Lahat ng Kabanata ng 「おはよう」って云いたい: Kabanata 11 - Kabanata 20

36 Kabanata

第十話——夏祭り

八月最初の週末に毎年、近所の神社でお祭りが開かれる。私と蓮と翠、そしてお互いの両親合わせて七人で神社に向かう。慣れない浴衣を身に纏い歩いていると、住宅街に下駄の音が響き渡った。近づくにつれて、太鼓と笛の音が鮮明になる。神社の近くの道には、屋台が多数並んでおり、人で溢れ返っていた。 両親と私たちはいつも別れて行動する。入り口で、おおよその時間だけを伝えて、両親は先にステージのある、境内に入っていった。私たちは両親の背中を見送り、先に屋台の方へ向かう。 「ねぇチュロス食べたい!」 「分かったから走るな。転ぶぞ」 「もう!子どもじゃないんだからそんな心配はいらないよ!」 「気をつけて歩いてね」 「は〜い」 「おい、俺との扱いが違いすぎるぞ」 「えへっ、ごめん」 そんな会話をしながらチュロスの屋台へ向かっていると、前から歩いてきていた大柄な男性とぶつかってしまった。 「わぁ!」 「……っぶね」 大きくよろけたところを、後ろにいた蓮が強い力で支えてくれる。そのまま人の少ない道まで手を引いてくれた。 「大丈夫か?」 「大丈夫だよ。ごめんね」 「いや、謝る必要はねーけど」 そう言って、蓮は顔を背け、こちらに手を差し出した。ほんのり頬が赤くなっている。 「えっ……」 「繋いでおけ。迷子になるぞ」 「あ、ありがとう……」 相変わらず顔を背けたままの蓮の手を握る。チラと横にいる翠を見ると、眉間に小さな皺を寄せ、握られた私たちの手に一瞬だけ視線を向けた気がした。私は不安に感じ首を傾げて声をかける。 「翠……?」 「ん?あぁ、ごめんね。行こっか」 「うん……?」 気のせいだったのだろうか。私に視線を向けたときには微笑んでいて、いつも通りの穏やかな表情をしていた。しかし前を歩く翠はほんの少しだけ早足に感じられた。 焼きそばや人形焼など、いくつかの食べ物を買い、少し外れにある道に出た。 「いや〜歩くだけでクタクタになるね」 「運動不足なんじゃね?」 「浴衣なんだし仕方ないでしょ〜!」 「まぁそれもそうか」 ここで言い返してこない辺り、蓮もだいぶ変わったな、と改めて実感する。私たちが食べた後のゴミを持って、蓮は一人、ゴミ袋のある場所へ向かっていった。 翠と二人になり、妙な緊
last updateHuling Na-update : 2025-11-21
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第十一話——二泊三日の開幕

「旅行だー!」 今年の旅行は、家から車で四時間ほどの海沿いに行くことにした。とにかく落ち着いたところが良いという私と蓮の意向だ。それ以外は両親が計画を立てており、詳細はまだ分かっていない。 全員で瑞樹家の七人乗りの車に乗り込み、両親が目的地までの道のりを確認していた。年に一度の機会にワクワクして落ち着いていられず、何度も体の位置を変える。前から瑞樹家の両親、うちの両親、私たち三人の順で座っていた。瑞樹家の父の運転で目的地周辺の海へ向かう。外に目を向けられないほどの強い日差しが差していた。みんなポロシャツと短パンなど、動きやすく風通しの良い服を着ている。なんだか同じような服装でおかしくて笑ってしまいそうだ。 「まじみんな張り切りすぎだよな」 つい言葉にしてしまったかと思ったが、声に出したのは私の右隣に座っている蓮だった。 「いや、ちょっと思ったけど……よく普通に言えるね」 「すごい、蓮は正直者だね」 私の左にいる翠も感心してしまっている。いや、私が感じたのは感心というより呆れに近い。日差しを理由に目を細めて右隣を向くと、蓮は車内をぐるっと見渡していた。窓の外を見ながら「まぁ、でも」と言葉を零す。 「楽しみだな」 小さいけど、確かに芯の通った温かい声だった。その言葉に私と翠は目を合わせて落ち着いた笑顔を蓮に向ける。 「楽しみだね!」 「俺も楽しみ」 落ち着かない気持ちも蓮の珍しい表情も、今日一日が特別な日なのだと実感させた。 そんな期待と小さなざわめきを心に抱え、私たちを運ぶ車が出発した。 車が動き出してすぐに私はお菓子を取り出す。 「おかーさん!お菓子食べていい?」 「いいけど、食べすぎないようにね」 「お前もうお菓子食べるのかよ」 「別にいいでしょ〜!」 お菓子を食べ始めた私を見て蓮が吹き出すように笑う。翠は、「俺にもちょうだい」と言っ
last updateHuling Na-update : 2025-12-01
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第十二話——ちょっとしたハプニング!?

