緒。ただ難しさは双子のお兄さん達の方が学年の違いもあって上なんだけど。 「華菜ちゃん。今の所、私が言った形であってるんじゃないかな?」 「え?どれ?」 「だって、こっちから見ると…」 つい意識をお兄さん達に向けがちだったけど、視線を戻して美鈴ちゃんとあーでもないこーでもないと言い合う。 「もう一度、やってみよう」 「うん」 曲はないからテンポで振付を覚える。 「1、2、3。2、2、3」 二人並んで踊る。手を振って、横に流して、はいポーズ。片足出して、くるっと回転、お尻を振って、はいポーズ。更に右足、左足、腰に手を当てて、はいポーズ。 うん。バッチリっ! 完璧だと思って横を見ると、美鈴ちゃんが顔を隠してしゃがみ込んでいた。 「ど、どうしたのっ?美鈴ちゃんっ」 慌てて隣にしゃがみこむと、美鈴ちゃんは耳まで顔を赤らめて、 「は、恥ずかしいよぉ~…」 と苦しんでいた。何が恥ずかしいんだろう?分からなくて首を傾げるしか出来ない。 「大丈夫?」 「大丈夫…大丈夫なんだけど…。これお兄ちゃん達に見られたら私羞恥心で死ねるかもしれない…うぅぅ…」 あ、なるほど。それが恥ずかしかったんだぁ。美鈴ちゃん、可愛いっ。 「なら、美鈴ちゃん。今度は女子パートじゃなくて、混合パートの練習しようよ。丁度パートナーのお兄さん達いるんだし」 「そ、そうだね。そっちなら、なんとか…」 顔を真っ赤にしたままで美鈴ちゃんが立ち上がる。自分でほっぺをむにむにと引っ張って羞恥心をとばそうとしてるその姿は堪らなく可愛いかっ
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小話27 初詣

「流石に三が日過ぎると人がいないな」 「出店も辛うじて残ってる程度ですしね」 優兎が俺の言葉に同意した。 親父や祖母さんは事件の後片付けに翻弄されて、佳織母さんは忘れていた締め切りに追われている。 腹に新しい子供がいるかも?とか軽く言うから一瞬冗談かと思ったが。その爆弾発言後病院に行って確認したら妊娠していると宣言されたと笑って帰って来た後の締め切りラッシュ。 美鈴に怒られるのは仕方のない話だ。 「ねぇ、鈴」 「なぁに?棗お兄ちゃん」 「どうしてお着物着なかったの?」 「歩き辛いもん。やだ」 あぁ、そう言えば言われてたな。祖母さんがこの前着物を買ってきていた。美鈴に似合うからと言って。 でも確かにこうやって歩く事の多い場所で着物は辛いか。 「でも、鈴ちゃん。ニットワンピースも似合ってるよ?可愛い」 「そ、そう?ありがとう、葵お兄ちゃん…」 顔を隠して照れてるのを隠そうとされると、無性にその顔を見たくなる。 ぐっとその衝動を堪えて、俺達は参道を歩く。勿論手水は済ませている。 真っ直ぐ本殿へ向かい、参拝する。代表して美鈴が鐘を鳴らし、俺があらかじめ渡しておいたお賽銭を五人で入れて、二拝二拍一拝。 何やら弟妹達は真剣に祈ってるが、俺は神頼みをするほど信仰心はない。 けど、一応家族の健康を祈っておいた。俺の事は祈る必要はないが、家族の事は俺一人でどうにかならない時もあるからな。 参拝も終わって、俺達は社務所へ向かう。 「安産祈願買わなきゃっ」 「だな。後は破魔矢と家族分の御守りも、だな」 「鴇兄さん、絵馬は?」 「書きたいか?」 「書きたいっ!」 棗が俺に聞いたはずなのに、美鈴が元気よく手を上げた。 そんな美鈴の頭を撫でつつ、俺は社務所で店番をしている巫女さんに注文をする事にする。 えっと、親父と双子、優兎は緑、美鈴は赤の交通安全の御守りだろ。それから佳織母さんには出産祈願の御守り。祖母さん達と旭には健康祈願。あと俺には一応受験の事も考えて学業成就か? んで、破魔矢と熊手、更に絵馬が四つだな。 思い浮かんだ順に注文を終わらせて、少し待つ。 「ね、ね、鴇お兄ちゃん」 くいくいとジーパンを引っ張られる。 「どうした?」 「おみくじ、やってもいい?」 おみくじ? あぁ、これか。社務所の横の方に御籤筒がある。
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小話28 美鈴の日本語講座

