梨花は心臓がバクバクしていた。まさか、こんな小さなことでも柚香が警察に通報するなんて思いもよらなかった。彼女は本当に、誰かに知られることを怖がらないのだろうか……「いや……」梨花の手のひらは汗でびっしょりで、胸のあたりも制御できないほど激しく鼓動していた。「私も、ただ人から聞いただけです」「誰から聞いたんですか?」警察官が訊ねた。梨花は反射的に柚香の方を見た。柚香はいつも通り落ち着いた表情で、軽く返す。「警察官があなたに訊ねてるんだ。私を見ても仕方ないでしょ」「うちの会社の玲奈さんです」その瞬間、梨花はようやく背筋に冷たいものを感じ、声がどんどん小さくなった。もう終わりだ、と彼女は悟った。玲奈が言っていたのは、大切なものを失ったということだけ。警察官に訊かれても玲奈が認めなければ、こちらが名誉毀損やデマだとみなされる。そうなれば、完全に詰みだ。結局、柚香と梨花、遥真は警察署に呼ばれ、事情聴取を受けることになった。病院の玲奈も例外ではなかった。30分後。警察署の中。四人は一列に座っていた。梨花は右端に座り、無意識に玲奈の方に体を寄せ、声を潜めて訊ねる。「玲奈さん……あなたが言ってた、柚香さんの『大切なもの』って、あのメッセージのこと?」この言葉は玲奈だけでなく、遥真にも聞こえていた。彼は冷たい瞳でこちらを見つめ、その身から放たれる威圧感は、否応なく人の目を引く。玲奈は自分の言葉が間違っていないことは分かっていたが、心の奥では少しビビっていて、答えるとき顔が少し戸惑っていた。「どのメッセージのことですか?」「私が送ったあのメッセージよ」梨花が言う。玲奈はスマホを取り出して未読メッセージを確認し、少し申し訳なさそうに答えた。「ごめんなさい、前のメッセージに返信したあと、どうしても眠くてそのまま寝ちゃいました」梨花は本当かどうか分からず、とりあえず信じるしかなかった。「それって、私が送ったあのメッセージで合ってる?」「まさか……」玲奈は小さな声で言う。「どうしてそんな方向に考えちゃったんですか?」その一言で、梨花は全身に氷水を浴びせられたような感覚に襲われた。自分はもう終わりだ。これで柚香を誤解しただけでなく、遥真の怒りも買ってしまう。「もしかして、あなたが彼女の前でそう言ったから、警察に通
Read more