沢山の記憶の中で生きている私達がいる。時には道を違える事もあり、選択肢も変化していく中で自分で決めていくのが人生と言うものだろう。例え、|他人《ひと》に嫌われたとしても、これが自分なのだから、否定などしたくない。私の亡き祖母がよく言っていた「自由になりなさい、例え嫌われてもいいから」その言葉を胸に今の私がいるのだ。 蒼生との初めて出会った時の光景を思い出していると、ふと笑みが零れてしまう。そんな私を見て、彼女は不気味そうにこちらを見ている。ぱちりと視線が合った瞬間、しろどもどろになっていた。ふっと視線を逸らすと、逃がすものかと言わんばかりに蒼生の顔がにょきりとこちらを覗き込んでいた。 「気持ち悪い顔してるわね、何考えてたのよ」 「何も……」 「はいはい、嘘ね」 彼女は椅子に座ると買ってきた缶コーヒーを口につける。まだ少し残っていたようで、くっと流し込む光景が女らしさの欠片もない。見た目は綺麗なのに、どうして行動が男らしいのだろうか、と疑問に思う事も多いが、性格なので仕方ないと納得している。 「ヒスの様子はどう? 頭冷やしたいとか言って何処か行ったみたいだけど、連絡きたの?」 蒼生の言葉を聞き、思い出したかのようにスマホを取り出す。いつもの癖でポケットに入れていたスマホはほんのり温かい。私の体温と機械の熱が摩擦して、新しい温もりを漂わせていた。暗証番号を打ち込み、連絡が入っていないかと確認するも、誰からも連絡などなかった。前の家を出て、幾分か時間が経っているのに、誰からも連絡が来ていない現実を目の当たりにすると、自分の人脈のなさに呆けてしまう。心の中の自分が頭を振ると、現実へと舞い戻り、蒼生に伝える。 「来てないな……ヒスも考えたいんだろう」 「自分からレイカの世話をかって出た癖に、すぐ逃げ出したわね。あの子」 「そんな言い方よくないぞ。混乱しているんだろう、きっと」 「ふうん……庇うんだ、お優しい事で」 皮肉交じりの言葉を吐き出す蒼生の態度に
최신 업데이트 : 2025-11-27 더 보기