来た…。ついに来たっ! 白鳥先輩が授業から抜けられず、僕と白鳥さんの二人きりがようやく来たっ! 「それじゃあ、始めましょうか。猪塚先輩」 『うんうんっ!』 図書室の一角に向き合って座る。 ……つい何時のも癖で向き合って座っちゃったけど…隣に座れば良かったんじゃ…? 座ってからじゃもう遅いしっ! しくしくしく…。心の中で逃したチャンスに盛大に泣いておこう。 「問題集、作って来たんでこれをやりましょう。とは言っても、先輩は多分、敬語と普段の言葉を覚え間違ってるだけでしょうから必要ないかも知れませんが」 うん? 目の前に差し出された問題集と書かれたプリントの束。 「ちゃんと文章を読みこんで、問題に答えてくれたら解ける筈ですよ~」 白鳥さんがにこっと微笑んだ。 そうだ。折角白鳥さんが時間を割いてくれたんだ。 ちゃんとやらなきゃ失礼だ。よしっ! 「それじゃあ時間計りますよー」 『え?時間?』 「少しでも遅れたら、問題追加ですよー。追加の問題は難しくなりますよー」 『え?え?』 「ではー、よーい、スタートっ!」 ピッ。 どっからストップウォッチがっ!? いや、そんな事より急がなきゃっ!! 僕は鉛筆を手に取り、白鳥さんが作ってくれた問題に取り掛かる。 ガリガリと書いて、次の問題を解いて。 必死になって解いてる最中、そう言えば白鳥さんは何をしてるんだろうと視線だけを上にあげると、そこには同じく問題を解いている姿があった。 ふと僕の視線に気付いたのか白鳥さんが顔を上げる。 『どうかしました?』 イタリア語でどうした?何か分からない問題でもあったか?と聞いてくる白鳥さんに慌てて首を振り問題に戻る。 また問題を解いて、それでもやっぱり気になって白鳥さんに視線を向けると、小首を傾げてくる。 ………可愛いな。 触っちゃ、駄目、かな…?『駄目に決まってるだろ。何をふざけた事を言ってるんだ?猪塚』『はいっ!すみませんっ!』 思わず立ち上がって頭を下げる。 「せ、先輩?どうかしたんですか?いきなり立ち上がって…?」 『え…?』 頭を上げてきょろきょろ周りを確認する。 あれ?白鳥先輩がいない? 今声がしたのに……幻聴? 『い、今、白鳥先輩の声が…?』 『棗お兄ちゃん?え?いませんよ?』 気のせい、だった…? なん
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小話29 駄々っ子美鈴~葵編~:美鈴小学四年の秋

「絶対嫌ぁっ!」 ……可愛い。 鈴ちゃんが必死に僕に抱き着いて教師の懇願を叩き斬っている。 「そんな事言わないで。白鳥さんの為にもなるのよ?」 「嫌っ!!絶対絶対嫌っ!!」 どうしてこんなに教師と格闘しているのか。その理由を僕は知らないし、目の前にいる鈴ちゃんのクラスの担任教師も僕に教える気がないのか絶対その内容を口には出さない。 ただ、鈴ちゃんが嫌だと僕に抱き着いて、その鈴ちゃんの腰を引っ張って話を聞かせようとする担任教師の姿。 …大きな株?確かそんな童話があったよね? ぼんやりと遠い目をしていると、そこへ龍也が通りかかった。 「……何してるんだ?お前ら」 「何してるんだと聞かれると、鈴ちゃんと先生の攻防戦としか言いようが…」 そしてそれに僕が巻き込まれているとしか…。 大体十分くらい前。授業が始まる前に日直の僕は先生から日誌を受け取ろうと職員室に来た。 すると、そこで鈴ちゃんが教師と言い合いをしていて。 一体何にそんなに騒いでいるのだと、鈴ちゃんに歩み寄ると、教師は一瞬だけ眉をよせて、鈴ちゃんは僕の存在に喜んですぐさま抱き着いてきた。 「先生が何と言おうと、どう説得しようと嫌なものは嫌ですっ!!」 そこから鈴ちゃんは僕に抱き着いたまま「嫌」の一点張り。 正直全く要領を得ない。 「とにかく白鳥さん。そんな風にお兄さんに抱き着いたままじゃ話も出来ないでしょう?一旦離れて私と二人で話しましょう?」 「嫌ですっ!」 「白鳥さん…」 はぁと大きくため息をつく教師に僕は一体どうしたらいいのか少し戸惑う。 鈴ちゃんの味方をしてあげたいけど。内容を聞かない事にはどうにも…。 「葵お兄ちゃんっ。葵お兄ちゃんは私の味方だよねっ?ねっ?」 「うん。勿論味方だよ」 「じゃ、じゃあ、今日は一日お兄ちゃんの側にいてもいいよねっ?ねっ?」 「それは…僕としては大歓迎だけど。僕のクラスで授業を受ける事だって鈴ちゃんにとっては全く問題ないとは思うんだけど…でも、鈴ちゃん。いいの?」 「え?何が?」 「僕のクラスって事は、こいつがいるよ?」 親指で後ろにいる龍也を指す。 ピシッと鈴ちゃんの表情が固まった。 「おい…。なんでそこで固まるんだ」 鈴ちゃんが固まった事により、腕の力が緩み、 「さぁ、白鳥さん。こっちで話を詰めましょうっ」
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小話30 自慢の子供達

