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血指手의 모든 챕터: 챕터 81 - 챕터 90

100 챕터

先が思いやられる

 沢山の記憶の中で生きている私達がいる。時には道を違える事もあり、選択肢も変化していく中で自分で決めていくのが人生と言うものだろう。例え、|他人《ひと》に嫌われたとしても、これが自分なのだから、否定などしたくない。私の亡き祖母がよく言っていた「自由になりなさい、例え嫌われてもいいから」その言葉を胸に今の私がいるのだ。 蒼生との初めて出会った時の光景を思い出していると、ふと笑みが零れてしまう。そんな私を見て、彼女は不気味そうにこちらを見ている。ぱちりと視線が合った瞬間、しろどもどろになっていた。ふっと視線を逸らすと、逃がすものかと言わんばかりに蒼生の顔がにょきりとこちらを覗き込んでいた。 「気持ち悪い顔してるわね、何考えてたのよ」 「何も……」 「はいはい、嘘ね」 彼女は椅子に座ると買ってきた缶コーヒーを口につける。まだ少し残っていたようで、くっと流し込む光景が女らしさの欠片もない。見た目は綺麗なのに、どうして行動が男らしいのだろうか、と疑問に思う事も多いが、性格なので仕方ないと納得している。 「ヒスの様子はどう? 頭冷やしたいとか言って何処か行ったみたいだけど、連絡きたの?」  蒼生の言葉を聞き、思い出したかのようにスマホを取り出す。いつもの癖でポケットに入れていたスマホはほんのり温かい。私の体温と機械の熱が摩擦して、新しい温もりを漂わせていた。暗証番号を打ち込み、連絡が入っていないかと確認するも、誰からも連絡などなかった。前の家を出て、幾分か時間が経っているのに、誰からも連絡が来ていない現実を目の当たりにすると、自分の人脈のなさに呆けてしまう。心の中の自分が頭を振ると、現実へと舞い戻り、蒼生に伝える。 「来てないな……ヒスも考えたいんだろう」 「自分からレイカの世話をかって出た癖に、すぐ逃げ出したわね。あの子」 「そんな言い方よくないぞ。混乱しているんだろう、きっと」 「ふうん……庇うんだ、お優しい事で」 皮肉交じりの言葉を吐き出す蒼生の態度に
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出る事が出来ない牢獄

 彼は一つの道を歩いている。そこは光に照らされているように見えるが中心には闇が広がっている。何かから逃げ出すように出てきたはいいが、自分が何をしたいか、どうしたいか分からず、ただただ歩いていた。闇の中心に近づく度にもう後戻りは出来ないんだな、と彼は思う。レイカと言う女と出会い、何故か気になった。彼女の鞄をあさって、何か情報を得ようとしたが、何もなかった。しかし4つの番号が鞄に刺繍されており、もしかして、と彼女のスマホを取り暗唱番号を押してみると、ビンゴ。不用心だな、と思いながら中身を確認すると、怪しい地図の画像が出てきた。そしてKJと書かれている。どういう意味かは分からないが、何かのヒントに辿り着けたのは間違いないだろう。僕は冷静な表情で彼女のスマホと共にこの場所にいる。 地図は複数枚あって、元は一枚の地図のようだ。しかし何当分にも分かれていて、見にくい。それでも加工アプリを使って少しずつではあったが合わせてみたら、御園コーポレーションの下に地下室があるように書かれていた。御園コーポレーションは表向きは薬などの開発に携わっている。しかし昔ある事があり、調べた時に裏で人体実験をしていると言う噂を聞いた事があった。あの時はそれが事実かどうか判別がつけれなかったが、この地下の道を歩いていると、情報は確実なんじゃないか、と思ってしまったりもする。自分で確認していないので、どうにも言えないのが現状だが、そんな気がするんだ。 彼はそんな事を思いながら、スマホの裏側に隠されていたカードキーを翳し、中に入っていく。地下の道の奥には鉄格子の扉があり、どうやらカードキーがないと入れない仕様になっているようだ。指紋認証や顔認証もつけとけよな、と思いながら、大胆に入っていく彼を止める者はいない。 初めて入る場所。それも他人の私物を勝手に持ち出して、潜入に近い事をしている。彼自身はただ自分達の周りで何かが起きている事を察知し、別の組織が動いているのではないかと疑問し、行動に出た。それが吉と出るか凶と出るかは、誰も知る由がない。 一度入れば、出る事が出来ない牢獄のような場所、それが彼が足を踏み入れた場所だ。レイカはベッドの中で微笑みながら、荒らされた鞄を見つめている。彼
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隠しスイッチ

