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All Chapters of 血指手: Chapter 21 - Chapter 30

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自己愛と欲しいもの

感情を失った訳でも、忘れた訳でもない。ただ見て見ぬ振りしているだけなのかもしれない。正直、そんな事はどうでもいいんだけどな。 僕の目の前には人間の、妹の『蓮』ではなく、人形に成り下がった『蓮』がいる。 昔の僕なら、こんな事しなかっただろう。したくもないと拒絶していたに違いない。でもな、年月と言うものは簡単にも人を変えてしまう。そうやって僕も、なりたくなかった『大人』への一員となったんだよ。 あの時はさ、子供な自分がいて、いつも反発ばかりしていた。何で、こんなの間違ってるなんて綺麗事並べてさ、言うだけなら簡単なのにな。その言葉一つで人の人生なんて壊れていくのが現実って訳さ。 蓮はあの牢獄から出る事は出来ないだろう。 幼い頃に負った心の傷と微かに残るやけどの跡、事故の傷。 本当によかったと言うべきなのか、生きている事が不運と言うべきなのか微妙なところだが。 (傷跡も、やけどの跡も、分かりずらくなって、普通に生活してたんだな) 僕は言った。妹の『蓮』に。 お前の足には見えない『釘』が撃ち込まれている。子供の頃はそれが食い込んで、なかなか外れる事はなかった。だけどな、大人になれば心と体は成長していく。 お前が望めばその苦しみの原因の鎖の『釘』を抜く事も簡単。 そして……背中に背負った十字架と生かされた命を認める事も出来る。 要は、お前次第だ。 「あの時の言葉に嘘はない」 僕の目の前には沢山の血が溢れて、部屋中にこびりついている。蓮は錯乱をして、自分の舌を噛み切ろうとしたから、タオルで口を塞いだ。 最初は『妹』を助けるつもりで『鬼』になるつもりだったのに、いつの間にかホンモノの鬼になっている自分がいる。 『魂まで鬼に喰わ
last updateLast Updated : 2025-11-09
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二つの脳

血の匂いが好きだ。最初は気にならなかったのに、妹の苦痛に歪む表情を見て、右腕からポタリと流れ出る血潮を見て、ゾクリと快感を覚えたのが最初だった。 ――なんて美しいのだろうか。 人間の肉を切り裂くと、あんだけ鮮明な色の液体が出るなんて、凄く魅力的で、芸術そのものだと思うんだが、君達はそう思わないかい? 僕は普通の人だったはずなのに、環境と自分の心の歪みによって、光と闇が入れ替わっているように感じた。止めたくても止めれない、受け入れたくても受け入れ方を知らない僕は、徐々に地獄へと堕ちていく。 当たり前の日常から地獄へと続く道は、崖から落ちるようなスリルを持っていた。最初から谷底に落ちる事はないんだ。徐々に落ちて、最後に叩きつけられる感じ。 その時、ああ、自分は狂っちまったんだな、と自覚するんだけどな、今ではもう慣れて、こんな自分を楽しんでいる訳さ。 僕だけ、その楽しみを知ったままなんて面白くないし、勿体ないだろ?だから俺は蓮にも教えてあげようと思ったんだ。 優しい兄貴だよなぁ?こんな快楽を教えてやろうとしてるんだからよ。 蓮は女だし、力もない。言う事もきかないから、どちらが上で下かを知らしめる為に『調教』をしないといけないと思った訳さ。 その為の少しの『暴力』なんだが、それも時期に慣れていき、心地よくなるから安心しろよ、と言いたい。 まぁ、今の段階で言うのは、全ての計画の崩壊へと繋がるのだから、黙り込むのが得策。徐々に体に慣らして、次第に心を喰らっていく。それってさ、最高じゃないか? (なんて美しいんだろうな、そして楽しい) 下準備段階で、興奮してるだなんてダメだよなあ。人間ってさ、そういう隙があるから、計画が壊れて『マイナス』な立ち位置になる場合もあるから厄介なんだよ。 得に感情と言うものはな……。
last updateLast Updated : 2025-11-10
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旧友