「海だー!」 日差しに照らされた群青色の海を目掛けて砂浜を駆け足で横切り、波打ち際に向かう。砂がサンダルに入ってザラザラしていた。車の中で感じた潮の香りと海の風がさらに強くなって、非現実味が増している。「陽菜、走ったら危ないよ」「ごめん。早く見たくて走っちゃった」「その歳で転んでも知らないぞ」「転ばなかったからいいの!」 いつも通りの会話をしているのに、なぜだか気持ちは浮き足立っていた。周りには、親子や友人、恋人同士で楽しそうに声を上げている。 海の広さと人混みに紛れたせいで、自分の存在の小ささを思い知らされ、自然と感傷に浸ってしまう。それでも、寄せては返す波の音が、私の心を静かに凪がせていた。 私たちは、水着に着替え海の浅瀬に足をつける。小さい水飛沫をあげて私たちを歓迎した。水温も高いはずだが、心なしか私たちを涼しく感じさせる。私たち三人は浮き輪一個で海に入った。「んー気持ちいい!」「久しぶりに泳ぐな」「泳げるか心配だったけど大丈夫そうだね」「翠は泳げるから安心しろ」 蓮と翠が泳げるのに対して、私は全くと言って良いほど泳げない。そのため、私は浮き輪にすっぽり収まって、二人に引っ張ってもらっていた。身長が高いのはこういう時にいいよなー、と羨ましい目を二人に向ける。 「これ移動楽チン」「おい、少しは自分で進む努力しろよ」「いいじゃんいいじゃん」「お前が言うな」 蓮との軽口もいつもより爽やかに感じられた。「蓮が疲れたら俺一人で引っ張るから安心して」「も〜っ翠大好き!」 今の言葉は少し子どもっぽかっただろうか、と不安に感じて翠の方を見ると少し目を見開いて私を見ていた。「翠?どうしたの?」「いや、陽菜がそんなこと言うとは思わなくて」 そこで私は思い出した。記憶を失っているということは、子どもの頃のやりとりが通じないということだ。急に同級生にこんなこと言われたら動揺するのも無理はない。蓮の方に視線を向けると、眉間に皺を寄せて険しい表情をして少し遠くを見つめている。 「蓮……?」「ん?ど
last updateHuling Na-update : 2025-12-02
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第十三話——ドキドキの一日

