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All Chapters of 白い檻: Chapter 11 - Chapter 20

25 Chapters

11話

  〝王様〟はあっさりとそう言った。 だが眉を顰めた私を見て、すぐに肩をすくめてみせる。「嘘だ。〝先生〟殿が特別に許してくれたんだ。これが……最後になるかもしれないから」 「最後……?」〝王様〟はすぐには答えず、代わりにこちらをじっと見つめた。「で、お前は、どこに行こうとしていたんだ?」〝王様〟のところに。 ……なんて、言えるはずがなかった。私が何も言わずにいる間、〝王様〟は黙って、そばに咲く純白のバラをそっと撫でていた。巧みで優しい〝王様〟の指先のもと、バラは喉を鳴らす猫のようにゆらゆらと揺れる。私は、そんな彼の指に目を奪われていたことに気づき、慌てて視線を逸らした。〝王様〟は、最初に会ったときよりも、明らかにやつれていた。 頬は一層こけ、目の下の隈は濃い。何より——あの苛烈に燃えていた眼差しの光が、今は霞み、消えかけていた。 まるで今にも、闇の中に溶けてしまいそうなほどに。「外に出たい……?」気づけば、私はそう尋ねていた。 〝王様〟はハッと顔を上げ、再び足元に視線を落とす。「……わからない。もう、今は」王様の表情は初めて会ったときに見せた、諦めきったような寂しい笑顔と、まったく同じだった。ことり。 胸の奥で、小さく何かが動いた気がした。(……これが、感情というものか?)そんな気もしたが、そう名づけるには、あまりにも頼りなく、淡いものだった。「どうした……?」沈黙していた私の顔を、〝王様〟が心配そうに覗き込んでくる。「……いや、何でもない」 「そうか。なら、いい。それより──」ふと、〝王様〟の表情が険しさを帯びる。「あれから、何か思い出せたことはあったか?」突然の質問に戸惑う私に、〝王様〟はさらに強い口調で言い直した。「昔のことで、何か思い出せたことはあるかと聞いてい
last updateLast Updated : 2025-11-29
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12話

  王様の手が、私の肌にきつく食い込む。「あの薬は意識を混濁させる。飲んだら最後、お前はまた〝人形〟に逆戻りだ。一生、この場所で飼い殺されることになる」不穏な言葉に、私は思わず顔を上げた。「まさか……そんなこと〝先生〟がするはず……」 「相変わらず〝先生〟の言いなりか。……だったら俺を見ろ。俺自身が、その証拠だ」〝王様〟は、自分のこめかみを指で軽くトントンと叩いてみせた。「本意ではなかったにせよ、〝先生〟に従ってきた結果がこれだ。俺の神経は、今にも切れそうな糸みたいなもんだ。時々、自分が何者かさえわからなくなる」その声音には、自嘲の響きがあった。「だから、いいな? こうなりたくなければ——絶対に薬は飲むな」力強かった〝王様〟の口調が、ふっと吐息ほどにか細くなる。「……本当は、俺がついて守ってやれれば一番いいんだが、そうもいかなくなった」そこで言葉が途切れる。 〝王様〟は拳を握りしめ、そこに視線を落とした。 月に照らされた横顔には、どこか諦めにも似た影が差している。「……明日から〝アレ〟が始まる。そうなれば、俺がいつまで正気でいられるか――自分でもわからない。下手をすれば、お前のことも、自分のことすらも忘れてしまうだろう」〝王様〟が顔を上げる。 その瞳には、再び意志の炎が灯っていた。「だから、今のうちに言っておく。記憶を取り戻せ。そして、ここから逃げろ。俺がまだ正気のうちなら、何でも力になる」ぶるぶると喉が震え、言葉が出てくるまで時間がかかった。「……どうして、そこまで……?」 「理由が要るか? ……あんなことがあって二ヶ月。いや、俺がここに来てからずっと、何とか正気を保ってこられたのは――」ふっと〝王様〟の視線が、私に降り注ぐ。 それは、月の光のように、ひっそりとして優しかった。「お前が、いてくれたからだ。それだけだ。だから、俺はお前のためなら何でもする」冷たい風が、
last updateLast Updated : 2025-11-30
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13話