色々な現実から逃げたいと現実逃避も時々したくなるのだ。こんな狂った僕でも、一応人だからね。ふう、と溜息を吐きながら、イスに腰掛け、一息つこうとしている時に、スマホから着信音が流れた。 (誰だ?) 元は友人が多かった僕も、環境や立場により、大人達の思惑通りに生きていく方法しかなくて、徐々に『友人』と呼べる人物は減っていった……。最初は悲しいという感情が残っていたから、大泣きもしたし、どうして、なんて項垂れた時もあった。 (僕だって、初めからこんなんじゃなかったからね) 昔の記憶を脳内で再生しながら、瞼を閉じると、何だろうか、温かいものが流れた。これは何だろうか。心が麻痺している私には、その名前すら分からない。 実際は認めたくないだけなんだけどね。 過去の記憶から逃げるように這い出た僕は、現実世界の中で無意識に通話ボタンを押していた。まるで助けを求めるように……。あの時の僕には、その行動の意味が理解出来なかったんだ。 「もしもし?どうしたの?」 『久しぶりだね。元気かい?』 「うん、まぁまぁかな?露宇は元気にしてた?」 『まぁまぁだな』 「僕と同じじゃないか」 久しぶりに旧友の声を聞くと、昔に戻ったみたいで、勝手に微笑みが毀れてしまう。一つ一つの会話が僕の心の奥底に突き刺さり、じんわりと温もりを注いでいく。 氷漬けになっている僕自身を、元に戻す『治療法』のように……。 『ははは。でもよかったよ、元気そうで。全然連絡取れないから、心配してたんだ』 「そうか……ごめんな?」 『いいんだよ。こうしてまた碧生と話す事が出来たんだから』 その一言一言で、また温
last updateLast Updated : 2025-11-10
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影響力

酒は僕の心を開放させてくれる。面倒な事も嫌な事も全て忘れさせてくれる、極楽の一つだ。得に露宇と飲みに行くのが一番の気分転換になる。彼は昔の僕も現在の僕の性格も理解した上で付き合いを続けてくれている優しい奴だ。 ふっと懐かしい幼少の頃を思い出しながらも、溶けてしまう雪のように消えていく現実に戻されていく。 それは父の一言だった。 『そんな表情をするなんて、なんてザマだ』 気の抜けた状態で露宇との再会を楽しんでいる時に、そう言われたんだ。 『冷酷さだけを持ち、人を階段だと思え、九条家の人間だという事を忘れるな』 「……はい」 本当は分かってますよ、と言いたかった。しかしそれは父から見たら抵抗しているようにしかとらえられないだろう。だから僕に残されたものはイエスだけだ。 寂しさなんてものは必要ない。親の愛情よりも家の血筋を安定させ、今まで続いていたこの家を守る事のみ存在していると再実感したのはいうまでもない。 昔から露宇との関係性を不審に思っている父からは逃げれない。僕も逃げるつもりなどない。そんな選択肢は昔に捨てたのだから。 でも、少しだけ、ほんの少しだけ、笑顔でいた昔の自分に戻りたい気持ちもある。それが例え一瞬だとしても……。 ◇◇◇◇ 酒はうまい、旧友と呑むなら尚更。僕は待ち合わせ時間より少し早く着いた。時間ちょうどに来るだろうと考えて余裕を持って、出かけたのに、そこには露宇の姿があった。 『早かったな、蒼威』 「……露宇こそ」 僕の言葉に誘われるように、ははっと笑うと、昔と同じ真っすぐな瞳で僕を見つめてきた。 『毎度毎度、待たせるのは悪いからな』 「そんな事……」
last updateLast Updated : 2025-11-11
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葛藤

