――煌びやかな舞踏会の光の下で、私は初めて自分の心臓が「逃げようとしている」のを感じた。王都最大の夜会。大公家主催、各国の使節まで呼ばれた豪奢な場。家族は皆、完璧な装いで人前に出ているが、胸の奥に隠している秘密は同じだ。私は、この世界に転生してきた“異物”であり、レオンとカリン、父と母はそれを誰より知っていて守ろうとしてくれている。けれど今夜は違う。今夜は、すべてがほんのわずかなきっかけで崩れ落ちる可能性がある。そして同時に、私は“あの人”との距離を、もうごまかし続けられなくなる気がしていた。レオンは誰よりも優雅な所作で集まる貴族たちに挨拶を返し、隙のない微笑みで場を支配する。けれど私の目には、その横顔は疲れて見えた。私を守るためにどれほどの緊張を抱えているのか、考えるだけで胸が痛む。そのレオンが私の名前を呼んだ。「ヒスイ様、少しお時間をよろしいでしょうか。人払いをお願いした小間を用意してございます。……お姿を、お守りしたく存じます」いつもより一段と丁寧な声音。だけどその奥には、割れ物に触れるような焦り
Last Updated : 2025-11-27 Read more