「ママが嫌がるって分かってるのにやるなんて、やっぱりママのことそんなに大事に思ってないんじゃない?」陽翔はまっすぐな口調で言った。くりっとした目には、はっきりとした不満が浮かんでいる。遥真はわずかに眉を上げた。そこに気づくとは、少し意外だった。「とにかく、このことはママに言うからね」陽翔はまったく乗らない。「本当の姿、ちゃんと知ってもらうんだ」遥真は問い返す。「それで?」「離れてもらう。ずっと『遥真おじさん』のままでいてもらう」「今と何が違う?」遥真はしゃがみ、目線を合わせた。相変わらず巧みに誘導するような話し方だ。「ママを悲しませるだけで、プラスになることは何もない。やっぱり君も、言うほどママを大事に思ってないんじゃない?」陽翔は反論しようとして、逆に話に引き込まれていたことに気づく。――くやしい。パパ、口がうますぎるのも困る。小さな頭をフル回転させ、しばらくしてからようやく一言絞り出した。「このままじゃ、息子をひとり失うことになるよ」「別にいいさ。どうせ俺のことパパだって認めてないだろ」遥真は薄く唇を開き、黒い瞳にわずかな面白さをにじませた。「そのうち、お墓も草ぼうぼうになって、誰も来てくれなくなるよ」「死ぬ前にちゃんと手配しておく。お参りしたくても、順番待ちになるくらいにな」「……」お金で何でもできるわけじゃないけど、少なくとも人を動かすことはできる。「他に言いたいことは?」遥真の口調は終始穏やかで、ゆったりしている。「ないなら素直に負けを認めて、さっき見たことも聞いたことも全部忘れろ」「僕が言い負かされてるって思ってるの?」陽翔は真剣な顔で聞いた。遥真は冷静に答える。「少なくとも今はな」「でも、何回勝ったって意味ないじゃん」陽翔は反撃の糸口を見つけたように、はっきり言い返す。「ママは結局戻ってこないし、『遥真おじさん』は僕のパパにもなれないんだから」遥真「……」――ぐさっと来る。さすが実の息子だ。言い返して自分の側に引き込もうとしたそのとき、寝室のドアが開いて、柚香が眠そうな目で出てきた。ドアの前で、妙に仲が良さそうでいてどこかおかしな体勢の二人を見て、首をかしげる。「なにしてるの……?」陽翔、なんで小さな椅子まで持ち出してるの?これ、親子で語り合い?それとも
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