私の目的は彼を救う事だけだったはず、それ以外は視野に入れないようにしている。実の父だろうが、どうなろうが私には関係がない、そう思ってたのに…… 少し弱気な部分を見てしまうと別の感情に支配される。それは一般的にはいいことなんだけど、私の中では違った。一つの目的があるからこそ、生きていると実感出来る。今は他事に時間を割いている余裕もない。 「私らしくないわ」 感情に揺さぶられるのは彼の存在だけで充分、それ以外に私の心を揺さぶる権利はないのだ。人間は完璧になれない、出来ない、だからこそ冷静にいたい、そう思うのは理想論なのかもしれない。一番分からないのは自分自身の事なのだから。 「副社長、ここにいましたか」 「あなたは」 急に声をかけられたので少し驚いてしまったが、呼吸を整えて振り向き、言う。金色の髪が印象的なメガネ君。名前はなんだったかしら、印象はあるんだけど、関りがないから名前まで覚えていなかったわ、本人に知られちゃうと失礼よね。 「岬です、岬啓介」 「ああ、岬くんね、どうしたの急に」 「社長から頼まれた資料が出来たのですが、何処にも見当たらなくて……」 「なら、私が渡すわ、何かしら」 「本当ですか? ありがとうございます」 「いいのよ」 本当元気な子ね、まだ若いのに能力を伸ばしていると聞く。裏まで知っているようには思えないけれど、お父様が依頼しているって事は、秘密事項かもしれない、やはり一枚かんでいる? 確認する為に岬の素性を調べようと考え着いた。 「あの……」 「何かしら」 「社長に渡す前に見ていただきたいのですが」 なんて提案するのか
Terakhir Diperbarui : 2025-11-22 Baca selengkapnya