All Chapters of 異世界転移、魔法使いは女体化した僕を溺愛する: Chapter 61 - Chapter 70

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第61話 秘密を抱えたまま

つわりから回復した智也は、ドレスに着替えると蓮と共にカインの部屋へと向かった。カインは相変わらず忙しそうに、机に積み上がった書類にサインや判子を押していた。しかし智也が部屋に入ると、彼は嬉しそうに微笑んでその手を止めた。その笑顔を見た瞬間、智也の胸がきゅんと強く鳴った。 (あなたの子供を妊娠したんだよ——)思わず口にしそうになり、智也は慌てて言葉を飲み込んだ。カインは智也にソファへ座るよう勧めると、自分も仕事を中断して隣に腰を下ろした。そしてそっと智也の手を取り、優しく微笑みながら言った。「病に伏していると聞いて、心配していたんだ。顔色は良いみたいだが、大丈夫なのか、トモヤ?」「ごめんね、心配かけて。でも、ただの風邪だったみたい。もう元気になったから。あ、お見舞いのお花と果物、ありがとうね。」「そうか……風邪だったのか。実はユリアスがお前が妊娠しているかもしれないと言ったものだから、ついその気になってしまって、ベビーベッドを最高の職人に作らせていたのだが……早とちりだったようだな。風邪の具合はもう良いのか? 苦しくはないか?」「ベビーベッド……! それは……あー、えっと……あとで見せてもらってもいい? そうだ、カインの方は体調はどうなの?」智也が聞き返すと、カインは薄く笑って答えた。「相変わらずだ。背中の魔法陣が時々暴れだして苦しい時もあるが……もう慣れたし、平気だよ。」(慣れるはずがない)智也は胸の中で強く否定した。あの、拷問のように痛みと苦しみを与え、じわじわと死に至らしめる魔法陣を背負って、慣れることなどできるはずがない。平気であるはずがない。智也は真剣な表情でカインを見つめ、切り出した。「ねえ、以前に約束したよね。私が牢獄塔に幽閉されている『トモ』の祖母に会うことを許可してくれるって。正式な許可書が欲しいのだけれど……書いてくれる?」「本気で、あの老婆に会うつもりなのか? 何も話はしないと思うが。それに牢獄塔には他にも囚人が投獄されている。あまり気分のいい場所ではないよ。トモヤは行かない方が良いと思うが?」「私は、カインの呪いを解きたいの。あなたの側室となったからには、私ができることを全てやりたい。一緒に蓮についてきてもらうことになっているし、何の心配もいらないから。」「トモヤ……」不意に、カインに強く抱きしめられた。
last updateLast Updated : 2026-05-25
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第62話 ギルミット一族の悲劇

牢獄塔は、主に王国に反逆した政治犯が投獄されているらしい。強盗や殺人などの一般犯罪を犯した者は、別の牢獄所に収監されるのだと、蓮が教えてくれた。彼は智也の知らないことをよく知っていた。王宮の図書院に連日通い、この国の歴史や常識を勉強しているらしい。勉強嫌いの智也には、毎日図書館に通うなど考えられないことだった。想像しただけで眩暈がする。「蓮って元の世界にいた時から、知識欲が強かったよね。分からないことはとことん調べるタイプだったけど、異世界に来てからますますその傾向が強くなったみたいだね。感心するよ。私には到底できないな。」「智也は勉強しなさすぎなんだよ。異世界で生き残りたいと思ったら、まずはこの世界のことをよく知ることが肝心だろ。文字や言葉、生活習慣は魔法で他人の脳をスキャンすれば大体の知識は得られるが、人によって結構まちまちでさ。それで王宮の図書院に通い始めたんだけど、これが意外と面白い。王宮の蔵書は偏見の塊だけどな。」「偏見の塊?」智也が聞き返すと、蓮は薄く笑って続けた。「特に歴史書は最悪だな。どの国も大概そうだろ? 自国に都合の悪い歴史は捻じ曲げられる。王国の成り立ちや初代王の偉大さを讃えた本は山ほどあったが、王国に反旗を翻した人間や民族に関しては鬼畜扱いしたものばかりだった。」「そうなんだ……じゃあ、ギルミット一族のことも鬼畜扱いされていたの?」智也が聞き返すと、蓮は頷きながら牢獄塔の最上階を指差した。「ああ、ギルミット一族について書かれた書物は結構あったぞ。初代王が最大の犠牲を払って駆逐した史上最悪の一族だって書かれていた。呪いを得意とする魔法使いの集団で、その呪いは複雑な魔法陣で構成されていて、一度掛けられると容易には解けないらしい。初代王はその呪いを恐れて、大量の兵士でギルミット一族を奇襲し惨殺したんだ。逃げ出した者たちもほとんど狩り出され、酷い拷問を受けた末にこの牢獄塔の最上階から突き落とされて処刑されたらしい。」智也は両手をぎゅっと握りしめ、牢獄塔の最上階を見上げた。灰色にくすんだ石の塔が、王国に反逆して死んでいった人々の墓標のように見えた。蓮がそんな智也の肩をそっと抱きしめてくれた。「この牢獄塔が王国の首都アザンガルドに程近い場所に建てられたのは、王国に反逆心を抱くことがどんな結果を招くか、国民に見せつけるためだったら
last updateLast Updated : 2026-06-01
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第63話 石の塔