  夜気に私の叫びがこだまし、あたりは再び静寂に包まれた。 〝王様〟の瞳が、ゆっくりと細められる。「俺が覚えているからだ。お前のことは、全部……覚えている」「……ッ」言いしれぬ苛立ちともどかしさで、頭がどうにかなってしまいそうだった。私は両手で頭を抱える。今なら、はっきりとわかる。——これが感情だ。 しかも、最悪の部類の。「覚えてる……? 〝先生〟は言ってた。全部、貴方の妄想だって」 「妄想……だと?」〝王様〟の頬がピクリと震え、すぐに自嘲の笑みに変わる。 伏せた長い睫が、頬に深い影を落とす。「そうかも、な……俺はもう、とっくに狂っていて、〝人形〟も、俺の頭が勝手に作った幻かもしれない。この地獄の中で生き延びるための……唯一の救いとして……」〝王様〟は鋼のような瞳を上げ、まっすぐに私を見据えた。「……それでもいい。俺は、俺の信じたものに殉じる。お前を守り抜く。それが、俺の生きる理由だ」 「……ッ!」限界だった。 もう、これ以上、何も聞きたくない。結局、〝王様〟にとって私は、〈代用品〉でしかない。 彼が守ろうとしているのは、私じゃない。 彼が想っているのも、私じゃない。その現実を、どうしようもなく突きつけられた。「……もう、いい。貴方の言っていることは信じられない」踵を返そうとした私の腕を、〝王様〟が掴む。「なら〝先生〟を信じるのか?」 「それ以前の問題だ。だって貴方は……人殺しなんだろう?」その言葉に、初めて〝王様〟の表情が揺らいだ。「……どうして、それを?」〝王様〟は否定しなかった。 私は、なぜか裏切られたような気分になった。「……わかった。やっぱり貴方のことは信用できない」さっと背中を向けようとした瞬間、「待ってくれ!」〝
last updateLast Updated : 2025-12-02
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14話

※R-18(暴力的・強制的な性描写を含みます)  「!? な、何をっ──」私は慌てて手を伸ばしたが、逆に手首を掴まれ、頭上で捻り上げられてしまう。「くくっ……なんで今まで気づかなかったんだ、俺は……!」〝王様〟が高らかに吼える。「もっと早くこうしていれば良かったんだ……! 記憶がなくても、体が覚えてるかもしれないのに……!」破れた布地の隙間から、〝王様〟の手が侵入してくる。今が夏だと信じられないくらい、その手は冷たかった。「やめっ──あっ!?」胸の突起をいじられ、腰がびくりと浮いた。思わず上がってしまった声が、夜気と自分の耳の中に木霊する。唇を噛みしめる私を見て、〝王様〟がにやりと笑った。「やっぱり体は覚えているようだな。当然か。俺たちはこれまで、何度もこうしてきたんだから」その言葉の意味を理解するのに、しばらく時間がかかった。「何を言って……まさか、そんなはず……」これも罠だ。信じるな。そう自分に言い聞かせるが、動揺のあまり、声がみっともなく震えていた。「嘘じゃないさ。何なら証拠を見せてやろうか? 確か、〝あいつ〟は……いや、お前は、ここが弱かったよな?」「……あぁっ!」耳の中を舐められ、ひときわ大きな声が漏れる。「そこっ……やめ、ろっ……」「どうして? 感じてるくせに」低く湿った声が、耳の奥まで響いて、頬がカッと熱くなる。「……違うっ! そんなはずが……あるわけない……!」「強情だな」
last updateLast Updated : 2025-12-04
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15話

