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第十五話——心細い夜

Author: 桜庭結愛
last update Last Updated: 2025-12-05 13:53:18

旅館に戻ってきて昨日と同じスケジュールを辿る。夕食は昨日と少し変わって、焼き魚主体の料理たちが目の前に広がっていた。昨日の鮮やかな彩りもテンションが上がったが、今日のような落ち着きのある色合いはどこか私を安心させる。

そして、三日のうち二日が終わろうとしていた――

みんなが寝静まったころ、私は寂しさが募って寝られずにいた。二泊三日の二日目の夜が一番心細さを感じる。明日は楽しみなはずなのに、明日で終わってしまうと思うと、胸の奥がひんやりとした。縁側の窓を開けると、冷たい風が私の顔を撫でて、私の気持ちを表しているかのようだった。

一人で風を浴びていると、背後から優しい足音が近づいてきた。その音が私の心の奥を揺らす。それだけで誰なのか分かってしまう自分に、思わず乾いた笑いがこぼれそうになる。

「眠れないの?」

「そうなんだよねー……」

「なんかあった?」

翠の表情を見ると、彼に頼りたい気持ちが湧いて出てきて、思わず言葉をこぼした。

「特に何かあったわけではないよ。ただ、この旅行も明日で終わっちゃうと思うと寂しいなって」

「確かに。その気持ち分かるかも」

「翠も……?」

翠は頷いてから言葉を紡ぐ。

「うん。旅行中ずっとふわふわした、経験したことない感じだった。でも、明日で終わるって考えると現実に戻されて、途端に心に穴が空いたような感覚になったんだよね」

ずっと心の中でモヤモヤしていたことが言葉となって出てきて、心が軽くなったような気がした。

「ありがとう。翠の言葉でモヤモヤが解けてスッキリした」

「いいえ。俺もだよ。今夜もよく眠れそう」

「んふっ、それは良かった」

私が話し終えたタイミングで木の葉が風にそよぎ、囁くような音が私たちの耳に残った。その音に乗せて耳元で翠が囁く。

「ねぇ、そこの庭に出てみない?」

私の目の前にはこじんまりとした庭園が広がっており、小さな花を咲かせて緑に色を添えていた。

翠の方に顔を向けると、少し動いたら触れてしまうのではないかというほど翠の顔が近くにあった。びっくりした拍子に後ろの壁に頭をぶつけてしまう。顔を覗き込んで心配している翠の肩を優しく押し、私から庭園に足を踏み入れた。

庭園の真ん中にあるベンチに腰をかける。生ぬるい気温に涼しい風が吹いていて心地良い。翠
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