「白鳥先輩~っ!」 名前を呼ばれて振り返る。 こんなに疲れて帰宅しようとしている私の足を止めるとは…良い度胸だよな。 爆弾テロとか起こしてくれやがった父の後始末。 事件当日は佳織や母がいたから何とか帰れたものの…後処理をしなければならない私はここ数日職場で寝泊まりしている。 それがようやっと目処が付きこうして家路につこうとしているというのに…。 「風間…。徹夜明けの頭に響く。でかい声だすな。喋るな。口を縫い止めてしまえ」 「え~、酷いっすよ~っ!こんなに先輩への愛で溢れてるのに~っ!」 「だから、うるせぇって…」 ガンガンと頭を叩かれてる。まずはその声を上げるのをやめてくれ。 「そんな事より、先輩っ!今日はもう帰れるんっすよねっ!?一緒に一杯行きませんかっ!?」 「断るっ!」 お前なんかと飲みに行くくらいなら早く帰って佳織を抱き締めたいっ! ……………頭の中に美鈴の自重してねって言葉が届いた気がした……。 まぁ、その本音を置いとくとしても、それはそれとして、もう何日も職場に缶詰にされてたんだ。 今日はとっとと帰って家で待ってる子供達と飯を食いたい。 まだ時間は18時前だ。今から帰れば確実に晩飯に間に合う。 さっさと帰るぞっ! 足を一階入口に向かって早足気味に動かす。 「で、何処に食いに行きます?」 「……お前、人の話聞いてたか?それとも態とそう言って息の根止められたいのか?」 いつの間にか隣に並んだ後輩に呆れ半分、殺意半分で言うとそいつは驚いて目を見開いた。 「え?オレ何か悪い事言いましたっ!?」 無自覚かよっ!! こっちは腹の中に溜まりにたまった溜息を盛大に吐き出しているというのに、風間はきょとん顔だ。 「悪いが風間。私はここ数日缶詰め状態でやっと家に帰れるんだ。今日は何処にも寄るつもりはないんだよ。今日くらいは家族の顔を見て飯を食いたい」 「あ、あー…成程ー。そんじゃ、オレを家に招待してくださいっ!」 「……お前、ほんっと人の話聞かねぇなっ!?私は、家族水入らずで飯を食いたいんだよっ!!」 「あ、大丈夫っすっ!オレ、水はいらないんでっ!!」 ……なぁ、誰か、私に教えてくれ。なんでこんな馬鹿がSPに、警察になれたんだ…? 「大体、お前だって久しぶりの帰宅だろ?家族に会いたくないのか?」 「……………そ
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小話31 お姉ちゃんのお仕事:美鈴小学四年生の秋

階段の下。 旭が本を持ってうろうろしている。 家の階段は結構な高さがあるから旭一人だとまだ登れない。 多分美鈴に読んで貰いたくて、でも一階に美鈴がいなくてせめて階段下で美鈴が来るのを待っていたんだろう。 「旭。そんな所でどうした?」 理由は解ってる。が念の為に階段を降りながら尋ねると、 「おねえちゃんに『ほん』読んでもらうのー」 予想通りの答えが返ってきた。 旭は美鈴に懐いてる。きっと佳織母さん以上に懐いているし何なら美鈴を母親と見ていてもおかしくない。 そう言えば度々美鈴が旭と一緒に本を読んでいる時があったな…。 どんな風に読み聞かせしてるんだ? ちょっと興味が沸く。 「旭。美鈴なら部屋にいるだろうから、連れてってやろうか?」 言うと、旭の目が光輝いた。 階段を降り切って旭を抱っこすると、そのまま階段を逆戻り。 「それ何の本だ?」 「ももたろうっ!」 「桃太郎か。そんな本家にあったか…?」 美鈴が買ったんだろうか?それとも佳織母さんが嫁入りの時に一緒に持って来た? 首を傾げつつ階段を登り切って、真っ直ぐ美鈴の部屋へ向かう。 「あのね、ときにぃちゃっ。きょうこそはっ、だんじょん、くりあするんだよっ!」 むふんっ! 胸を張って旭が言う。…が、すまない、旭。兄ちゃんには何の事だかさっぱり分からないぞ? そのまま美鈴の部屋の前に立ち、ノックをすると、はーいって声と同時にドアが開いた。 「あれ?鴇お兄ちゃんに旭?どうしたの?」 「おねえちゃん、ごほんよんでっ!」 ずいっと差し出された…本と謎の一式。 「いいよ~。前回どこまでいったんだっけ~?」 旭を床に降ろすと美鈴が旭の頭を撫でながら問いかける。 「おばあさんが、『かわ』に『せんたく』しにいくための『せんたくいた』をげっとしたよっ!」 …………ん? ちょっと待て?桃太郎だよな? …………やばい。何かすっげー気になる…。 「美鈴。俺もちょっと聞いてっていいか?」 「え?うんっ、いいよ~っ」 許可をとって美鈴と旭が小さなテーブルの側にちょこんと座っているのを横目に俺は美鈴のベッドの上に寝転がってその光景を眺める事にした。 ……待て待て待て。何だ?その小道具一式は? 厚紙に美鈴が絵を描いたのか?カードみたいにきっちり切り揃えられてる所がまた芸が細かい。
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