 海沿いを車で走って三十分のところにある旅館が今回宿泊する場所だ。二階建ての和風建築で、木造の茶色い床が私たちを出迎えてくれる。木特有の香りと温泉の匂いが混じり合って、自然豊かな香りが入り口から感じられた。 二階に上がり、適当に荷物を置いて窓に駆け寄る。窓から広い海を眺めることができた。窓を開けると潮の香りが風に乗って入り込んでくる。自然豊かな環境に心の奥から安らぐ気持ちが広がった。「海、綺麗に見えるよ!」「相変わらず楽しそうだな」 そう言いながら蓮は私の隣に立つ。先ほど見ていた時とは違い、夕陽に照らされ、海が琥珀色に輝いていた。「この海ってさっき見てた海と繋がってるんだよね」「陽菜、海は全部繋がってるんだよ」 いつの間にか隣に立っていた翠が優しく言葉にする。「そっかーそう考えるとなんかいいね」 綺麗な海を前に語彙力はどこかへ行ってしまったらしい。先ほどの海にでも置いてきたのだろう。しばらくの間語彙力の心配はなく、ただみんなで海を眺めていた。  夕食の時間は十九時から部屋で食べるとのことで、先にお風呂に行くこととなった。当たり前だが、女性と男性に分かれてお風呂に入る。久々の温泉に胸が高鳴った。 体を洗い、室内の湯船に浸かって、お母さんたちを待つ。やがてお母さんたちも湯船にやってきた。「はー……気持ちいいわね」「うん、疲れた体が癒される」「陽菜ちゃんは常に元気だもんね」「あ、翠のお母さんまでそんなこと言うのー?」「あら、いいことよ」 蓮にはいつも揶揄われるので、同じノリで言ってしまったことを反省する。でもそんな気持ちも湯船に流れていくようだった。  室内風呂もほどほどに大浴場に行くことになった。外のドアを開けると、夏なのに風が冷たく感じ体を冷やす。足早に湯船に浸かった。「わー!すごい良い匂い!」 大浴場の周りは緑で囲まれている。視覚からも体を温めてくれるような効果があった。「陽菜ちゃんはさ、翠と蓮、どっちがいいの?」 自然の香りを深く吸っているところに、予想外のことを言われ、思わず咳き込んでしまう。「え!急に何?」
last updateHuling Na-update : 2025-12-03
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第十四話——初めての体験

翌朝私は、期待で胸がざわめき、アラームよりも早く目覚めてしまった。足音を立てないように静かに歩き、窓の外を眺める。水平線から太陽が顔を覗かせ、煌めいた海が優しく波を立てていた。後ろから微かな物音が聞こえたが、目の前の景色から目を離すことができない。 「陽菜、おはよう」 当たり前の挨拶なのに私は翠からその言葉を言われるのが一番嬉しかった。昨日の可愛いという言葉よりも。 朝から明るい気持ちになり、笑顔で翠と挨拶を交わす。 「おはよう、翠。今日もいい天気で良かったね」 「そうだね。いい一日になりそう」 「今日は何するんだろうねー!」 「ふふっ、少し声落とそうか」 翠と話せていることに気分が高揚し、思わず声が大きくなってしまう。翠の人差し指が私の唇に当てられ、咄嗟に口を閉ざした。後ろから布団が擦れる音が聞こえる。起こさないように私たちはそっと部屋の外から出た。 「ごめん。テンション上がっちゃった」 「大丈夫だよ。陽菜らしくていいと思う」 さり気なく言葉をこぼす翠にいつも心臓が跳ねてしまう。室内にいるのに、眩しくて翠の方を向くことができない。お香の香りがほのかに漂う空間で、木材の軋む音が響いた。 私たちは、旅館の一階にあるお土産屋さんを見に行くことにした。名物のお菓子や、モチーフのマスコットが売っている。目を輝かせながらそれらを見ていた。 「二人でお揃いのもの買う?」 翠の提案に心躍ったが、蓮に秘密を作ってしまう申し訳なさもあり、考え込んでいると翠がその気持ちを察して、言葉をかけてくれる。 「大丈夫。蓮にもし言われたらまた三人で買えばいいよ」 翠にそう言われて私は首を縦に振った。 「ね!これがいいかな?」
last updateHuling Na-update : 2025-12-04
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第十五話——心細い夜