静寂の中で僕と父は向かい合わせに座っている。露宇と再会してから僕の様子が変だと言われたから、面談形式で色々質問されていた。 唯一の友人であり、懐かしい思い出でもあり、彼に影響されてしまったから優しさがにじみ出てしまったのだろうか。 『……お前はいつでも冷酷であるべきだ。それなのに』 父はいたって冷静に僕を見つめている。こんなんじゃ祖父と妹に勝てない、そう思われたみたいだ。 染みついている闇は過去を消し去ろうとしていく。心の中で本当の意味の温もりを捨てた瞬間だった。 「失望などさせません。全ては九条家の為に」 平和な世の中に産まれたはずなのに、この家は過去を引きずっている。昔の立場、金、権力、そして父が背負う汚い世界……。 その世界に沈む事が出来るのは長男の僕だけだろう。蓮はまだ子供であり、純粋さが優先している。その状態で闇を見てしまったなら、あいつはつぶれてしまうだろう。 別に妹を守る為に行動をしている訳ではない。どちらかと言うと昔から続く権力ほしさに実行しているだけ。しかし傍から見ると、守っているようにも見えてしまうだろうな。 『……』 僕の言葉は覚悟を背負ったもの。それは嘘じゃない。きっと父が望むのは過去の友人関係を断ち切り、家の支配下になれと言う事だろう。 それは理解しているが、人間というものはどうも複雑で感情と頭が別。まだついてきてない感覚がする。 言う事は何もないと表現するような父の立ち振る舞いはカリスマそのもの。期待はされているが、少しでも応えれないようなら、切り捨てられる可能性が高い。 (こんなところで終わらす訳にはいかない。どうにかして気を引かせないと) 思うばかりで何をしたらいいのか分からない。今は頭を冷やす時期だろうと冷たく言い放されたその一言が重く、背中に襲い掛かってくる。 僕は分かりました、とし
last updateLast Updated : 2025-11-11
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共通視点『支配人』

私達が何を選択するかで未来は分かれている。暗闇の中で漂うのか堕ちるのか、光を見ようとするのか。全てがバッドエンドではないだろう。私達にも見えない未来だからこそ、二人の『九条碧生』が存在するのだ。 一人はグラスを片手に歪んでいく世界を楽しそうに見つめている。一人は友情という名の光を消し闇へと流されそうになっている。 二人は同じ立場でありながら、性別、価値観、未来の生末、全てが異なってくる。警報の鐘は鳴り響きながら、支配人『夢幻狼』が語っていきましょうぞ。 自信を忘れる事のない女性の美しさと妖艶さを、そして純粋ながらも現実の姿に逆らえぬ男の果てを。 『さぁ――私達の手で物語を変えていくのです』 それが支配人『夢幻狼』の名を持つものの指名と言えばよいでしょうか。この仕事に着いて20年近くになりますが、この二人は見ていて飽きる事がないのです。 どんな物語を見せて、私達に置き土産を置いて行ってくれるのでしょうか。 興奮と悪意と冷酷さとそして……。 『貴方様はどちらの物語を選択されますか?』 私の手がテーブルの上にある二つのスイッチを示す。一つは赤いもう一つは青。本来なら選択肢は自由でした。しかし私の娘達がそれでは面白くないと言いましてね。今回、こんな手のこったサプライズを用意しておいたのですよ。 ニッコリ微笑む姿からは作られたまがい物の匂いしかしない。夢幻狼の名は繰り返し私達、一族の中で永遠の繰り返される役目の一つでもあるのですから。 赤い血を見ましょう 苦しみながらも悶えぬく快楽を感じましょう 泣き叫びながら愉悦に浸る新しい世界を創るのです。 『私の娘は五人いるのですが……どうしても決めれないのですよ』 優柔不断なのかもしれません。男と女、どちらの『九条碧生』も楽しませてくれる存在であり、私の欲
last updateLast Updated : 2025-11-12
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獲物 九条碧生<女視点>

