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Semua Bab 血指手: Bab 71 - Bab 80

100 Bab

古民家喫茶にて

 通された席はテーブルだ。カウンターと違って、中が見えないように隠れている。木々が複雑に絡み合って入り口を塞いでいるような感じだった。外観とは裏腹に個性的なお店だな。女もこういう店に入ったのが初めてのようで戸惑っているように見えた。 「さ、座ろうか」 「ああ」 ─コクン 慣れたように席につく。私はヒスの隣に座り、女は前に座った。カタンと杖の音がテーブルを鳴らす。こちらにも響いてきそうな振動。少しだけだが、ぎこちない。 「何飲む?」   私に聞いてきたので、気を使わせないように女に聞いてみる。別に口説く訳じゃないし、ただ聞くだけ。女に慣れてない私は自分で出来る限りの気遣いを見せれたと思う。まぁ、ヒスと比べ物にならないくらい不器用だったかもしれないけど。 「貴女は何、飲みます?」 そう聞くと女は肩にかけているポーチからメモ用紙を取り出そうとした。しかしメニューがある、書く癖がついているんだろうと思うと、口添えた。 「メニューを見てからにしましょう、指でさしてくれれば大丈夫だから、ね?」 ──コクン いつもの口調ではない事に気づき、コホンとわざとらしく咳をする。ヒスはその様子を見ながら、ニマニマしていて、気持ち悪かった。なんだか調子が狂わされている気がする。別にいいが、自分のイメージがどんどん上書きされていく。 「兄さん、優しいね」  言葉をスルーすると、女を観察してしまう。体制を崩している隙間からチラリと瞳が見え隠れする。最初の印象とは違って、メニューを見て悩んでいる姿は女の子だ。目元だけだから分からないが、どちらかと言うと童顔だと思う。 ヒスのあの立ち回りように疑問を感じていたが、美人なのに気づいていたと言う事か……前髪が長くて目が隠されているのに、よく分かったな、と感心してしまう自分がいる。そういうセンサーがついているのかもしれないと考えていると、笑いそうに
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-24
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ココア

 「ココアかぁ、僕も同じものにしようかな。兄さんは?」 「私はコーヒー、ブラック」 「あっ、そっか兄さん甘いもの苦手だったよね」 「まぁな、一息つきたいし」 ヒスは女と同じものにし、私はブラックコーヒーにした。店は少し込みだしたようだ。ここは喫茶店でもありバーでもあるようだ。夜の八時からバーに切り替わると聞き、それはそれで見てみたいと思う。私は甘いものは無理だが、酒は大好物なのだから、つまみと酒があれば尚よい。 「少し落ち着いたし、話せる?」 私達は軽く飲むと、カップを置き、ヒスから切り出した。女はコクンと頷き、取り出していたメモで文字を書いていく。片手だけで書くのは大変だろう、抑える手があった方がいいと思いながら見つめていた。しかし本人は慣れた様子で書く、私の心配は杞憂だったようだ。 書かれたメモをこちら側に向けると、少しイソイソしている女、緊張しているのだろうか。私は「大丈夫だよ」と満面の笑みで伝えると少し安心させれたみたいだ。ヒスに習って、真似をしてみたのだが、変じゃなかっただろうか。 メモにはこう書かれていた。 ──拾っていただきありがとうございます。 私の名前はレイカです、年齢は23歳、好きなものはココアです。 年齢までは分かる、この女は自分の状況が分かっているのだろうか、それとも天然なのか。自己紹介から始めるのは理解出来るが、わざわざ好きなものを書かなくてもいいと思うのだが……私の中で沢山のハテナが降り注ぐ。 「へーレイカちゃんか、僕の名前はヒスだよ。同い年じゃんか、ねぇ兄さん」 「ああ、そうだな」 「ココア好きなんだ~、僕も好きだよ」 ちゃっかり乗っかるのな、そういう情報はどうでもいいんだが、ヒスの対応の方が合っているのだろうか、私には分からない。簡略出来る所はする、した方がきちんとした情報だけ取り入れる事が出来るからだ。本題に入りたいのだが、この調子だと時間がか
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-24
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逃げ出した経由