「それは違う。」蓮は静かに切り出した。「おそらくカインの母親は、貴族の誰かと関係を持って男の子を産んだのだろう。ただしその貴族には僅かだが王家の血が流れていた。推測になるけど、カインの父親は、何代か前に王家の血をひいた女が嫁いだ貴族の血筋なのかもしれない。」最強の魔法使いである蓮がそう言うのなら、それが真実なのだろう。智也は息を潜めて続きを待った。「とはいえ、俺が見る限りカインに流れる王家の証である青い炎はごく僅かだ。あれでは、いくらカインが努力しても王家の証である魔法使いとの契約はできないだろう。」智也は胸が重くなった。カインがいくら否定しようと、彼が現王の実子ではないというのが事実なのだ。「それが真実なら、カインに王家の証である魔法使いとの契約ができないのは当然だわ。それなのに、母親は幼いカインに魔法使いとの契約を強要した。それがどれだけカインを傷つける行為か、分かっていたはずなのに……」(可哀想なカイン……)智也は胸が痛んだ。王家の濃い血を引かない彼に、魔法使いとの契約ができるはずがない。それなのに母親に責め立てられるようにして、何人もの魔法使いを宛がわれ、契約を強要された。契約などできるはずもなく、己の無力さに打ちのめされたのだろう。そんな時に、腹違いの弟が少女『トモ』と王家の証である魔法使いの契約を果たし、カインの目の前に現れた。その『トモ』に、自分が王家の血を引いていないと指摘され、カインは恐怖のあまり剣を掴み、斬り殺してしまった。そして今もその身に『トモ』の呪いを受け、苦しみ続けている。「『トモ』を殺して呪いを受けたことは自業自得かもしれないけど……私は、カインを責める気になれない。できるなら、カインの呪いを解いて、苦しみから解放してあげたい。」智也がそう言うと、蓮はぎゅっと彼を抱きしめ、耳元で優しく囁いた。「俺はお前がどんな選択をしようとも、お前のことを命がけで守る。お前が子を産むならその子も俺が守ってやる。」蓮は少し間を置いて、続けた。「だから、『トモ』のばあさんに何を言われても怖がることはないぞ。大丈夫だからな。さあ、ギルミットの血をひく最後の末裔に会いに行こう。」蓮はそう言うと、カインから受け取った牢獄塔入りの許可証を手に、石の塔の木の門に近づいた。門番はいなかったが、塔全体に強力な封の魔法陣が刻まれているのが智
last updateLast Updated : 2026-06-08
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第64話 蓮はトモの生まれ変わり!?

