凪は、くりっとした瞳で杏奈の目や表情をじっくりと観察した。そして、ある結論に達した。この子、健吾の気持ちに全く気づいていない。それどころか、ただの友達としか思ってないみたい。ふふっ。健吾にもこんな目に遭う日がくるなんてね。凪はなんだかしてやったりという気分になった。「ううん、なんでもありません。ただちょっと聞きたいんですけど、健吾さんのこと、どう思いますか?」杏奈は少し考えて、真剣な顔で答えた。「すごくいい人だと思います。かっこいいし、優しくて気が利きますし。彼の彼女になる人は、きっと幸せでしょうね」「ぷっ!」そこまで聞いて、凪はたまらず、吹き出してしまった。一方で、杏奈はきょとんとして、彼女がどうして笑うんだろう、と目で問いかけた。すると、凪は首を振って、印刷した処方箋を杏奈に手渡した。「あなたも、これからきっと幸せになれますよ」処方箋を受け取った杏奈は、怪訝な顔で凪を見つめた。一体、自分のどこが彼女のツボに入ったんだろうと訳が分からなかったのだ。だがそれ以上聞けなかったので、杏奈は肩をすくめ、処方箋を持って部屋を出ようとした。そして、ドアを開けると、すぐそこに健吾が立っていた。だが、健吾はなにやら機嫌が悪そうだった。彼は腕を組んでドアの横の壁にもたれていて、少しうつむいたまま銀髪が額に影を落としているのだ。その影に目が隠れていたせいだろうか、どこか暗い雰囲気を漂わせていた。「どうして入ってこないの?」杏奈が尋ねた。健吾は杏奈の方へ顔を向けた。その魅力的な瞳は細められ、笑っているようにも見えた。でも、杏奈は直感的に、今の健吾がとても機嫌が悪そうだと思った。「入っていったら、あなたたちの話の邪魔になるだろ?」それを言われ、杏奈は気まずそうに笑って見せた。「診察してもらっていただけだよ、特に何も話していないわ」そして、彼女は健吾の前で処方箋をひらひらと振り、「受付で薬をもらってくるね」と言った。こうして、杏奈は逃げるようにその場を去った。杏奈が去ると、凪が診察室のドアのところまで出てきた。そして健吾と一緒に、杏奈の後ろ姿を見送った。「まさか、あなたを『優しくて気が利く』って言う人が現れるなんてね。やっぱり好きな人の前だと、人は変わるものなのね」健吾は
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