 話を聞いていると驚く内容だった、時間はかかったが内容がきちんと分かったから、そこは安心。私とヒスは小さな溜息を落とし、レイカに告げる。 「よかったら私達と暮らすかい? そんな家にいるよりいいと思うが……」 ──迷惑をかけてしまいます。 「いやもうかかっているから、気にしなくていい」 「兄さん、言い過ぎ」 何故だ? 本当の事を言っているだけなのに、そんなに言葉に棘があっただろうか。それにいくら境遇が悪くても、本当の事は言うべきだ。例えレイカが傷つこうが。それを踏まえて環境を変えたいと言うのなら、自分から変化を求めるだろうからな。 「どうする?」 ──……。 「兄さん口悪いから、気にしないで」 ──いえ、本当の事ですから。 「変わりたいと思うのなら来ればいい、君自身が決める事だ」 ──お邪魔じゃなかったら、ついていきたいです。  そうメモで綴るとなんだかんだ言いながら、決断力の速さに驚く。家で監禁されて逃げてきたと言うのも嘘じゃないかもしれない。まだ全部を信じた訳じゃない、何せ初対面なのだからな。しかし、傷跡を見ていると、事実じゃないかとも思う。 自由に外に出れないように片足を切断し、どん底に突き落とす為に片手も奪われた。そして口だ。誰とも喋れないように糸で唇を縫うなんて、どんな神経をしているんだ。狂っているとしか思えない。勿論全ての傷跡を見せてもらった。ヒスは顔を顰めていたが、私はきちんと確認する事が出来た。それはレイカからすれば屈辱だったのかもしれない。 「一つ聞いていいかい?」 ──はい。 「何故、私達にしたんだい? 助けを求めようと思えば他にもいたはずだ」 ──昔、母に言われたのです。車のナンバーを教えられていて暗記している番号と同じだったので。  車の事を言われて、ドキリとした。この車はいまは亡き祖父から貰った
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-25
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イシスの副作用

 「どうしたの、兄さん。深刻な顔をして……」 「いや、何でもないさ、気にするな」 人には気にするなと言っているが、自分に言い聞かせている節もある。私はレイカを見つめながら溜息をはくと、レイカの目がどんよりとする。 ──ご迷惑ですか? とメモに書かれてしまった事で、表情に出ているのかと気づいた。この子、もしかしたら昔の記憶がないのか? 私も忘れてしまっていたが、幼い時の彼女の面影があるようにも見える。どれが本当で嘘なのか分からないままで、家に来さすのは危ういかもしれない。 過去の事を聞いてみたが、何も覚えてないようだ。家族と名乗る人物は彼女名前を「レイカ」だと言った。自分の傍にいさせる為に記憶も改ざんしたのか、本当にそんな事が可能なのだろうかと考えてみる。 そういえば昔聞いた事があった。「イシス」と言う名の細胞の話を……ある女性の中でしかなかった新しい細胞「イシス」色々な研究者が人体実験をした記録が綴られていた書物も、確かあったはずだ。 イシスを体制のない人体に結び付けると、体は耐えれるらしいが、意識と記憶を失うと書かれていた事を思い出す。レイカはイシスの被害者の可能性がある。確かめる手立てはない……が、後は事故か何かで記憶を失った、とか。その線もある。 (確か「イシス」を取り込んだ人間はあの言葉を言うと拒絶反応をしたな、試してみるか) 危ないが本当の事を突き詰める為には、必要な行動だ。私は自分に言い聞かせながら、実行する事にした。 「兄さん、どうしたの?」 「血が出て、指は落ち、手は滅びる」 「は?何言ってんだ、兄さん」 「ちょっと黙ってろ」 その場を制すると、この言葉を言ってからレイカの反応がない。大丈夫だろうかと思いながらのぞき込むと、ギロリとした狐のような目つきになっていた。全身、武者震いをし、まるで何かが乗り移っているようだ。副作用は人格が変わる、そして顔つきが異質になる事だ。破
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-25
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管理人の語り 二人の九条蒼生≪合致地点

