千雪は目を赤くしてうつむいた。「お袋のために仕事まで失わせてしまって、感謝こそすれ、責めるなんてできるわけないじゃない」洵のその言葉に、千雪は安心して頭を彼の腕にもたせかけた。「それにしても澪さんも顔が広いのね。まさか養生斎のオーナーと知り合いだなんて。最近、養生斎と二宮グループが親密だって聞いたから、きっとあのネイキ・メディアの新社長が紹介したんじゃないかしら!」千雪の話を聞きながら、洵は響子との会話を終えた澪が、今度は駆の元へ行き、楽しげに話しているのを目にした。洵はワイングラスの底を親指でこすった。しばらくして、彼は魅力的な唇の端を上げ、千雪に言った。「踊らないか?」一方、澪が自分から話しかけてきてくれたことに、駆は恐縮していた。二人のスキャンダルがトレンド入りして以来、彼はてんてこ舞いだったが、ようやく噂は否定され、騒ぎも収まった。駆は澪に会うのが怖かった。身分を隠していたことを責められるのではないかと不安だったのだ。澪が駆からの釈明のラインを受け取ったのは、トレンド入りした当日の夜だった。駆は自分が二宮グループの御曹司であることを告白した。彼には弟がいたが、未成年の時に自殺していた。反抗期だった弟は、兄である駆が将来家業を継ぐことに嫉妬していたのだという。駆は自分を責め、二宮家の御曹司という身分を捨てた。少年院でボランティアをしたのも、道を外した未成年たちを助けることで、弟を救えなかった後悔を埋め合わせるためだった。そして今、彼が二宮グループに戻ったのは、澪と出会ったからだ。駆は考えた。十分な地位と権力を持って初めて、洵の手から澪を奪い返せると。そうでなければ、澪にとって彼は永遠にただの子供のままだ。澪は、スーツを着てオールバックにした駆の姿にまだ慣れなかったが、確かに以前よりもずっと男らしくなっていた。「行きましょう、踊りましょう」駆が澪の手を引いてダンスフロアに入ろうとしたその時、澪が足を止めた。彼女の視線を追うと、千雪の腰を抱き、優雅に社交ダンスを踊る洵の姿があった。「まあやめましょう」駆が自分の気持ちを察してくれたことが分かり、澪は笑って首を振った。「いいのよ、関係ないから」彼女は自分から駆の手を握った。駆は瞬時に顔を赤らめた。洵は千雪と
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