広場に戻った時、ミュリナは息も絶え絶えだった。 顔は腫れ、衣服は破れ、片腕は力なく垂れ下がっている。 だが、もう片方の腕には、盗まれたセリュオスたちの荷物が抱えられていた。「ほら……ボクが……取り返して来てやったにゃ……」 どさりと荷袋を置くと、ミュリナはその場に膝をついた。 セリュオスは目を見開き、慌てて駆け寄る。「ミュリナ! お前、こんなに……傷だらけじゃないか!」「ふん……おみゃあらが……だらしないから……ボクが代わりに行って来ただけにゃ……」 そう言ってミュリナは無理に笑おうとするが、咳と共に血が滲んでいた。「こりゃ、たいした根性だ……!」 ダルクが唸り声を上げた。 フィオラはすぐさま膝をつき、そっと彼女の肩を支える。「どうして……こんな無茶を……」 フィオラが治癒の魔法で必死にミュリナの傷を手当てしていると、彼女はふいに顔を背けた。「……勘違いすんにゃよ。ボクは別におみゃあらを助けたわけじゃない」「え……?」 フィオラが目を瞬かせる。「ボクは……ただ、恩を返しただけにゃ。前にご飯を分けてもらったろ? あれが……気に入らなかったのにゃ。借りっぱなしにゃんて、ボクの流儀に反するのにゃ」 ミュリナは腫れた頬を気にしながら、ぼそりと吐き出した。 セリュオスは一瞬きょとんとした後、ふっと笑った。「猫の割に、ずいぶん義理堅いんだな」「う、うるさいにゃ」 ミュリナは頬を赤く染めながらそっぽを向いた。 ダルクは腹を抱えて笑い、フィオラは呆れ半分で「可愛いところもあるのね」と微笑んだ。 その場の空気が、不思議と和らいだような気がした。 やがてミュリナの治療が終わると、彼女はフィオラに感謝を伝えてまた一人になった。 それも彼女の選択であり、セリュオスは後を追うようなことはしなかった。 それから三人は聖都を発ったその夜、街道沿いの林で野営をすることにした。 聖都より先は荒野が広がり、旅は一層厳しくなるだろう。 今までのような豊かな緑はこれで見納めになるかもしれない。 火を囲んで食事を終えたあと、セリュオスが見張りを決めるために口を開く。「今夜は三交代にしよう。最初は俺が立つ。次はフィオラ、最後にダルクだな」「ええ、問題ないわ」「そんじゃあ、オレは先に寝させてもらうぜェ」 |焚《
Last Updated : 2025-11-13 Read more