旅館に戻ってきて昨日と同じスケジュールを辿る。夕食は昨日と少し変わって、焼き魚主体の料理たちが目の前に広がっていた。昨日の鮮やかな彩りもテンションが上がったが、今日のような落ち着きのある色合いはどこか私を安心させる。 そして、三日のうち二日が終わろうとしていた―― みんなが寝静まったころ、私は寂しさが募って寝られずにいた。二泊三日の二日目の夜が一番心細さを感じる。明日は楽しみなはずなのに、明日で終わってしまうと思うと、胸の奥がひんやりとした。縁側の窓を開けると、冷たい風が私の顔を撫でて、私の気持ちを表しているかのようだった。 一人で風を浴びていると、背後から優しい足音が近づいてきた。その音が私の心の奥を揺らす。それだけで誰なのか分かってしまう自分に、思わず乾いた笑いがこぼれそうになる。 「眠れないの?」 「そうなんだよねー……」 「なんかあった?」 翠の表情を見ると、彼に頼りたい気持ちが湧いて出てきて、思わず言葉をこぼした。 「特に何かあったわけではないよ。ただ、この旅行も明日で終わっちゃうと思うと寂しいなって」 「確かに。その気持ち分かるかも」 「翠も……?」 翠は頷いてから言葉を紡ぐ。 「うん。旅行中ずっとふわふわした、経験したことない感じだった。でも、明日で終わるって考えると現実に戻されて、途端に心に穴が空いたような感覚になったんだよね」 ずっと心の中でモヤモヤしていたことが言葉となって出てきて、心が軽くなったような気がした。 「ありがとう。翠の言葉でモヤモヤが解けてスッキリした」 「いいえ。俺もだよ。今夜もよく眠れそう」 「んふっ、それは良かった」 私が話し終えたタイミングで木の葉が風にそよぎ、囁くような音が私たちの耳に残った。その音に乗せて耳元で翠が囁く。 「ねぇ、そこの庭に出てみない?」 私の目の前にはこじんまりとした庭園が広がっており、小さな花を咲かせて緑に色を添えていた。 翠の方に顔を向けると、少し動いたら触れてしまうのではないかというほど翠の顔が近くにあった。びっくりした拍子に後ろの壁に頭をぶつけてしまう。顔を覗き込んで心配している翠の肩を優しく押し、私から庭園に足を踏み入れた。 庭園の真ん中にあるベンチに腰をかける。生ぬるい気温に涼しい風が吹いていて心地良い。翠
last updateHuling Na-update : 2025-12-05
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第十六話——人工的な幻想

 夜遅くまで起きていたからだろう。三日目の朝、起きた頃にはすでにチェックアウトの時間が迫っていてすぐに身だしなみを整える。蓮は、その一部始終を笑っていた。そんな場合ではなかったので、蓮の笑い声は無視する。急いで朝食を口の中にかき込み、鞄を持って部屋を後にした。 廊下を歩いている時に、バタバタしていて忘れていたことを蓮に伝えた。「蓮、お誕生日おめでとう!」「絶対忘れてたろ。まぁでもありがとな」 朝だからだろうか、蓮はいつもより柔らかい笑みを浮かべて答える。 隣から翠のはっきりとした声が聞こえてきた。「陽菜、よく寝れた?」「ぐっすり寝たけど寝不足ー」「お前夜何してなんだよ」「ただ眠れなかったの!」「そうかそうか」「でも元気そうで良かった」 同じ時間まで起きていたはずなのに、翠は爽やかな表情をしていた。体の作りが違うのだろうか。そういえば運動部だったことを思い出し、そりゃ体力あるな、と一人で納得する。微笑んでいる翠の笑顔が眩しすぎて顔を合わせることができなかった。  今日は最終日なので、来た道を戻りながら寄り道をする感覚で一日を過ごす予定だ。海沿いを走り、最初の目的地である美術館へ向かう。美術館に行くのは中学一年生の遠足以来だな、と隣に座る二人を見て思い出に浸っていた。あの時は私と翠が同じ班で行動したことを覚えている。私が疑問に思ったことを口に出し、翠が指差しながら教えてくれた。まるで昨日の夜景を見ている時と同じ風景である。昨日のことと重ね合わせて、失った記憶があっても翠の根本は変わらないのだなと思い、胸が締め付けられた。涙を振り払うように首を振って、蓮に話しかける。「蓮は中一の頃の遠足どんな感じだった?」「急になんだ?」「いや、あの時美術館行ったなーって」「あ、そういえばそうだったな」 蓮は顎に手を当てて考える素振りをとる。潮の香りと蓮の清涼剤の香りが混ざり合った、とても爽やかな風が私の頬を撫でた。「別に。仲良いやつもいなかったし、美術品に興味もなかったから黙って着いて行くだけだったな」「え、つまんない」「そんなもんだろ。お前らはどうだったんだよ。
last updateHuling Na-update : 2025-12-06
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第十七話——サプライズの夜

