そのあと、央人は何事もなかったように穏やかな笑みを浮かべ、客たちへ深く頭を下げた。「本日はお忙しい中、婚約パーティーにお越しいただき、誠にありがとうございます。ただ、申し訳ありません。婚約者の雪野穂香の体調が優れないため、本日のパーティーは延期とさせていただきます。ご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありません。穂香の体調が回復しましたら、改めて皆さまをお招きさせていただきます」客を見送り終えると、央人はすぐに家へ向かうために足早に外へ出た。そこで彼の目に映ったのは、数人に囲まれている美玖の姿だ。先頭の男が美玖の髪を乱暴に掴んでいる。「金持ちを捕まえたからすぐにセレブになるって自慢してたよな。結局また捨てられたってわけか」「少しだけ待って。本当に返すから。絶対に返す」美玖は地面に膝をつき、いつもの余裕は微塵もない。「その台詞、何回聞いたと思ってんだ。雪野家を潰せば大金が手に入る?俺らが見たのは空っぽの口だけだ」「もういい。連れて帰るぞ。売り飛ばせば少しは金になる」その言葉を聞いた瞬間、美玖は必死に頭を下げた。「本当よ。もう少しだけ時間をちょうだい。必ずなんとかするから」だが男たちは有無を言わさず、彼女をワゴン車へ押し込もうとする。央人はもともと関わるつもりはなかった。しかし、彼らの口にした「雪野家」という言葉で足が止まった。「待って」央人は歩み寄り、彼らを制止した。美玖が央人の姿を見つけると、目を輝かせた。「央人、助けに来てくれたのよね」しかし央人は彼女を見ることすらせず、男たちへ視線を向ける。「今、雪野家と言ったな」「こいつが言ってたんだよ。雪野家を潰せる資料があるから、それを売れば払えるってな」「金を貸してるのは俺たちだ。余計な口出しはするな」央人は美玖を一度見て、すべてを理解した。「こいつから聞きたいことがある。確認できたら返す」男たちが反論しようとした瞬間、央人はカードを一枚投げた。「ここに200万入ってる。連絡するまで待て」そう言ってボディーガードに美玖を連れて行かせる。「央人!何するつもりなの」美玖は央人の手に戻ることの意味を理解していた。必死にもがいても、ボディーガードに車へ押し込まれるだけだ。央人は別の車に乗り込み、そのまま家
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