 ピッとカードキーが認証をした音がする。彼は何の迷いもなく中へと進んで行った。薄暗い中で見えるのはどこかの廃工場の見た目をしている風景が目に入ってくる。侵入したのがバレたとしたら誰かが来るはずだろう、そう考えながらも慎重に行動していく。スマホのライトでは光が大きい。こんな時の為にライトがついている時計にしておいてよかったと安心しながらゴウゴウと音のする方へと進んで行った。時計は懐中時計のように蓋があり、すこから淡い光が出る設計となっている。その光を辿りながら、辺りの状況を把握する事にした。 360回転で見回っていると古そうな机を見つけた。彼は何か手がかりがないかと思いながら、机へと近づいていく。何度もこういう状況を経験しているような手際だ。生活の中でこんな事に遭遇する事などないだろうが、彼からしたらこれが日常だった。指で机を撫でると、埃が絡みついてくる。長年使用した形跡がないと思っていたその時だった。机の端っこの違和感を感じて、ライトを照らす。すると、誰かの指の跡らしき、誰かが触れた形跡が残っていたのだ。彼は吸い込まれるように、その部分に人差し指で確認してみる。違和感は触っている形跡だけではなかった。指のサイズに合わされたようなスイッチが姿を現したのだから。 私なら怖気づいてしまうだろう。押して何かが起こった時対処のしようがないからだ。だが、彼は違った。このような薄暗い中でしかも机の端に隠しているもの、それが何を示すのか大体検討がついていたからだろう。躊躇う事なく、スイッチを押すと、横の床が天井へと向かい伸びていく。普通なら下から階段が現れるとかならありそうだが、天井とリンクしているとは思わない。ここが地下と言う事を把握しているから、もしかしたらのほんの少しの可能性をたたき出したのだろう。 軋む音がするかと思うが、無音。ほんの数秒待つと天井から入口が出てきて、手招きをしている。まるでおいでと言っているようだ。彼は新しい遊びをしているような感覚に陥った。まだ一階で探索する場所はあるが、二階への道を見つけたのだから。大胆になっていく。それを楽しそうに見ている者達がいるのも知らずに。 この地下には普通の監視カメラは使用していない。壁と一体型になって
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あたしはプレイヤー彼はキャラクター

一度踏み入れた場所からは逃げる事が出来ない。例え|そこ《・・》に心を躍らせるような仕掛けがあっても、それは侵入者を歓迎する為の遊びと言えよう。誰かに見られている感覚を抱きながらも、その現実から逃れる事は出来ない。 レイカは声を殺し笑い続ける。眠っている振りをしていた彼女はヒスが自分のスマホを持ち出していく事を見逃した。それはまるで最初から仕組まれていた物事を進める為に誘導させたのかもしれない。自分を不審がる存在に目をつけ、冷静な判断力を奪う為の演技だった。こんなに簡単に引っかかるなんて、と思いながら塞がれている口元に指を滑らせた。 後は|組織《・・》の人間が彼を監視してくれるだろう、そう思いながら自分が自由を手に入れた事に歓喜した。その時だった、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきたのだ。レイカは音を立てずに元の体制に戻り、眠り続けた。 「眠っているのね、レイカ」 「……」 「蒼はヒスを探しに行ったわよ、どうする気?」 蒼生はレイカの元に近寄り、口元の糸をゆっくりと解いていく。その間レイカは人形のように静止したまま、自由になるのを待っていた。全ての糸を抜き取ると、痛々しい針の跡が顔を出した。 「起きているんでしょう? これで話せるわよね」 「……せっかく寝ていたのに、起こすなんて悪い人だ」 「何を言うか、レイカの方がタチが悪いでしょ?」 口元を抑えながらくすくすと笑うレイカ。その笑顔はどことなくぎこちなく感じる。蒼生はため息を吐きながら、荒らされた鞄に視線を向ける。 「ヒスは何処に行ったの?」 「あたしには分からないわ。くすくす」 「蒼がいないから本性が出せるって訳ね。こっちは暴走してあの兄弟に接触したあんたを助けてやったのよ? 自覚してる?」
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初対面じゃないよ、俺は君の事をよく知ってる