ふわりと空気が変わったことで、瞬間移動が終わったことが智也にも分かった。最上階は真っ暗だった。蓮は慎重に智也を床に下ろすと、照明代わりに青い炎を天井に三つ飛ばした。青白い光が部屋全体を照らし出す。牢獄の柵の中に、年老いた女が石の椅子に全身を鎖で縛り付けられて座っていた。老婆は目を閉じ、微動だにしない。智也には死んでいるようにしか見えなかった。あまりの光景に智也は顔を青ざめさせたが、蓮は気楽な口調でその女に話しかけた。「あんたは『トモ』のばあさんか?」「…………」「返事しろよ。死んだふりをしたって、あんたが生きていることぐらい俺には分る。」蓮の言葉に、蝋人形のようだった老婆がぞっとするような笑みを浮かべた。そしてゆっくりと、しわがれた聞き取りにくい声で話し始めた。「王家の者と契約した魔法使いじゃな……王国の犬め。わしの目はもはや潰れてその姿を見ることはできぬが、お前の放つ王家の青い炎は感じるぞ。わしに何の用じゃ? どんな拷問を受けようとも、わしは『トモ』がカインに掛けた呪いの秘密を話すことはない。無駄な時間を過ごす前に、王宮に帰るがよい、王家の魔法使いよ。」「ばあさん……俺に感じるのはそれだけか?」「…………?」「俺は『トモ』の生まれ変わりだ。あんたが俺たちを異世界から召還したんだろ? せっかく会いにきてやったんだから、もっと感動したらどうなんだ……ばあさん?」「えっ!!」驚きの声を上げたのは老婆ではなく、智也だった。 (今……蓮は何て言ったの?)この老婆が『トモ』の生まれ変わりを異世界に召還した? そして……蓮が『トモ』の生まれ変わり?えええ……?混乱する頭のまま、智也は蓮が老女をじっと見つめながら話し続けるのを、黙って聞き入っていた。「俺なりに、ギルミット一族について勉強してみたんだ。あんたが黙っているなら勝手に俺の推測を話させてもらうよ。」「…………」「やっぱ、だんまりか……まあいいや。俺は、ギルミット一族について詳しく書かれた書物を王宮の図書院で見つけたんだ。まあ、王宮の本だから王家寄りの内容だったけど、ギルミットの風習や魔力、そして宗教的思想が詳しく書かれていた。おそらくは、ギルミットの人間を拷問にかけて聞き出した言葉をまとめたものだろう。」それまで黙っていた老女が、突然言葉を発した。「王家に捕まったギ
last updateLast Updated : 2026-06-15
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第65話 輪廻の輪を乱す行為

「智也、この異世界と俺たちが生まれ育った世界は細い道で繋がっているんだ。」智也の不安そうな顔を見て、蓮はそっと肩を抱きよせた。そして、智也にも分かりやすいように丁寧に説明を続けた。「ギルミット人は、魔力に長けた一族だった。その中でも強力な魔力を持つ魔法使いを何人も輩出している。」蓮は少し間を置いてから、先を続けた。「彼らの内の誰かが、この世界と俺たちが生まれた世界がへその緒のような細い道で繋がっている事を知ったのだろう。そして、この世界で死んだ人間の魂はその細い道を渡り俺たちの世界に辿りつき生まれ変わり、同様に俺たちの世界で死んだ人間の魂もまた細い道を辿ってこちらの世界に辿りつき生まれ変わる事に気がついた。それが異世界を巡る輪廻転生信仰の始まりかな?」蓮の話で、ギルミット一族が信じていた異世界の輪廻転生信仰はなんとなく理解できた。 しかし、蓮が『トモ』の生まれ変わりだという部分になると、智也には容易に受け入れられなかった。(もし私が『トモ』の生まれ変わりなら……アーサーに心惹かれたことも、彼が私を『トモ』と呼んだことも、全部納得がいくのに……)密かにそう思ってしまう自分がいた。『トモ』は乙女な魔法使いの少女だったはずだ。同じ魔法使いとはいえ、蓮の肉体は逞しく、抱きしめられると元男の智也でも胸がキュンとなるほど胸板が厚く頼もしい男だった。しかもペニスは大きく、少し入れるだけで火傷をするほど激しいセックスをするような男が『トモ』の生まれ変わりだなんて……。「蓮が『トモ』の生まれ変わりだなんて、やっぱイメージが合わないーーーー!! 蓮の勘違いじゃないの??」思わず智也は叫んでしまった。蓮は智也の思考を読んだのか、にやっと笑ったが、それも一瞬のことだった。蓮は石の椅子に鎖で縛り付けられた老婆を、柵越しに冷たい目で見ながら口を開いた。「俺も勘違いだと思いたいよ。異世界で生まれ変わった人間を魔法で元の世界に召還することは、ギルミット一族でも輪廻の輪を乱す禁忌として禁止されていたと書物に書いてあった。」蓮は淡々と続けた。「一度、輪廻の輪を切られた人間は魂の行き場を失い、もう二度と転生できないらしい。しかも、輪廻の輪から外れた人間は自ら命を断つ以外には死ねない体になると文献で読んだぞ。どこまで本当の話か分らないが……つまり俺は、人類憧れの不老不死にな
last updateLast Updated : 2026-06-22
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第66話 元の世界に還るには

