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All Chapters of 血指手: Chapter 91 - Chapter 100

100 Chapters

九条蒼生女視点 確信

 私の返答に答えないのに一枚の写真なんて送ってこれたわね。それに私が会社に戻る前に勝手に実験なんかして、後で始末書を書かせないといけないわ。私は自分が誰の傍で突っ立っているのかも忘れて、笑い声をあげてしまった。 まぁ、あの錠剤は安定剤の効果もある。耐性のない人間が口にすると一時間程だけど深い眠りに入る事も分かっているから、ここまで慎重にしなくてもいいのだけど、念には念を、と思って自負していたのよ。 それを「岬」という男は簡単にも崩してしまう。敵にすると厄介な人物、そして危ない奴だ。10分くらいたっているから、確実に夢の中にいる。だからここから50分間は自由な時間が与えられたも同然。 <直接お話したいのですが、よろしいですか?> 写真を送り付けるだけ送り付けて、どうせ返信は来ないだろうと思ったけど、そこはきちんと考えているのね。私は「YES」とだけ送信し、岬からの連絡を待った。すると、すぐに着信の画面に切り替わる。私は何の躊躇いもなく、嬉しそうに電話に出た。 「どうでしたか? あの写真」 「……最高ね、でも私が不在の時に擬態させるのはどうかと思うわ」  嫌味を含む言い方で問いつめてみるけど、それはフェイク。本当は嬉しくて仕方がないの。そんな私の感情を知られる訳にもいかないから、ここは冷静に努めようとするけど、上手くいくかしら? 「副社長は今、手が離せない状況でしょう? だから俺が動いたんですよ。勿論この事は「社長」には内緒にしています」 「へぇ。きちんと言いつけ守ってるのね。意外」 「そりゃそうですよ。裏で金を貰っておいて、公言するなんてありえませんからね。俺も研究員の端くれですし」  岬はまだ私の会社に在籍になって短い。元は父が引き抜いた人材だ。元々優秀なのは知っていたけど、父を裏切って、私に協力をするとは当時は考えれなかった。多額の金額を積んだのもあるかもしれないけど、研究する事が生きがいの彼には「イシス」の元となる生命を作る研究は未知の領域で
last updateLast Updated : 2025-12-02
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茨の道を選んだ男

くすくす笑う岬の姿が不気味に見えて仕方ない。傍から見ると笑顔に見えるけど、瞳に一切光がないように見えてしまう。私だけなのだろうか、彼の本当の姿を知っているからこそ、そういう目線で見てしまうのかもしれない。 最初に岬と出会った時は少し違和感を感じた程度だったけど、今ならその違和感が何だったのか理解出来る。 見えない闇はいつの間にか残り少ない私の光さえも侵食してしまうのだから── お父様からの紹介でこの会社の研究者として配属された岬。どうやってお父様との縁を繋いだのか未だに分からない。最初はお父様の事だから裏から引っ張ってきた人材だと思っていたけど、繰り返し聞いてみると、口を閉ざして隠すばかりのお父様から「私からスカウトした訳じゃない」と言われ、驚きを隠せなかった。 「どうしたんですか? 副社長」 「えっ」 「何か考え事しているようでしたから、観察をしていました」 いたずらっ子のように微笑む岬の笑顔が怖い。ゾクリと武者震いをしてしまいそうな身体を抑えながら平静を装う。 「別に貴方に関係ない事よ。そんな事より岬君、貴方は研究の事だけ考えてればいいの」 「くすっ……副社長の言う通りにしていますよ。まぁ俺からしたら副社長も「研究対象」ですがね」 まるで私の秘密を知り尽くしているような口調で煽る彼の背中から影が浮き彫りになって私の身体を包み込もうとしてくるみたいな恐怖を感じてしまう。距離が近くなればなるほど、彼の隠している「本性」が見え隠れしていて、吐き気がしてしまいそうだ。 「……本当に貴方は」 「ん? 何か言いました?」 「……独り言よ」 「ふうん。そうならいいけど。まぁ俺は楽しませてもらっていますから。楽しいですね」
last updateLast Updated : 2025-12-03
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おかえり