 血を欲っする私は獣になりたい 指を食べたい私は凶器になる 手を切り落とす私は悦楽を知る 全て狂えばいい、私の中の狼がそう告げた。軋みは始まりを告げたのかもしれない。レイカと出会ってから、巻き込まれている気がする。ヒスは急に飛び出し、私は変なものを見せつけられ、そして口の自由を奪われた事を日常として生きている女と出会う。挙句の果てには会いたくもなかった蒼生との再会。 (何が起ころうとしているんだ?) 私は父の呪縛から自由になりたかった、だから新しい居場所を得た……はずなのに、いつの間にか前の環境より悪化しているように見える。ヒスは急にいなくなる事は何度もあったが、すぐに帰ってきていた。そんな彼が一行に帰ってこない。何かに巻き込まれたのかもしれない、と心配している自分がいるが、頭を冷やそうとしている自分もいる。まるで二重人格のようだ。 「何処に行ったんだ?」 車を走らせ、探し続ける。喫茶店にも顔を出したか聞いてみたが、来ていないと言われた。コンビニにも向かったが、ヒスの形跡は残っていない。まるで最初からいなかったように、消えてしまった。私に弟がいた事自体が夢だったのかとも考えたが、そんな訳はない。一緒に暮らしていたんだ。 「どうしました?」  そんな私の様子を車の中から見つめていた男性が車を降りて、こちらへと向かってきた。私は身構えたが、彼は愛想を振りまきながら、紳士的に対応してくる。勿論知らない人だ、正直、レイカとの出会いが出会いだったから、固まってしまう。 「そんなに警戒しないで……と言っても、無理かな?」 「急に声をかけられたので、驚いただけです」 「それならいいんだけど、誰かを探しているようだったから、気になっちゃってさ」 「……」 「言いたくないのなら言わなくていいよ。でも僕なら君の力になれるんじゃないかって思ってさ」 この男はなんなのだ? 初対面の癖に力にな
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条件

 この男は私の事を知っていると言う。そして弟の居場所も。ついてくるのは私の自由だと私の心を揺さぶってくる。何者かも分からない存在に翻弄されている事が悔しく、腹立たしい。男は私を試すような目で見つめ、微笑む。この状況でそんな余裕がない私は、男の襟を掴んだ。 「何者だ、何故、弟の事を知っている」 「だからお前の知り合いって言ってるじゃないか。蒼」 「お前みたいな奴、知る訳ないだろう」 「ここまで言っても気づかないの? 鈍感だね」 「黙れ」 「感情に身を任せるといい事ないよ、蒼」 「何度も言っているだろう? 初対面の奴に言われたくないと」 話が前に進まない事に呆れた男は、髪をかきあげ、ポケットから眼鏡を取り出しかける。 「これでも分からない?」  その姿を見て、どこかで会った事があるような気がした。どこかでこの男を見ていた。だが記憶の中にぼんやりと存在するだけで、中々名前が出てこない。そんな私を見かねた男は、ため息を吐きながら言った。 「岬 啓介」 「み……さき?」 「そ、根暗で存在感の薄かった岬だよ」 私が中学時代にいつも一人で本を読みながら、誰との関わる事のなかった同級生の岬。髪色と眼鏡を外すだけでここまで印象が変わるのかと驚いたくらいだ。記憶の奥底にちっぽけな存在として印象が強かった。性格も大人しいと言うよりは、何を考えているのか分からない奴だったのを覚えている。クラス中に噂が回った事もあったくらいだ。確か捨て猫を拾って、ナイフでズタズタにしていたとか聞いた事がある。 正直、一番関わりたくない人間だ。 「思い出したようだね、よかったよ忘れられてなくて」 「そんな事はどうでもいい。どうして弟がいなくなったのを知ってる?」 「聞きたい?」 「そりゃそうだろう」 「あはは。そんな怒るな
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バクった思考と身体