 ※R-18  不安だったが、もう目を開けることはできなかった。 再びあんな屈辱的な光景を見るくらいなら、その方がましだ。「……んっ!?」〝王様〟の指が尻の方へとすべり、後腔の周囲を撫でる。 それだけで、体が大きく震えた。恐怖からではない。 何とも言えないもどかしさと、期待が体を伝ってせり上がってくる。「どうやらお前の体は、次に何をされるかわかっているようだな。ほら、もうヒクヒクしている」 「あっ……やっ!」浅いところで何度も指をかき回され、そのたびに入り口が懇願するようにきゅっと締まる。「やっぱりここは、俺のことを覚えているらしいな」ズブリ。ひんやりとした指が、しずまりへと沈んでいく。 そのまま、内壁を広げるように巧みに動かされた。「あっ、くっ……」何かがおかしい。 本来ならば受け入れられるはずのない場所なのに、私の体は〝王様〟の指をすんなりと受け入れていた。——まるで、以前からそうだったかのように。「あ……んんっ……!」二本、三本と指が増えていき、バラバラに内孔を侵してくる。 指の腹が敏感な箇所を撫でるたび、喉からすすり泣きのような声が漏れた。「あっ、ああっ……」愕然とした。 まさか、自分の口からこんな甘い声が出るなんて。次の瞬間、後ろのしずまりから指が抜かれる。 ホッとしたのも束の間、今度は圧倒的な質量と熱をもったものが、ぴたりと入口にあてがわれた。目を閉じていても、それが何かはすぐにわかった。 ブルリと、体が期待に震える。「……クッ」小さな呻き声とともに、〝王様〟の熱がゆっくりと中に入ってくる。「あっ、あうっ……!」ズブリズブリと音をたてながら、内孔が押し拡げられていく。痛みを感じたのは最初だけだった。 すぐに、私の体は〝
last updateLast Updated : 2025-12-06
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16話

  噎せかえるようなバラの香りで、私は目を覚ました。バラが最も香り立つのは、早朝だ。 朝日のぬくもりでほころび始めた花弁から、朝露に混じって香りが立ちのぼる。地面に仰向けに寝転がった私は、視界いっぱいに広がるバラの茂みをぼんやりと眺めていた。昨日の出来事が、まるで夢だったかのように感じられる。けれど、腕に走る無数の傷と、下半身に残る鈍いだるさが、それが現実だったことを物語っていた。(……〝王様〟は、なぜあんなことをしたのだろう)考えるまでもない。 答えは一つだ。——彼は狂っている。 それだけだ。どうしようもない無力感に包まれ、私はゆっくりと目を閉じた。 もはや立ち上がる気力すらない。 まるで空っぽの人形になったような心地だった。(そうなれるなら、いっそのことなりたいけど……)何も感じない人形に。 そうすれば、この理解不能で胸や頭を締めつける感情の数々から解放されるはずなのに。バサバサッ。何かが、私の体の上に落ちてきた。 目を開けると、色とりどりのバラの花が胸元に散らばっていた。「そんな格好で寝ていたら、風邪をひいてしまうわよ」セーラー服を着た少女が、私の横に膝をつき、そっと顔を覗き込んできた。「君は……あっ!」慌てて起き上がり、そばにあった服を引き寄せる。 今の私は、シャツ一枚をかけられただけの半裸状態だった。「ご、ごめん……」 「あら、何が?」少女はまったく動じた様子もなく立ち上がり、周囲の茂みからバラを切り取り始めた。 赤い大輪の花が、生首のようにぼとぼとと地面に落ちていく。「何をしているんだい? えっと……樒さん?」 「樒で結構よ」くるりと振り返った樒は、腕に抱えていた花を一つひとつ、私の膝元に落としていった。「これはドン・ファン。これは、パパ・
last updateLast Updated : 2025-12-09
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17話

