魔王城の地下闘技場――その空間全体が勇者と魔王の異様な圧力を帯びて、震えていた。 天井の高いアーチ状の梁に、微かに光る蛍晶鉱石が並び、空気は静寂と緊張に満ちていた。 覚醒したセリュオスの聖剣がその胸の前で輝き、仲間たちの力を宿した光を放っている。「この短時間で目覚ましい成長を見せてくれた。それでこそ、勇者であろう……」 オルデリウスが歩みを進め、セリュオスと向かい合う。 その男は全身から圧倒的な存在感を放ちながら、微笑んでいた。 魔王の目には、この瞬間を楽しみにしていたという期待の光が宿っている。「待たせすぎ!」 「あなた、大して何もしてなかったじゃない……」 なぜか、偉そうな態度を取っているルキシアナにツッコミを入れたのはエレージアだ。「ウチはちゃんとゼルフ3号に指示出してましたー! ねえ!」 ルキシアナは悪びれることもなく、魔王の力を押さえていたであろうエレージアに渡り合おうとする。 とは言っても、指示を出していたからとして、彼女が何もしていなかったという事実は変わらないと思うのだが。「ゼルフ3号が戦えるのは、マスターのおかげであります!」 「ほらぁ!」 「機械に気を遣わせるなんて、悲しくないの?」 エレージアがかなり辛辣なことを言っている気がしたが、セリュオスは気にしないことにした。「手加減してくれていたとはいえ、魔王の力は強大だったぞ」 手加減ということは、魔王もセリュオスの覚醒を待つ間の退屈凌ぎくらいに考えていたのだろうか。「すまない、本当に助かった……」 「礼なら、すべてを終らわせてから聞かせてもらおうか」 そう告げるヴァルディルの顔にも疲労の色が濃くなっている。 それだけ、セリュオスが覚醒するのを待って、魔王と戦っていてくれたということだ。「わかってる。みんな、ここからが本番だっ!!」 「今こそ死力を尽くそう!」 「魔王を倒すわよ」 「ウチらに任せなさい!」 「ゼルフ3号、本気モードに移行するであります!」 セリュオスが声を張り上げると、四人が返事をしながら、魔王に突っ込んでいく。 まずは、ゼルフ3号が前衛となって魔王の動きを牽制し始めた。 縦横無尽に飛び回る機械の軌道が、オルデリ
Last Updated : 2025-11-25 Read more