 岬の言っている意味が分からない。どうして私が自分の身体を傷つけなければいけないのだろうか。どうすればいいのか戸惑っていると、そんな私の態度に笑っている彼がいる。 「大丈夫だって、死にゃしねぇよ。上手くやれば出来る」 そう言い切ると、小さなボトルを手にし、微笑んだ。この中に血を注げと言い切る岬の笑顔は闇を含みながら、歪んでいく。その姿を見ていると、吐きそうになってしまう。ヒスの事を心配はしているが、そこまでしてまで見つけようとは思えない自分がいた。 「結局お前は自分が大事なんだろう? だからそこまでは出来ないと」 「……」 返す言葉がなかった。私は無言で俯きながら、岬の言葉を聞いている。彼は「傑作だ」と大げさに笑いながらも、私が行動を起こす事を望んでいる。待っている、と言った方が正しいのかもしれない。 「じゃあ、傷つけずに血を拝借する事にするか……」 何かを考えるように呟く岬の言葉は私の耳には届かない。まるで時間が止まっているような感覚の中で首にチクリとした痛みが走った。その事に気付いた時にはもう、遅かった。即効性がある痺れが首から侵食し、話す事もままならなくなっていく。 言葉を出したいのに、思い通りに出来ない。私は精神力で耐えようとしたが、耐えれば耐える程、全身に回っていく。視界も少しずつ歪んでいく中で、私は耐え切れず、簡単に意識を手放した。  せっせと動かなくなった私の腕を捲り、注射針を血管に差し込む。手際がいい、慣れているのだろう。岬がどのような人生を歩いてきたのか、私には到底理解出来ない中、トクトクと心臓の音に合わすように血液が抜けられていく。 「こんなもんか。少ないけど、どうにかなるだろうな」 返事も反応もない私に囁きかけるように呟く言葉達は純粋に悪意を持っている。何に使うのかは岬だけしか知る事の出来ない現実。目的のものを手に入れる事が出来た岬は、スッと注射針を抜いた。針の跡からプックリと血が滲んでいく。
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黒いアイコンのアカウント

 ──ピロン スマホに一つの通知が来ている。蒼生は誰もいなくなった部屋の中でタバコを吸っていた。険しい表情で考え事をしているようだ。灰は徐々に光を失い、灰へと変化していく中で、咥えていたタバコを灰皿へと持っていく。 同時に口から煙を出した。頭に少しの痺れを感じながらも、ニコチン接種のおかげでイラついていた感情も少し冷静さを取り戻したようだ。 誰もいないからと言って、自分の本心を口にする事がない彼女は最後に一吸いし、火を消した。 先ほどからスマホの通知が煩い。何事かと思いながらスマホを確認すると、身の覚えのない「アイコン」からメッセージが来ている。いつもの蒼生なら放置するのだが、その時の彼女は違った。暗証番号を打ち、画面を開いていく。そして通知の欄に表示をタップした。 開くと、裏アカウントらしいものへと続いていた。彼女の表情はまだ険しいままだ。一つため息を吐く。アカウントのホームを確認しても、何の情報を落ちていない。知り合いのアカウントだろうと思いながらも、どんなメッセージが来ているか一応確認をする。 見るとURLが表示されている。スパムだろうか。時々こういうメッセージが来る事があるのだが、URLの一部分に「Goddess」と表示されている。ピンと来た彼女は何の躊躇いもせず、リンクを開いていく。 するとある「サイト」へと辿り着く。背景は真っ黒だ。そのまま見ると何の情報をないようなサイトに見える。しかし彼女は指で長押し、指をスライドさせていく。すると背景と同色で書かれた文字が浮き彫りになる。 「ふうん。接触したのね……成程」 呟く事のなかった彼女の第一声だった。その顔は歪んだ笑いに満ちていて、彼女の表の顔しか知らない人間からしたら、不気味だろう。 自分のすべき事を理解した彼女はその文字の通りに動く事を決めた。自分で動かなくても、誰かがする可能性があるが、私に一番身近なのは蒼生、彼女本人。 この環境を利用しない手はないと思いながら、彼女はまた
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軽率な行動が引き起こした状況