 私たちは、ビルの最上階にある高級フレンチのお店に足を踏み入れていた。慣れないドレスコードを身に着けている。ウェイターが引いた椅子にゆっくりと腰をかけた。窓の外には、ビルの灯りが小さな星のように、やさしく光っている。旅行を締めくくるに相応しい景色だった。 ドリンクを聞かれ、大人たちはワインを、三人はぶどうジュースを注文した。今日はコース料理を予約してある。最後にはとっておきのサプライズが待ち構えていた。「すごい!ソワソワしちゃうね〜」「子どもっぽいからそれやめろ」 足を机の下で揺らしていると、蓮に指摘されてしまった。唇を尖らせて、椅子に座り直す。「うるさいな〜緊張しちゃうんだもん」「まぁ分からなくはないが……じっとしてろ」「は〜い……」 肩を落として机に視点を向けると、今度は右隣から声が聞こえた。「いつも通りの陽菜で安心するなー」「……え?」 そう言って穏やかな笑みを浮かべている翠は、私の方を見て首を縦に振っている。「心がふわふわしてたのが、スッと降りてくるって感じがするよ」「んー……難しいけど、翠の役に立ててるなら良かった」 こめかみを指で突きながら考えるが、翠の感情はうまく想像できなかった。代わりに私を見ている翠の笑顔だけが私の脳裏に刻まれる。 話していると私たちの前にドリンクと小さなキッシュが運ばれてきた。バターとチーズの香りが私たちの鼻をくすぐり、食欲を刺激する。キッシュの濃厚な味とジュースの爽やかさが混ざり合って、口の中で心地良いハーモニーを奏でた。「ん〜おいしい!」「優しい味だね」「そうだな」 優しい味に自然と頰が緩んだ。目の前にいる両親の雰囲気も柔らかくなり、この空間全体に温もりが広がる。  料理を堪能していると右斜め前から声をかけられた。「陽菜ちゃん、旅行は楽しかった?」「うん!楽しかったよ!」「そっか。良かったわ。何が一番だったの?」「うーん……」 一度手に持った食器を優しく置き、顎に手を当てて考える。今日までの三日間が、動画のように頭に流れた。「海が一番楽
last updateHuling Na-update : 2025-12-07
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第十八話——掻き乱す影

