出勤初日から残業を命じられ、しかも残業しているのは自分一人だった。澪が仕事を終えた時には、定時をすでに一時間近く過ぎていた。「ごめんごめん、お待たせ」澪はFYのオフィスビルから小走りで飛び出してきた。道端では、蘭の車がずっとハザードランプを点滅させていた。「話は乗ってから」蘭が手招きした。いつもなら澪は助手席に乗るが、今日は車内に駆もいた。駆と蘭は、澪がFYという素晴らしい職場を見つけたと聞いて、一緒に夕食でお祝いしようと約束していたのだ。まさか初日から残業させられるとは思ってもみなかったが。澪は後部座席に乗り込み、駆と並んで座った。蘭は「私は二人の運転手ね」と冗談を言った。三人で談笑しているうちに、澪の沈んだ気持ちも随分と軽くなった。道が混んでおり、レストランに着くまで一時間近くかかった。すでに日は暮れており、蘭はずっとお腹を押さえて「餓死しそう」と訴え、澪を笑わせていた。澪は、二人がお祝いしてくれるというから、ピザハットのような普通の店だと思っていたし、それで十分だと思っていた。しかし、蘭と駆が連れてきたのは「ゴールデン・ハーバー・ナイト」だった。それは昼間、千雪がご馳走してくれた高級レストランであり、同名のホテルの付属レストランでもある。「そんなに無理しなくていいのに……」澪は辞退したかった。蘭も駆も一般的な会社員で、給料もそれほど高くないはずだ。自分のためにこんな場所で散財させるわけにはいかない。どうしてもここで食事をするなら、自分が払うべきだ。しかし、蘭と駆は譲らず、すでに予約もしてあると言った。三人は席に着き、食事を始め、会話に花を咲かせた。「正直に白状しなさいよ。どんな幸運を使ったらFYに入社できたわけ?綾川大学のトップだって入れなかったのよ!」蘭がグラスを澪のグラスに合わせた。「きっと人事が私の顔に惚れ込んだのよ!」澪は冗談で返した。「一理あるわね」蘭も頷いた。二人が雑談を交わした後、ようやく駆が口を挟んだ。例の探偵事務所から連絡があったという。あの日、澪は自分の電話が繋がらない時を想定して、駆の番号を緊急連絡先として伝えていたのだ。「残念ですが、篠原の浮気の証拠は撮れませんでした」駆は探偵から送られてきた写真を澪に見せた。写真には洵と
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