つわりから回復した智也は、ドレスに着替えると蓮と共にカインの部屋へと向かった。カインは相変わらず忙しそうに、机に積み上がった書類にサインや判子を押していた。しかし智也が部屋に入ると、彼は嬉しそうに微笑んでその手を止めた。その笑顔を見た瞬間、智也の胸がきゅんと強く鳴った。 (あなたの子供を妊娠したんだよ——)思わず口にしそうになり、智也は慌てて言葉を飲み込んだ。カインは智也にソファへ座るよう勧めると、自分も仕事を中断して隣に腰を下ろした。そしてそっと智也の手を取り、優しく微笑みながら言った。「病に伏していると聞いて、心配していたんだ。顔色は良いみたいだが、大丈夫なのか、トモヤ?」「ごめんね、心配かけて。でも、ただの風邪だったみたい。もう元気になったから。あ、お見舞いのお花と果物、ありがとうね。」「そうか……風邪だったのか。実はユリアスがお前が妊娠しているかもしれないと言ったものだから、ついその気になってしまって、ベビーベッドを最高の職人に作らせていたのだが……早とちりだったようだな。風邪の具合はもう良いのか? 苦しくはないか?」「ベビーベッド……! それは……あー、えっと……あとで見せてもらってもいい? そうだ、カインの方は体調はどうなの?」智也が聞き返すと、カインは薄く笑って答えた。「相変わらずだ。背中の魔法陣が時々暴れだして苦しい時もあるが……もう慣れたし、平気だよ。」(慣れるはずがない)智也は胸の中で強く否定した。あの、拷問のように痛みと苦しみを与え、じわじわと死に至らしめる魔法陣を背負って、慣れることなどできるはずがない。平気であるはずがない。智也は真剣な表情でカインを見つめ、切り出した。「ねえ、以前に約束したよね。私が牢獄塔に幽閉されている『トモ』の祖母に会うことを許可してくれるって。正式な許可書が欲しいのだけれど……書いてくれる?」「本気で、あの老婆に会うつもりなのか? 何も話はしないと思うが。それに牢獄塔には他にも囚人が投獄されている。あまり気分のいい場所ではないよ。トモヤは行かない方が良いと思うが?」「私は、カインの呪いを解きたいの。あなたの側室となったからには、私ができることを全てやりたい。一緒に蓮についてきてもらうことになっているし、何の心配もいらないから。」「トモヤ……」不意に、カインに強く抱きしめられた。
Huling Na-update : 2026-05-25 Magbasa pa