研究所の扉をくぐった瞬間、セリュオスは思わず足を止めた。 内部は眩い光に満ち、壁一面を覆う管や金属板から絶え間なく音が響いている。 至る所で火花が散り、または蒸気が噴き出し、機械仕掛けの腕が宙を踊るように動いていた。 中層の機械文明をここで造ったと言われれば、確かに納得がいく。 その混沌とした異世界の中心に――それはいた。「これは……鎧か……?」 全身を厚い金属板で覆い、無数の関節が組み込まれた機械の人形。 無機質な顔には、目の位置に双つの蛍晶鉱石が埋め込まれている。「……ルキシアナ式装甲機巧・ゼルフ」 低い声が響いた。 セリュオスが振り返ると、白衣を纏った少女がいた。「盗っ人を捕らえなさい!」 「御意!」 すると、ゼルフと呼ばれた機巧人形の目が赤く光った。 それはセリュオスに急接近し、轟音を響かせながら、その拳が床を砕いた。 石片が弾丸のように飛び散り、セリュオスは腕で顔を庇いながら後退する。「おい待て! 俺は盗賊じゃない!」 セリュオスは盾を構えたまま叫んだが、オリーブ色の髪色をした白衣の少女は冷ややかな視線を返すだけだった。「彼女がルキシアナよ」 「さらっと大事なことを言うな!」 セリュオスの耳元で囁いたエレージアは極力騒ぎに巻き込まれないようにと、隅の方に避難してしまった。「盗賊がはい自分が盗人ですなんて、認めるわけないじゃない!」 ルキシアナの声は怒りに満ちていた。「どうせウチの研究成果を奪いに来たんでしょう? この、ゼルフを――!」 「違う! 俺は何も奪うつもりなんかない!」 「寝言は寝てから言いなさい!」 彼女は全く聞く耳を持ってくれそうにない。「なんでこの世界のやつらは俺の話を聞いてくれないんだ! 俺は人の物を奪うなんてことは――!」 セリュオスの必死の訴えはゼルフの轟音に掻き消された。 金属の巨体が迫り、鋼鉄の爪が振り下ろされる。 「――《ルクス・クトゥム》!」 セリュオスは盾を構えてそれを受け止めた。「ぐっ……重すぎる……!」 その衝撃の強さにセリュオスの膝が砕けそうになる。 火花が散り、金属と金属が
Last Updated : 2025-11-20 Read more