絡みつく視線から逃げようなんて思いも考えもしない。私の前にあるのは繊細かつ重要な物事だった。私は溜息を吐きながら書類に目を通す、この繰り返し。お父様の仕事を代わりに進めていかなくてはいけない。今日は会合の日。この会社の副社長はこの私『九条碧生』だからお父様がさも進めたかのように錯乱させる必要があった。 私自身にはまだ力も権力も能力も乏しい。成長の過程だと言っているけど、本当は私に仕事を押し付けたいだけなのかもしれない。 「今日のターゲットは岬君かしらね」 光る眼が彼の名前に的を得る。気を緩めてしまうと笑ってしまいそうで、私も人間なんだなって思い知る。 ここは裏組織が集まる団体――会社として形を変え人材を選び犠牲者を選抜する。 「お父様も酷な事をするわね」 いくらおじい様と蓮が邪魔だって、こんなやり方は違う。そう感じるのだけれど、お父様の理想の世界を見てみたいと願う自分もいる。私はいつの間にかこちら側の人間になってしまった。蓮は私と違い自分を持っている。意見を言い、自分の信念の為に動き、私達を止める為に敵側へと成り代わった私の大切だった妹。 「もう以前みたいにケイジに会う事も出来ないのね」 唯一の拠り所だった彼の存在に何度も助けられたのを思い出した。少し前までの事だったのに、遠い昔に思えて仕方なかった。 「お嬢様、お決まりですか」 「早いわね」 声をかけてきたのは執事の昇。私の3つ下なのに実績を積み、お父様に気に入られて引き抜かれた優秀な執事でもあり左腕の一人。構成はお父様を中心に右に私、左に昇って感じなのよ。私はどちらかと言うとどんなマイナスも快楽の一つとして考えてしまう異常な性癖を持っているのに対して、昇は真面目一筋のお堅いお坊ちゃまね。 「今日お決めになるように社長から言われていましたよね。俺は回答を貰いに来ただけです」 「分かっているわよ、もう決めたから安心なさい」 「お嬢様にしてはすん
last updateLast Updated : 2025-11-12
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お茶

欲を権力を追い求める先にあるのは一体何だと思うかしら。その答えは自分の中でよく理解しているつもりだけど、割り切れないのが人間なのかもしれないわね。今回選ばれたのは『岬 大遊』と言う男。私達の会社の中で平社員として働いている男。この前奥さんと離婚騒動で会社にも迷惑をかけた要注意人物。切りもしない咎めもしないその理由は資料を見れば歴然だった。 私は一仕事終えると一服がしたくてデスクの引き出しにしまっている煙草を取り出し口に加える。ライターは特性の物。黄金に輝く中心には九条家の家紋の朱雀が彩られている。これは私達姉妹に与えられた物。あれはそう20になる時の誕生日に頂いたのお母様に。 連はまだ未成年だから私が保管している。もう一つのライターは地下の死体置き場へと隠している。表舞台に出ても支障のない私はゴールド、隠された子供として存在している蓮のはシルバーだった。いつか渡す時が来たらと思って持ち続けたものが、妹を地獄に堕とす材料の一つになると考えてあそこに置き去りにした。 私達の会社の存在はおじい様も蓮も知っている。裏で何をしているかは把握していないみたいだけど、いつの日か気付かれる日の為の対策の一つなのだから。 (自分達の罪を妹に押し付けようなんて醜いわね、でも……) たかがそれ如きで潰れるようなら九条家には必要のない人間と言うだけ。自分で切り開く事も出来ないのなら地獄へと堕ちていけばいい、そう思うのよ。蓮の背中を押すのは姉の私なんだけどね。 「失礼します、副社長。話とは何でしょうか?」 「来たわね、岬君」 この前の騒動が原因で呼び出されたのだと勘違いしているのだろうか。血色がよくないのが手に取る程分かる。自分の家族を潰したのは彼自身なのに、何を恐れる必要があるのだろうか。 「色々と大変だったわね。少しお茶をしませんか?」 「いえ、私は」 「あら。私の誘いを断ってよくて?お父様にバレたら」 「お付き合いします」
last updateLast Updated : 2025-11-13
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永遠に