 身を乗り出すと、膝の上にあった花が何輪か地面に落ちた。「ええ、知っているわ。〝人形〟さんとは、このバラ園で何度かお会いしたことがあるから」「君は──」聞こうか、聞くまいか。迷った末に、私は口を開いた。「君は……〝人形〟がなぜ自殺したのか、知ってる?」「いいえ、ごめんなさい。私は『内』での出来事は何も知らないの。お父様から、立ち入りを固く禁じられているから」「そう……」一瞬、落胆した。だが、聞きたいことはまだまだたくさんあった。「じゃあ、〝人形〟って……君から見て、どんな人だった?」「そうね……」樒は申し訳なさそうに私の顔を窺い、それから遠慮がちに語り始めた。「あなたは、とても冷たい人だった。ここにも、治療の一環として来ているだけで……たとえどんなに綺麗な花が咲いていても、ただ無感動に見下ろしているだけだったわ」樒は、ふっとバラの大輪が咲き誇る庭を見やった。「『ああ、感情がないって、こういうことなんだ』って……。私、何だか可哀想で……あなたは別に、何とも思っていなかったかもしれないけど、私にはあなたがすごく寂しげに見えて……」樒は「ごめんなさい、本人の前で」と自身の口を押さえた。私は首を振る。「いや……ありがとう。教えてくれて」どうやら〝人形〟が相当、嫌な奴だったことは衆知の事実らしい。実際には自分のことではないのに、なぜか私はひどく打ちひしがれていた。(でも、『寂しげ』、か……)一瞬、〝王様〟の顔が脳裏に浮かんできて、慌てて首を振る。その途端、思い出したように、ずくりと腰が痛んだ。内にも外にも
last updateLast Updated : 2025-12-11
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18話

※暴力的・精神的に強い描写を含みます  「喜んでくれ。君のIQ、ずいぶん高かったんだよ」二回目の診察の時、〝先生〟が嬉しそうな顔で言った。 診察室は以前と変わらず、木の温もりに満ちていた。「じゃあ、さっそくだけど脱いで。今日も脳波を見るから……どうした?」動かない私を見て、〝先生〟がデスクから顔を上げた。「具合でも悪い? 顔色が悪いよ」 「……ちょっと、寒気がして」 「どれ」〝先生〟が私の首筋に手を当てた。 私は、これ以上鼓動が速くならないよう、必死に心臓に言い聞かせる。寒気がするなど、もちろん嘘だった。 本当は、見られたくなかったのだ。身体に残った痕や傷を。(……〝先生〟に嘘をつくなど、許されないのに)頭ではそうわかっていながらも、私は黙り続けた。「確かに、ちょっと体温が高いね」〝先生〟は手を離すと、デスクに向き直り、カルテにペンを走らせた。「風邪の初期症状かもしれないな。急な環境の変化で、疲れが出たんだろう。今日はここまでにしておくから、あとは部屋でゆっくり休みなさい。念のため、薬も出しておこう」〝先生〟はデスク脇の引き出しから一錠の薬を取り出し、差し出してきた。「飲んで。神経を休める薬だから」 「ここで、ですか……?」 「うん。効いてくるまでに少し時間がかかるからね。今飲んでおけば、部屋でぐっすり眠れるはずだ」〝先生〟は私の掌の上に錠剤を置き、再びカルテに目を落とした。 サラサラとペンが走る音を聞きながら、私の意識は掌の上の錠剤に注がれていた。——飲むべきか、それとも飲むべきではないのか。〝王様〟は出された薬は飲むなと言った。 だが、それは狂人の言葉だ。 あんなことをされたのに、彼を信じる必要があるのか?「〇一番?」ハッと我に返ると、〝先生〟が不思議そうにこちらを見ていた。年の
last updateLast Updated : 2025-12-13
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19話