 「何かしら?」 私は彼の瞳を覗き込むと深い闇に吸い込まれていくような感覚を覚えて身震いをした。奥底で何を考えているのか、見ているのか分からない男。いつもとは違う雰囲気の岬を探るように言葉を選ぶ。そんな私に気付いたのか「クスリ」と小さな笑みを漏らした岬は、黒い眼差しで今度は見つめ返してきた。 「貴女の|本当《・・》の目的は何ですか?」 「……急に何を」 「俺が何も気づいていないとでも?」 余裕のある笑みに変化していく。この男はどれだけの仮面を持っているのだろうか。全ては統一されているように見えるのに、別角度から見ると別人のようにしか見えてこない。「これは何かの錯覚かしら?」と考えてしまう自分が、まるで彼の手のひらで転がされているみたい。 私は押しつぶされそうな闇から逃げる為に|御託《ごたく》を並べていく。一つ一つの言葉がバラバラで私の言葉らしくない。岬に誘導されているようで、初めて恐怖を感じた。私が思っている以上に危ない人間かもしれないと思いながら、無意識に後ずさりをしてしまった。 「……どうしたんですか? 副社長。顔色が真っ青ですよ?」 「……なっ」 続きの言葉が出てこない。何か言わなくちゃ自分と彼との立ち位置が変わってしまいそうなのに、喉に詰まって出てこない。そんな私に近づけば近づく程、私は防衛本能で離れようとする。まるで獲物と駆られるもののようだ。 その瞬間「ガシッ」と私の腕を引き寄せ、耳元に唇を寄せてくる。 「岬っ?」 「……貴方は自分が思っている以上に「侵食」されていますよ」 そう呟く岬。 「訳が分からない」 率直な意見を言うと不気味な嗤いで「ククッ」と低音に包まれた音が私の脳内を駆け巡る。脳内の中で赤いランプが点滅する。これは「警報」だ。自分の中にいるもう一人の自分……「イシス」を体内で|飼っている《・・・・・》状態から私が「イシス」の立場に落と
last updateLast Updated : 2025-12-04
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本当の名前を俺に教えて?

自分が思っている以上に侵食されていたようだ。自分の軸と思っていたものや立場が全て異形な存在へと変化していく。その中で私はいるはずなのに、いない、視界や思考、体さえも自分のものじゃない感覚が全身を駆け巡り、覚醒への道へと後押しするのだ。 表情が見えていたはずの顔は長い髪によって隠れた。私の瞳は髪に隠れていて、相手からは見えない。彼から見えるものは歪んで笑う口元だけだった。 『どんな気分かな? 俺に教えてくれない?』 「……」 返答する様子もない私を見つめてくる視線が痛い。観察対象を見るような視線に近いだろう。普通の人間からしたら、そのような異様な空間は居心地が悪いかもしれないが、|現在《・・》の私にとっては『快楽』に近いものを感じた。 私を纏う空気が淀んでいく。天井に浮いてしまった本物の私は、その光景を見つめながら、唾を飲みこむ。そんな事しか出来ない。 ──嫌な予感がする…… 人間の直観と言うものは真実を見抜く目を持っていると考えている。自分を守る為の『防衛本能』に近いかもしれない。 『……副社長、いや『イシス』と呼んだ方がいいかな?』 何の反応もしなかった私の身体がピクリと反応する。 「……私は、どちらでもないわ」 『と言うと?』 初めて返ってきた返事が余程、嬉しかったのだろう。いつもの笑顔とは違う本当の表情で、岬は質問をした。その質問に答えるように、私の前髪から目つきの鋭い、まるで別人のような私の姿が、彼の瞳に映る。 「器でしかないのよ、その|名称《・・》は。私には別に名前がある」 『なら、君の本当の名前を俺に教えてくれないか?』 「名前を聞きたいのなら、貴方から名乗るべきでは
last updateLast Updated : 2025-12-05
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愛する人を見つけた

 I found a loved one I can't keep my usual look That is the beginning of the collapse and the beginning of the regeneration. 愛する人を見つけた 俺はいつもの表情を保てなくなる それが崩壊のはじまりで再生の始まりだ。 昔の事を思い出す名前、それが『しおり』だ。俺はその名前を聞いた瞬間に自分の実験が上手く行った事を知る。彼女が生前の時の行動、考え方、そして人間性をイシスに組み込んだのだ。彼女の複製を作る為にイシスと言う存在を利用したに過ぎない。 副社長……いや、蒼生と呼べばいいだろう。もう彼女は俺の上司の立場ではないのだから。イシスの器として落ちた彼女はもう人間と呼べない物体なのだ。それでもそこにしおりは生きている。元の体の持ち主の意思を押さえつけて君臨しているのだ。 「……君に会いたかった」 ふと零れたのは本当の心。自分の中で消化していたつもりだったが、やはりこうもしおりに生き写しになり、自分の名前をそう呼ぶ声も、俺が唯一愛した彼女と同じなのだから、感情も揺さぶられてしまうだろう。 「私は貴方を見ているとイライラするわ、何故かしら?」 「ははっ。再会したのに、冷たいな」 「貴方に会った事ないはずなのに……」 「ふふっ。何も混乱する事なんてないんだよ、しおり」 俺がしている事は残酷な事なのかもしれない。死した者の細胞さえもイシスに取り込んでしまったのだから、完全な偽物ではないんだ。一部でも彼女の鼓動がある、そう考えれば満足に近いものを得られた。 「どうして私を呼び覚ましたの?」 「君が必要だからだよ」 先ほどまでイシスとしての口調が強かったのに、だいぶ馴染んできたのだろう。少し時間が経てば、しおりそ
last updateLast Updated : 2025-12-06
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「Goddess」