お茶のいい匂いが部屋に充満している。私は彼の警戒心を解く為に自分のコップへと手を伸ばし、唇へと運んでいく。コクリと飲む私の姿を見て岬も同じように飲んだ。ゆっくりゆっくりと時間をかけて彼の体の自由を奪おうとしているなんて考えもしないでしょうね。 勿論、私のお茶には何の細工もない、ただの飲み物。しかし彼のお茶には私達が発明した痺れ薬を仕込ませている。今まで苦みを感じていたものを改良し無味無臭のモノへと作り替えたのだから、気付くはずがない。 微笑んでいる目元、そしてコップで隠された口。私の表情は醜く変形しているかもしれない。何故かって?目元は微笑んでいるのに、口元には何の感情もないから不気味にしか思えないでしょう。隠れた時にだけ造ろう口元を戻し、彼を観察するの。 「美味しい?」 『はい』 「そうでしょうね、うちの秘書のお茶美味しいから。銘柄を選んだのは私だし。貴方は恵まれているわ」 『副社長がお茶を選んだんですか?』 「そうよ、好きだから」 お茶が好きだからと錯覚させて、本当の言葉の意味は伏せておくのが一番都合がいい。口元を隠していたコップを元の位置に戻そうとする、その時、再び私の口元は微笑みに変わる。自分で自分が嫌になる位に。 「岬くん」 『はい』 「何故ここに呼ばれたのか理解してる?」 『え……と』 「貴方の仕出かした事は関係ないのよ?個人的なお願いがあって呼び出したの、ごめんなさいね」 『そうだったんですか』 自分の不祥事が問題ではないと中々気付かない彼に教えてあげると、固くなっていた表情が緩んだ事に気付く。岬は何も知らない、それが余計に私を苛立たせる。静寂の中でゆっくりと語る言葉達は怪しさを放ちながら、彼の体の中へと入っていく。もうそろそろかしら、と目線を腕時計に落とし確認すると彼にとっての最後の言葉を贈るの。 「貴方の仕事ぶりには感服だわ。これから新しいプロジェクトが始まる
last updateLast Updated : 2025-11-13
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ある人物

大切なものなんてどこにもない、あるわけないのだから。私は自分に言い聞かせるように、意識を手放した岬の様子を観察している。青白く死んだように眠り続けるカレを見て、高揚してしまう自分を抑える事が出来ない。お父様の言う通りに動いただけなのに、まるで自分の欲望の為に動いたような感覚がする。凄く気分がいい、人間を支配しているようで、笑ってしまう自分がいた。 「綺麗ね、観賞用として欲しいけど、お父様が許さないわよね」 「社長はそれを望んでいませんからね、難しい話でしょう」 「ふふふ、私に反論出来るのは昇、貴方くらいよ」 「……光栄です」 私達の目的は使い物にならない社員達を金に換えていく事。特に問題を起こす者に目をつけている。全ての臓器をある人に渡すのが目的。研究者と称する人物は新鮮な臓器、肉体を誰よりも欲しがった。ある意味コレクターなのかもしれないわね。報酬も通常の金額よりも大きい。人間の肺の金額は約20万弱だと言われている。安すぎる。でもあの人物は違った通常の倍以上の金額を提示してきたの。 「私なら50万出せます」 「通常の金額の倍以上じゃないですか」 「信用と信頼も込めてです、全てを信じろとは言いません。あくまで|ビジネス《・・・・》の取引先と考えていただけたら」 「それ以上は望まないと?」 「……ええ、今の所は。貴女のお父様からお聞きになった方がいいと思いますよ」 お父様は全てを知って私にこの人物との接触の機会を設けた。何かある、私もお父様の中で駒の一部なのかもしれないと感じた瞬間だった。私は金には興味がない、いやそう言うと嘘になるわね。正確には権力がセットでついていないと意味がないと思っているの。 (……試されている?) 表で微笑みながらも、この人間達の闇を見破ろうとしている自分がいる。未熟な私にそれが出来るのかしら。まるで手の平の上で転がされているみたい。 「少し考える時間をくれませんか
last updateLast Updated : 2025-11-14
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