 何時間倒れていただろう。気がつくと辺りは真っ暗になっている。私はうめき声に近い声を出しながら、立ち上がる。まだ痺れが残っている。バタンと倒れてしまった身体を起こそうともがいてみるが上手くいかない。 何度も繰り返していると変に体力を消耗してしまった。疲れた私はダランと地面に項垂れ、呼吸を整えていく。 「油断した……情けない」 ヒスを探し出す為に出てきたのに、のんびりとこんな所でいる訳にはいかないのに、なかなか身体が言う事を聞いてくれない。時間が経つにつれ、ヒスの状況がどんどん悪化していくのが分かる。岬と出会った事で情報を得る事は出来たが、ある意味災難ともいえる状況だった。 「とりあえず、もう少しだけ休む……か」 無理して動いても、ヒスの足手まといになる。時間稼ぎの為に私に薬を打ったのだろう。何を考えているのか分からないが、嫌な予感がする。 バタンと背中から倒れ、両手を伸ばした。するといつの間にか握りしめていたカードキーの存在が露わになる。自分のものではない、となると岬が置いていったのか。 「そう言えば言ってたな。これがヒントか……」 目も少し霞んでいて、打ち込まれている文字も読みにくい。もう少し時間が経てば確認をする事が出来るだろう。そう思いながら、何も出来ない自分を恨んだ。 「こんな所で寝てるなんて、悠長だ事」 「……え」 聞き覚えのある声が私の耳に張り付いてくる。フウと息を吹きつけられる感覚で、夢ではなく現実なのだと知る事が出来た。 「蒼生、どうしてここに?」  声は出す事が出来る、だから聞いてみた。どんな返答がくるのかは分からないが。蒼生なら、この状況をどうにかしてくれるんじゃないかと、期待している部分もある。 「あんたのスマホのGPSを辿ってきたのよ。何があったのか知らないけど」 「私のスマホ?」 「
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一枚の写真

こんな形でキスをするなんて想像もしなかった。私はふう、と深呼吸をしながら目を瞑る。手にはほんのりと温もりが流れてくる。蒼生が安定するまで握ってくれている。人の温もりにここまで、安心するのかとぼんやり考えながら、眠りについた。 私は意識を手放し、自分の世界……夢の中へと堕ちていった。 蒼生はそんな私を見つめながらも、ため息を吐く。彼女が何故|そんな顔《・・・・》をしているのかは、本人にしか理解出来ないだろう。私が眠りについたのを確認すると、ソッと握られていた手を離した。 「岬……か」 蒼生は、そう呟くとまた表情を変えた。まるで百面相のようだ。無表情を務めようとしていても、怒りの感情が表に出ている事は否定出来ない。 The light disappears from the eyes Darkness is born 瞳からは光が消え 暗黒が産まれる ──ピロン スマホの通知が鳴る。蒼生は音を切り忘れていた事を思い出し、急いで消音に設定した。チラリと眠っている私を確認し、気づかれていない事に安心しながら、タップした。 黒いアイコンのアカウントからはログアウトしていたようだ。彼女の本来のアカウントに何かメッセージが来ている。アイコンを見ると、岬の姿がある。蒼生は眉を顰めながら、メッセージを読んでいく。 <血を手に入れました。これで次の実験が出来そうです。副社長にお伝えしたくてメッセージしました。夜分遅くに申し訳ありません> 申し訳ないと思うのなら、このタイミングで連絡してくるな、と思いながらも、きちんと返信をする。イシスを作る為には血液と細胞が必要不可欠だ。私はイシスの存在を知らずに眠り続けている。その横で何事もなかったかのように、口元をにんまりとさせる蒼生がいた。 <申し訳ないと思うのなら、次から気をつけてほしいものね。その血は何処から手に入れたの?> いつもの蒼生なら単刀直入に聞いたりはしないだろう。知らないふりをするか、同調するかの二択だ。しかし、私の状態を見て、何らかの感情を抱いていたのかもしれない。 スマホを見つめていても仕方ないと思い、閉じようとした時だった。光の点滅が瞳に反射し、引き寄せられるかのように画面を再確認する。 すると、そこには一枚の写真が添付されている。蒼生は岬が接種した私の
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