なぜか、胸の奥に嫌な予感がふと湧き上がった。「何見てるの?」真帆が入ってきて、手に書類を持っている柚香を覗き込む。内容を見て、自然にそう言った。「この条項、まるで財産譲渡みたいだね」「まさに財産譲渡書よ」柚香はそれを脇に置き、机の上の他の書類を手に取った。どの書類も、日付はすべて7月16日だった。これらの書類、基本的に財産譲渡に関するものばかりだ。あの日、母が事故に遭った日のことも、柚香はまだはっきり覚えている。母と一緒に買い物に出かけていて、帰ったら伝えたいことがあると言っていたのに、駐車場に入って間もなく事故が起きた。「真帆……」柚香は体がふわりと力を失ったように感じる。真帆は細かいことには気づかず、顔色の悪さに気づいて心配そうに尋ねた。「どうしたの?」「覚えてる?母が事故に遭った日、どうして事故が起きたか…」過去の記憶が再び脳裏に浮かび、柚香は自分の思いに向き合うのをためらった。――もし母の事故が誰かの仕組んだものだったら…その人は誰?弘志?それとも他の誰か?「駐車場で車を取ろうとした時、誰かが間違えてブレーキをアクセルだと思って踏んで、母にぶつかっちゃったのよ」真帆は当時のことを覚えていた。「で、どうしたの?」柚香は財産譲渡書の日付を差し出した。「これを見て」「7月16日……」真帆はつぶやきながら見つめ、少し疑問が浮かぶ。「この日付……」言い終わらないうちに、真帆は何かに気づいた。視線を柚香に向け、少し真剣な表情で尋ねた。「母が事故に遭ったのも、この日?」「そう」真帆はすぐに柚香の考えを察した。「これって、誰かがわざと仕組んだんじゃないかって疑ってるの?」「この財産譲渡書を見るまでは、そんなこと全く考えてなかった」柚香の心にはいろんな思いが渦巻く。「でも日付があまりにも偶然すぎて、考えずにはいられない」当時、母にぶつかったのは免許を取ったばかりの女の子で、事故を起こしたあと本人も混乱していて、ずっと「ごめんなさい、わざとじゃないんです」と言っていた。緊張のあまりブレーキとアクセルを間違えた、とも。一緒にいた彼氏は、事故後も責任を押し付け続け、女の子を怒鳴っていた。あのとき柚香は母の状態が心配で、救急や遥真への連絡に必死で、細かいことまで気にしていなかった。今思えば……
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