忍び込んで何時間が経っただろうか。ヒスは隠し階段を用心深く上り、真っすぐ進んでいた。階段は思ったよりも長くて、時間がかかってしまった。本来なら普通に駆け上がりたいのだが、ここは敵のいる場所だ。軽率な行動は出来ない。 忍び込んでいる事自体が軽率な行動かもしれない。だけど自分達の知らない所で何かが起こっている。それを知る意味が自分達にはあるのだとヒスは考えていた。ただ私達に相談しなかった事を少し後悔していたが、そんな事を考えてしまう弱さを引き飛ばそうと足音を立てずに進むしかない。 (こんな所で何をしているんだ) 言葉に出す事が出来ないヒスは心の中で呟く。階段を抜けるとロウソクの火で淡く照らされてある廊下を進んで行く。その先に何が待っているのか恐怖と好奇心の狭間に揺られながらも、進む足を止める事はなかった。 こんなに歩いているのに、監視カメラくらいあるだろうに。普通なら侵入者がいた時点で誰かが出てきそうだが、静せさが広がっている空間しかない。それもそれで変な話だ。まるで招き入れられているようで、正直、気持ち悪い。 その時だった。急にウィーンと音が鳴り響き、天井から液晶がゆっくりと降りてくる。これ以上進ませる訳にはいかないと言っているようにいく手を阻む。 「はじめましてヒス様。ようこそ御園コーポレーションへ。この場所に来たと言う事は支配人が貴方を呼んだのですね」 「……」 液晶の中に映し出されているのはアンドロイドのような姿の女だ。右側は綺麗な皮膚で隠されているが、左側は骨組みが露出している。壊れた人形のようにこちらを無の感情で見つめてくる瞳からは鼓動を感じる事が出来ない。 一瞬、ただの作られた映像かと思ったが、それを否定したのは彼女だった。 「私は御園コーポレーションが開発したアンドロイドのミソノと言います。もう廃盤の機種ですが、ここを守る存在として新しい役目を
last updateLast Updated : 2025-12-07
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青色の髪

ヒスがその言葉を呟いた瞬間ミソノの映像が乱れた。少し砂嵐が混じったかのような映像を見つめながら、何故その現象が起きているかを理解しているように余裕の笑みを漏らした。ヒスは表情が明るくなりくすくすと笑っている。 「……邪魔なんだよね。僕はこの先に用事があるんだ。通してくれないかな」 「……映像が乱れたようです。どのような事をしたのか分かりませんが」 映像が安定すると無表情なミソノの顔が再び映りだした。何が起きているのか分かっていないミソノは軽く首を傾げそう言い切った。 「君に分かる訳ないよね。だって君は何も知らない」 「……わたしには…何を……」 徐々に映像が歪んでいく。安定したかと思えば散る花のように乱れていくのだ。そしていつの間にか映像は真っ黒になり、動かなくなる。 「これだからポンコツは」 息を吐きながらも、呆れた様子のヒス。さっきまでの行動とは違って大胆な行動をし始める。ポケットに入っていたタバコを取り出し、口に咥えたのだ。ボシュッと火を灯すと、私の知っているヒスとは別人のような彼がいた。 「Switching」 まるでヒスの言葉に引き寄せられるかのように映像が切り替わる。真っ黒な画面の中に誰かが写りだしたのだ。そこには男のような骨格をしている仮面を被った人物が見え隠れする。 「人が来てやったのに、この待遇はあんまりじゃないか? Kleshas」 「……」 「だんまりかよ。僕は時間を有効活用したいんだ。用事がないのなら呼ばないでほしいね。そこまで暇じゃないからね」 「ambersか」 「僕の事、思い出せた? この扱いはあんまりじゃないかな」
last updateLast Updated : 2025-12-08
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誰なの