  私はこれ以上ここにいられず、フラフラと席を立った。(〝王様〟は……自業自得なんだ)何度もそう自分に言い聞かせながら、診察室のノブに手をかけた。「待って」背後から〝先生〟が私の腕を掴み、袖をまくり上げた。「この腕の傷は何かな? それに、この匂い──」〝先生〟が、おもむろに私の首元に鼻を寄せる。「バラだね。それも、むせ返るほど強い。この匂いが染みつくまで、あそこで何をしていたのかな?」探るような〝先生〟の目に、思わず身体がこわばる。「〝先生〟、これは──」 「いや、いい」〝先生〟はふるふると首を振ると、椅子に戻った。「追及するのはやめておこう。病院内でなら、どこへ行こうと何をしようと構わないと僕が言ったんだから。ただし、あまりオイタはいけないよ。……さあ、もう行きなさい」ドアの前で立ち尽くす私に、〝先生〟はカルテから目を上げずに言った。 私は小さく頭を下げ、脇目も振らず診察室を後にした。ドアを閉めると、〝王様〟の叫び声は、もう聞こえなかった。廊下を歩きながら、私は言い知れぬ不安に包まれていた。〝先生〟は何も言わない。 いつも曖昧なことばかりを言い、こちらにも答えを求めようとしない。だが──そうやって曖昧にされればされるほど、不安は増していく。〝先生〟は、それに気付いていないのだろうか。 それとも——?この時初めて、私は〝先生〟に対して、かすかな不信感を抱いた。昼間ということもあってか、閉鎖病棟には他の患者の姿はなかった。 いつもなら近くにいるはずの〝笑い犬〟も、今日は見当たらない。私は病室に戻るなり、周囲を見回した。誰もいないのを確認すると、ポケットに隠していた錠剤を取り出し、備え付けの洗面所に流した。決して、〝王様〟の言葉を信じているわけではない。 ただ──時間が欲しかったのだ。誰を、何
last updateLast Updated : 2025-12-14
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20話

※暴力/流血/脅迫表現を含みます。  あの時は、確かに誰にも見られていないはずだった。「いいから答えてくださいっ、どうして、どうして……!?」肩を揺さぶられ、言葉にならないまま息を呑む。「……ッ、わ、わからない……自分でも……なんで、あんなことをしたのか……」ぴたりと〝笑い犬〟の手が止まった。「……〝王様〟だな」伏せた口元から、低い唸り声が漏れる。「〝王様〟のせいだろうっ! いつもそうだ! あなたはなぜ、あんな人の言うことを信じるんですっ!?」肩を揺さぶってくる手の力が増す。「あの人は狂ってるんだ! どうして、それがわからない!? 昨日だって、あんな目に遭ったのに!」〝笑い犬〟の口ぶりは、まるで昨日、〝王様〟と私の間に何があったのかを知っているかのようだった。(もしかして、見られていたのか? あれを……?)顔がカッと熱くなる。 それを見て、ピクリと〝笑い犬〟の眉がつり上がる。ドン、と私の顔の横のシーツに拳が叩きつけられた。「どうして……! どうして、あなたにそんな顔をさせるのは、〝王様〟だけなんだ!」〝笑い犬〟は私の髪を掴み上げると、顔をさらに近づけた。「貴方は〝人形〟だ。人を人とも思わず、顔色一つ変えることなく精神を解剖し、切り刻む冷酷無比な〝人形〟」薄闇の中、〝笑い犬〟の目は血走り、白目がぎらりと底光りして見えた。「私は貴方がずっと、憎くて仕方がなかった。あのすました顔を、グチャグチャに歪ませてみたかった。泣き叫ぶ顔、恥辱にまみれた顔を、見てみたかった……」顔の間近まで迫った〝笑い犬〟の呼吸が、頬にかかる。 その息づかいは、嗚咽のようでもあり、ひきつった笑いのようでもあった。「でも、あの頃——それができたのは〝先生〟だけだった。だから私は、〝先生〟の側についた。……それなのに」ごくりと息を飲む音が、やけに大きく響いた。「〝王
last updateLast Updated : 2025-12-16
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