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Author: 琉斗六
last update Huling Na-update: 2025-11-08 21:00:36

 が、そこに誰がいるわけでもなく──。

 そこには、先程と同じ静寂があった。

 必死になって音の原因を探す目が、扉の脇のボックスで止まる。

 表と裏に開き戸のついた木箱。

 相手の顔を見ることも無く、荷の受け渡しができる。

 立ち上がって側に行くと、そこには白い手提げのビニール袋に入った食料品が詰まっていた。

 何気なくそれに手を掛けて、冬馬はふと動きを止める。

 不意に感じた、人の気配。

 咄嗟に冬馬は、息を潜めてしまった。

 しばしの沈黙の後、ハッとなる。

 もし本当にこの壁の向こうに人がまだいるのなら、自分は助けを求めるべきなのではないだろうか?

 だが同時に、もうひとつの考えが浮かぶ。

 荷を配達に来た人間が、その用事を済ませた後に、なぜその場に止まってこちらの気配を伺う必要があるのか?

 冬馬は判断に迷い、またしばしの間、そこでジッと息を詰めていた。

 壁の向こうで誰かがこちらの様子を窺っているような気がする。

 それは、己が助け出されるという希望よりも、薄気味悪さを感じさせる方が強かった。

 しばし迷った末、冬馬はボックスの扉をかなり乱暴な所作で開いた。

 中の荷を取り出し、わざと大きな音を立てて扉を閉める。

 それから、今度は音を立てぬようにそっと扉を開くと、無理な姿勢も構わずにボックスの中に頭を入れた。

 聞こえてきたのは、人の息遣い。

 やはり──、そこには誰かが居る。

 だが──、ジャリっと音がして、扉の側から足音が離れていく気配を感じた。

 冬馬は外側の扉を押して薄く開き、そっと外の様子を覗き見た。

 設置されている牛乳配達の箱から、空瓶を取り出して立ち去っていく背中。

 その人物は、単に自分の業務を果たしていただけだったのだ。

 バイクに跨り走り去る姿が一瞬だけ見えて、後は遠ざかるエンジン音が聞こえる。

 頭をボックスから抜き出して、冬馬はホッと安堵の息をつき、それから慌てたように振り返った。

「おいっ!」

 扉を

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  • Komplize - 共犯者 -   エピローグ

     迅が目を覚ましたのは、見慣れぬ白い部屋の中だった。 清潔な白衣を着た女性と、心配そうに自分を覗き込む見覚えのある人の顔。「あ……れ? 北沢クン?」「大丈夫か、迅君。ああ良かった、ボクがわかるみたいだ。久遠君、迅君が意識を取り戻したよ」 心底安堵したように破顔した北沢は、顔を上げるとなにやら後ろを向いて誰かに話しかけている。 迅がその視線を追うと、隣のベッドには冬馬が横たわっていた。「トーマ……ッ? ……あ……北沢クン、俺達……」「ああ、うん。大体の事情は久遠君から聞いたよ。迅君、大活躍だったねェ。少し容態が安定したら、警察から事情聴取に来るって言っていたけど、今はとりあえず何も考えないで養生してくれ。ちゃんと事務所で弁護士を立てるし、コレはどう考えたって正当防衛が成り立つ筈だからね」「大活躍……?」「北沢サン、迅はまだ目ェ覚めたばっかで混乱してるし、状況は俺がわかってるから今日はこの辺にしてやってよ」「あ、ああ、それもそうだね。みんなにも君達の無事を伝えなきゃならないし、それじゃあ、ボクはコレで一度引き揚げるよ。明日になったらまた来るから」 ひたすらわけがわからない迅が何かを訊ねる前に冬馬が応対してしまい、北沢はそのまま部屋から出ていってしまった。「……トーマ……どういうこと?」 扉が閉まると同時に、迅は冬馬に振り返る。「……階段からコケ落ちた時に打ち所が悪くて、死ンじまったんだよ」「ええっ! 俺ってば死んでるのっ?」 迅の返事に、冬馬は心底ガッカリした。「なんで死んでるオマエが俺と会話してるんだよっ! 死んだのはあのイッちゃってたカンチガイ野郎だっつーのっ!」「え……? えええっ?!」 迅は、しばらく驚きで声も出ない。

  • Komplize - 共犯者 -   §

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  • Komplize - 共犯者 -   §

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  • Komplize - 共犯者 -   8.侵入者

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  • Komplize - 共犯者 -   §

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