二つの物語を少しずつ狂わしていく変異細胞「イシス」 研究者は躍起になって解明に乗り出そうとしたが、ことごとく失敗した。 一部の人間にしか知られてない「イシス」 九条家だけが唯一、握る特権であり、力でもある。 二人の蒼生は生き方は違えど目的は似てくるのかもしれない…… しかし 一人の蒼生は何も気づいていなかった。 一人の蒼生は何も出来ない自分を嫌いになった。 二人が望んで、歩む道は茨、それでも願望は夢は希望は捨てる事が出来なかった。 「助けたいからこそ、私が動くのお父様を敵にしても、妹を土台にしてでも」 「何かが動いている、自分の人生を操られるのなら、自分で選択するんだ、何があってでも」 ──二人を翻弄させようとする人物が怪しく微笑みながら物語を繋げようとしている。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 二人の九条蒼生≪合致地点 少しの沈黙の中で時間だけが過ぎていく。私はレイカが落ち着くように諭してみるが、何も聞こえていないようだ。どうしようかと思いながら、自分がパンドラの箱を開けてしまった事を悔いる。ヒスも何度も何度も声をかけているが、私の時と同様だ。 「どうするんだよ、様子がおかしい」 「お前知ってるはずだ」 「何が」 何度も同じ会話の繰り返し、ヒスは本当に知らないというのだろうか。九条の名を持つ上の層である「富裕層」の私達なら知っているのが当たり前だと思ったんだが、思い違いだったのだろうか。その時だった、急に個室に入ってきた人
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-25
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不信感と違和感

 私達が住む予定の新しい新居を見たのは一度きりだ。ヒスが基本見てくれたので全て任せてあると言った方が正しいのかもしれない。荷物は電話がかかってきていた事に気づかなかった私は、折り返し電話をかけた。すると、もうすぐ荷物が到着する予定みたいだ。それを聞くといいタイミングで蒼生が来たんだな。 「私とレイカは車の中で待っているわ、早く終わらせて」 「分かってる」 「それならいいのよ」 蒼生は昔と何も変わらない。性格もそのままお高いお嬢様って感じだ。いつも会う時、衝突して問題を起こしていたのを覚えている、昔の事が最近の出来事のように思えて、なんだか恥ずかしくなる。あの頃の自分は、意見も言えなかった。それを気に入らなかった蒼生はよく怒っていたのを思い出した。 そんな事を考えながら、手続きをすますと、簡易的な荷物を中に入れ、出来るだけ早く済ませた。よかった、冷蔵庫と洗濯機くらいしか荷物がなかった事が幸いだ。ベッドやテレビなどは事前から備え付けであると聞いていたから持ってきてはいない。知り合いに頼んで持ち出してもらった。誰か使う人がいたら渡してくれと伝えて正解だった。 こんな状況になるなど、誰が予想しただろうか。妙に出来すぎてて怖いくらいだ。誰かに仕組まれているんじゃないかと疑ってしまう。 「終わったぞ」 「蒼にしては早いほうじゃないの、昔はトロかったのに」 「余計なお世話だ」 「減らず口叩けるようになったのね、いい事」 こんな会話をしたいんじゃない。こいつらの周りで何かが起こっている事は明白。そして私とヒスも巻き込まれそうになっている、いや、もう巻き込まれているようなものだ。レイカの様子を伺うとまだ眠っている。薬が聞いている証拠と言っていたが、何の薬を打ったのか不明。それはこれから聞くとして、蒼生はどうでもいいが、レイカをこのまま放置するのはどうかと思い、後部座席のドアを開け、お姫様抱っこをした。 「大胆ね、本当男らしくなったわ」 「喋る暇があるなら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-25
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新居 固執