いつの間にか自分自身の話し方やあたしから私になっている事に気付いたのはこの状態になり数時間が経過した頃だった。本当の自分を持っていたはずなのに、別人になりつつある現実に目を向けるしかなかったの。 「あたしは九条蒼生よ、しっかりしなきゃ」 「そう|まだ《・・》ね」 何処からか私の頭の中で声が弾けた。どこから聞こえてくるのか分からないけれど、聞いた事のある声だ。昔自分の声を録音した事があるから分かる。これは私── 「はじめまして。私の名前は九条レイカ」 「誰なの」 「初めて会うわね。本当は妹とも会わしてあげたかったのだけれども、今は難しいわね」 「私の質問に答えて」 ヒステリックになる自分なんて今までなかった。こんな自分、私自身も知らない。いつも余裕で冷静な判断が出来ていたのに、現実とは程遠い、この状況のせいで私はいつも通りの判断が出来なくなっていた。 「ヒステリックになるのも無理はないわ。私は貴女の細胞から出来た人間よ」 「どういう……」 「貴女の母は貴女が裏切るのを察知していたのね。自分の欲望の為にイシスを利用するなんてバチ当たりな事をするからよ。だからダミーとして私が産まれたのよ。その証拠に見た目も声色も、何もかも貴女の生き写しでしょう?」 「気持ち悪い」 ふと漏れた言葉は感情の糸。自分で感情を言葉にするのなんて、それも今知ったこの女の前で。自分の失態に気付いたけれど、もう引き返せなかった。何が起こっているのかも知りたかったのもある。 「貴女のお父様もダメよね。岬をこの研究所に入れたのが運のツキ。彼は貴女達の思い通りになる人間じゃないもの」 「岬……彼が原因なの?」
last updateLast Updated : 2025-12-09
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新しい名前

自分で自分の記憶が思い出せなくなっていく。自分が目の前に広がる景色の中で生きてきたはずなのに、いつの間にか全てが入れ替わっている。体はしおりにとられ、精神も侵され自分に残された唯一の希望も失うのだろうかと震えてしまう程。 自分がここまで「弱い」人間だったなんて、全てを失って初めて気づくものなのだと改めて実感する。何も出来ない、したくない。でも……でも。 蒼の身が危ない。 私のふりをして彼に近づいたと言う事は、彼も適合者の可能性が高い。きっとイシスとは違う立場として産まれてきた人間の一人だろう。私が知っている情報以外にも隠されているものがあるとは思っていたが……ここまで確信を得る事が出来なかった。 ──今までは レイカの残り香が私の心を真っ黒に染めていく。自分の愛した人間を元に戻す為にイシスと融合する決意をした純粋な気持ちの私はもういない。死んだのだ。 「新しい名前が欲しい」 ふとそんな言葉が漏れた。自分の感情が麻痺していてどんな心情なのかよく理解出来ていない。それでもこれも私なのだ。 今の私は名前さえも奪われた『ナナシ』だ。自分の生きてきた人生が歪んでいたのも分かっている。それでも唯一の願いの為だけに生きてきた。 「でも、それももう終わり」 夢は所詮夢なのだ。私には荷が重すぎた。そんな答えしか出せない私はレイカの残り香をかき消すような甘い香りに気付く。うずくまっている体を起こし、振り返ると黒い人影がいた。雰囲気と骨格的に男性と言うのか分かる。でもそれ以外に誰かを特定するものはなく、ただただ鼻が焼けそうな位の甘ったるい匂いに眩暈がする。 「ミドリ」 人影はそう言うと私の方に指を向ける。 「え?」
last updateLast Updated : 2025-12-10
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前段階

まがい物な私はいつまでも偽物の立場だ。 その状況を変化させる為には逆転の発想が必要だろう。 ホンモノを偽物に落とす事で自分は確実な存在へと昇格する事が出来ると 私は信じている…… 本当の自分の名前を名前の与えられる事のなかった妹に渡す。 そして私が本物の『九条蒼生』に成り代わるのだ。 月は赤く発光しながら、私の心の中を満たしてくれる役割をしている。捨てられる存在の自分を回避する為にはこれしかないと考え、行き着いた結果だった。岬を泳がす事で、自分の願いも手に入れれると感じたのだ。 イシスの原型を作る為に、自分の愛した者の細胞を組み合わせる事で、偽りに近い存在でも死者を生き返らせる事が出来ると岬は考えたのだろう。記憶を持っていない存在だとしても、その上から人為的に上書きすればいいだけなのだから、幾ととなく沢山の時代を生きた彼にとっては簡単な行為。 それは人間としての生き方を捨てた行為かもしれないが、どうしても過去の1ページを変えたくてそのような行動をしているのだろう。色んな女の犠牲者達と関わりながら、沢山のシナリオの中で生きる。 その行動そのものを理解する事は難しいが、私が彼の立場なら同じ選択肢をしていたのかもしれない。 私が『人間の心』と言うものを手に入れる事が出来ればの話だが── 「おねぇちゃん、これからどうするの?」 「レイカ。貴女が知る事はないのよ。ここからは私のやるべき事なのだからね?」 「……うん、|蒼生《・・》おねぇちゃん」 私はやっと手に入れる事が出来た名前を呼ばれて、愉悦を感じてしまう。これは何かしらと考えてみるけど、私がこの体を手に入れるまでの実験の内容に感じた感覚と同じ事を知る。当時
last updateLast Updated : 2025-12-11
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