 楽しい夏休みもあっという間に終わり、今日から二学期が始まった。まだ夏の暑さの余韻を感じられる。今日も三人で投稿していた。「ずっと夏休みが良かったなー……」「もうそれは夏休みじゃないだろ」「あ、確かに!蓮のくせに賢い」「なんだよ。俺はいつだって賢いさ」「翠〜蓮がなんか言ってる〜」「あははっ。確かに蓮は賢いかー」 蓮と軽口を交わし、翠に癒しをもらう。前と同じはずなのに、胸の奥がじんわり熱くなる。外の暑さもあって、のぼせてしまいそうだった。 私たちはいつも通り、授業時間まで廊下の隅で談笑していた。予鈴が鳴り、教室へ戻ろうとした瞬間、私たちに一つの影が近づく。「あれ、翠くんじゃん!久しぶり!」 見ると、そこにいたのは私と同じ美術部の、|高梨美咲《たかなしみさき》だった。事故前に翠といるのを見た以来、彼女とは一度も話していなかった。美咲は眩しい笑顔を浮かべている。「美咲……?」「陽菜久しぶり!翠くん!随分と見なかったけどどうしたの?」「いや……あの……ごめん。誰だっけ?」「え?」 翠が申し訳なさそうに告げた言葉に、美咲は顔を顰める。蓮が咄嗟に言葉を付け足した。「夏休み前に事故に遭って、記憶がないんだ。どう言う関係か教えてやってくれ」「なんだ!そういうことか!私はね……」 美咲は一度大きく深呼吸をして、顔を上げる。先ほどと同じ眩しい笑顔で衝撃なことを告げた。「私は、翠くんの彼女だよ!」「……え」 思わず声をこぼしてしまった。美咲はあの時と同じように、翠の腕に抱きつく。その様子を見て、私は強く胸を締め付けられたように苦しくなった。 私は見ていられなくて、翠に「後でね」とだけ告げて教室に入る。後ろから一つの足音が聞こえたが振り向かなかった。 私は自分の席に腰をかけて、机に顔を伏せる。美咲のあの言葉が頭から離れない。 ――彼女…… やっぱり付き合っていたのだろうか。翠の記憶がない以上、美咲の言葉を信じざるを得ない。心に冷たい雫が落ちる。真っ暗な視界がじんわりとぼやけた。 翠の穏やかな笑顔を思い浮かべる
last updateHuling Na-update : 2025-12-08
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第十九話——暗闇の中の光

 私たちは駅前のカフェへ歩いて向かう。蓮は一度家に帰って、私服に着替えてきた。カフェの扉を開けると、赤いエプロンを身に着けた女性が私たちを席へ案内する。店内は白を基調とした床と、青空模様の壁紙に囲まれていた。木製の机と椅子が規則正しく並んでいる。片側がガラス張りになっていて、開放感が溢れるお店だった。店内にはシロップの甘くてほろ苦い香りが漂っていた。  私は机に置かれているメニューを覗いた。そんな私を微笑んで見つめている蓮の視線に、落ち着かなくてじっとメニューに視線を向ける。「蓮は決まったの?」「陽菜が選んでから決めるからゆっくり選びな」「分かった」 魅力的なものばかりでページを捲るたびに目移りしてしまう。決められないでいると、蓮から声をかけられた。「決まらないのか?」「うん……」「どれ?」 メニューを指さすと、蓮は手を挙げて店員を呼んだ。私は首を傾げて蓮に視線を向ける。「あれ、蓮は?」「その二つ頼もう」「……いいの?」「俺も迷ってたからちょうどいい」 蓮のさりげない優しさに胸の奥がじんわりと温かくなる。蓮は、店員にパンケーキを二つ注文すると、頬杖をついて窓の外を眺める。日差しに照らされた横顔は、まるで絵画のように美しかった。 蓮の横顔をじっと眺めていると、不意に蓮が私に視線を移した。私たちの視線が交わる。 蓮は少し目を見開いて首を傾げた。「どうした?」「あ、いや……」 蓮は不思議そうに眉を寄せてこちらをじっと見ている。少しくすぐったい気持ちで思わず言葉がこぼれた。「かっこいいなって、思っ、て……」 言っていて恥ずかしくなり尻すぼみな言い方になってしまう。蓮はさらに目を見開いて「え」と口を開いていた。「ごめん!忘れて!」 私は恥ずかしくなり窓ガラスに顔を向ける。視線の先には顔を真っ赤にした自分の姿が写っていて、瞬時に顔を下に向けた。右耳の方から蓮の柔らかい声が聞こえる。「嬉しいな。陽菜に言われるのは」「忘れて……って」「やだ」 蓮に視線を向けると、満足そうな顔をして私を見てい
last updateHuling Na-update : 2025-12-09
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