ココアを頼んだ時、私達の前で唇の糸を解いていたレイカの姿を思い出す。本当は誰かに強制されているのではなく、自分から望んであの姿になったのではないだろうか。しかし理由が見つからない、何故だ。 「糸を外せば食べれるんじゃないのか?」 「……あの子、人前で糸を解いたの?」 「そうだが?」 「珍しい事もあるものね」 一言置くと、レイカを見つめる蒼生の瞳が揺らいだ。感情を露にするなんて珍しい。昔の蒼生ならこんな目つきをしない、何か変化でもあったのかもしれない。何せ10年以上も会ってなかったのだ。心情が変化していてもおかしくはない。あの父親がそれを許すのか、どうかは微妙な所だが。 「あの子、一応食べれるんだけど、私達が用意した食事には手をつけないのよ、警戒しているんだろうけど」 「警戒するような事をお前たちがしたんだろう?」 「私は時々様子を見に行ってただけよ、レイカをこんなふうにしたのは別の人だもの」 保護者と名乗っといて、それはないだろう。それは蒼生の都合であって、逃げ場を探しているようなものだ、言い訳は誰でも出来る。こんな事になる前に手立てはあったんじゃないか。 「私からしたら同じ事だ」 「蒼からしたらそうかもしれないわね」 他人事のように話をする蒼生の態度が気に入らない。私はこんな考え方の人間にはなりたくないし、なろうとも思わない。怒りを通り越して、呆れている自分にも腹が立つ。蒼生はドアを開けると、私達が入っていくのを確認して、ドアを閉めた。 部屋に入るとテーブルと椅子がある。ヒスに聞くと自分の本当の部屋から持ってきていたらしい。きちんと四人分の椅子も用意されており、こんな状況になるのを予め分かっていたような感じがした。まぁ、そんな事はないだろうが、今は人を疑ってしまう。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-26
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監視記録

 蒼生が何を考えているのか分からない。話をするはずだったのに、無言で何かの資料を渡されてもどうにもできないのに、そんな事を考えながら、封を開け、中身を確認する。 ──人体実験№3 レイカ 「イシス」を両手両足と埋め込む事に成功した。 経過を見たのだが、左手と右足は腐食し始めていた。 「イシス」の重圧に体が耐えれなかったようだが、右手と左足は馴染んでいる。 レイカの様子を観察して分かった事だが、副作用に意識混乱と人格分裂があるようだ。 発狂する感覚が短くなってきたので対処の為に唇を縫い付けた。 本当の人格は眠っているようだ。 自分の名前も忘れてしまったので私達は彼女に「レイカ」と名付けた。 私達、研究者達のたわもの「イシス」の子供。 一部の肉体を損傷してしまったが適合者の場合だとクリア出来る可能性がある。 レイカを含め、三人目だが、ようやく成功へと一歩へと近づいた。 自我が飛ぶ時もあるので、その時の行動は要注意だろう。 研究者の私達では止める事が出来ない、だからこそ「イシス」の母の声と薬が必要だ。  ── 一枚目は「イシス」を埋め込んだ後の状態が書き込まれている。私は頭が痛くなりそうになりながらも、続きのページを捲った。  ──三日目 観察と言う名の監視をするようになって三日目が過ぎた。 レイカは眠ったままだ、昨日の薬の投与が効いているのだろう。 叫び声を出す事も少なくなった。唇を動かそうとしても動かないからだろうか。 特殊な糸で縫っているから専用のはさみがないと動かす事は難しいだろう。 この薬が馴染むまでは人間として生きる事は難しいが、上はまだ諦めてないらしい。  私も研究者の一人として「イシス」の実
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コーヒーブレイク

 この事はヒスには言わない方がいいと思い、隠す事にした。色々、文句を言われる可能性もあるが、レイカが起きればまた変わるだろう。蒼生は自販機で飲み物を買いにいっている。別室にヒスとレイカがいるが、どんな顔で話したらいいのか分からずに、この部屋に留まっている。 ──ガチャ ドアの開く音がした。蒼生が帰ってきたようだ。私は、ふうと息を整えると、椅子に座った。何事もなかったかのように、ソワソワしてたと知られたら茶化されるのが目に見えているからだ。 「ただいま、コーヒー買ってきたわよ、ブラックでいい?」 「ありがとう」 「色々見すぎたでしょうから、少し頭を休ませないと、ね」 「そうだな」 カコッとプルタブを開けると、喉にゆっくりと流し込む。程よい苦みが疲れた脳を休息へと向かわしてくれる。この雰囲気だけで落ち着く、やはりコーヒーに依存しているのかもな。嫌な事や考え事をする時、だいたい飲んでいるから。 「何故あれを私に見せた?」 「ん?」 紅茶を飲みながら、蒼生は視線をこちらに向けた。 「これも縁でしょ、手伝ってもらえないかなと思ってね」 「縁? 仕組んどいてよく言う」 「ふふっ、バレてたんだ」 「タイミングと用意が良すぎる」 「さすが蒼生ね」 機嫌よく言うと、飲んでいた紅茶を置いて、煙草を取り出す。蒼生が煙草を吸うなんて、今まで見た事がなかった。その姿がなんだか似合っていて、一緒にいる空間に馴染んでた。同じ空間で過ごす事など、この年になって滅多になくなった。だからこそ、懐かしさを感じたのかもしれない。 「蒼でいい」 「え?」 「同姓同名なんだ、私の事は蒼と呼べばいい。ヒスもそう呼んでいた」 「そう、なら蒼。私と組む気ない?」 「……考えておこう」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-26
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回想

 蒼生と初めて出会ったのは5歳の頃だ。九条家主催のパーティで顔を合わせた。初めてみる彼女は凄く可愛らしくて、礼儀正しかった。すぐにそれがまがい物と気づく事になったが、それがきっかけで絡まれるようになった。 「同じ名前なんて素敵ね」 「そんな事ないよ、どちらが呼ばれているのか分からない時あるし……」 「それはそうだけど、お母さまに感謝しなくちゃね、これも縁だもの」 5歳の癖にませているとはこの事だろうか。彼女は紅茶を飲みながらニッコリ微笑む。そういう所は天使のように見えるが、内面は悪魔だ。 本当は苦手だった。天真爛漫な彼女に巻き込まれる事ばかりで、自分のペースを崩されるからだ。何故、自分が我慢しなくてはいけないのだろうと何度頭を抱えたか、本人は気づいてない、それはそれでいいのだが。 「私パーティとか本当は嫌いなの」 「どうして?」 「だっていい子を演じなきゃいけないでしょ? メンドクサイ」 「そんな言い方したらダメだよ、誰が聞いているのか分からないんだから」 「聞かれた時はその時よ、しめるから大丈夫」 キラキラした瞳で親指をたてる彼女。私は何と返答すればいいのか考えてみたりもしたが、溜息しかつけなかった。すると、急に顔つきを変えて「溜息を吐くと幸せが逃げるわよ」なんて言う。そういう所は年齢相応なんだな。 「だからね、抜け出しましょ」 なんでそんな事に結び付けるのだろう。子供だから自由なのは分かるが、自由過ぎやしないか。私は「ダメだよ」と言いながら、あわあわしていた。私の言葉を無視し、自分のやりたいように進行していく蒼生に憧れていたのは内緒だ。 苦手な部分もあるが、それは羨ましさの裏返しだろう、今ならそう思える。当時の私は自分の気持ちさえも見えない、ただの子供だ。彼女と比べたら、天と地の差があるほどの。 「きっと楽しいわよ、あんたいつもしょぼくれてるんだから、こういう時こそ楽しまな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-26
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