(全ての元凶が、この年老いたおばあさんだっていうの?)智也は信じられなかった。『トモ』の祖母からは強い魔力は感じられないのに、彼女が自分たちをこの異世界に召還したなど、とても現実味がなかった。老婆はしわがれた声のまま、それでも『トモ』の生まれ変わりである蓮に出会えたことに興奮したのか、多弁に語り始めた。「ああ、わしじゃ。孫の『トモ』が死んだと知った時、わしは異世界で生まれ変わるだろう『トモ』をこの世界に取り戻したくて、禁忌の魔法陣が刻まれたノートを異世界に魔法で送り込んだ。」老婆は少し息を継いで続けた。「禁断の行為と分っていたが、唯一の身内だった『トモ』を失うことはわしには耐えがたかった。それに、あの子はギルミットの血をひく最後の子じゃ。禁断の魔法陣と契約し不死の身を得た『トモ』の生まれ変わりに、ギルミット一族の恨みを晴らして欲しかった。王国を葬ってくれることを願った。」老婆の声がわずかに震えた。「だがノートを異世界に送っても……『トモ』は帰っては来なかった。わしは、その後王宮の兵に捕まりこの牢獄塔に閉じ込められ、随分月日がたってしもうた。もうとっくに魔法陣の力は消え失せていると思っておったが、今になって『トモ』の生まれ変わりが召還されるとは思いもしなかった。……お帰り、我が孫の『トモ』よ。」蓮は語気を強めて口を開いた。「俺は『トモ』じゃない、蓮だ!!」蓮は一瞬息を吐き、続けた。「俺があんたに会いに来たのは、身内の再会を喜び合う為じゃない!!禁忌の魔法陣が刻まれたノートに文章を書き込んだ俺が契約で縛られるのなら仕方が無い……諦めもする。だが、俺には守らないといけない人間が居るんだ!!」蓮の声が大きく響いた。「教えろ、俺が巻き込んで連れて来てしまった智也とモモは元の世界に帰れるのか!?」智也は胸が痛くなった。蓮は責任を感じているのだ。もう元の世界に帰れないかもしれない自身の身などかまわず、自分と妹のことを心配してくれている。その想いが痛いほど伝わってきた。老婆は、見えぬ白濁した目で智也の顔をちらりと見ながら口を開いた。「お前が異世界から連れて来たものとはその者か? それで、レンはあのノートにどんな文章を書き込んだのじゃ?」「ん……それは……」不意に蓮が言い淀んだ。確かに、言いにくい内容だった。あの時はノートを小学生の悪戯程度にしか
last updateLast Updated : 2026-06-29
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第67話 トモのことを知りたい

老婆の言葉に蓮の顔がぱっと輝き、笑顔を見せた。しかしその笑顔もすぐに苦悩の表情に変わり、彼は頭を抱えて呟いた。「つまり……ノートの魔法陣と契約した俺なら、魔法陣の力を使って元の世界へ繋がる道を開き、二人を帰らせることができるっていうことだよな?」蓮は少し間を置いて、続けた。「……でも、俺には魔法陣を自在に操る知識なんてないっての。今から魔法陣の勉強をしろってか……」「最強の魔法使いとなったレンなら、あの魔法陣を自在に操ることも不可能ではあるまい。」老婆は静かに言った。「それに、お前は私の孫の『トモ』でもある。わしがお前にギルミット族の魔法陣の知識を分け与えてやってもよいぞ。」「全ての元凶のあんたから魔法陣の講義を受ける気にはならないな。」蓮が拗ねた声で答えると、老婆は体を揺すりながら不気味な笑い声を上げた。「ふっふっふっ……講義など受けずとも知識は得られる。お前の魔法でわしの脳を喰らえばいい。脳にはギルミットの魔法陣の知識が詰まっておる。女の私は魔力は男より劣ったが、男以上に魔法の勉強は欠かさなかった。」蓮は老婆の言葉を聞き、急に真面目な顔になった。「そうだな、あんたの知識を魔法で頂くとするか。だが、それは用事を済ませた後でいい。」蓮は智也の方を向いた。「智也、お前も『トモ』の祖母に聞きたいことがあったのだろう?」(そうだった……)智也は自分でも、この老婆に聞きたいことがあったことを思い出した。 孫の『トモ』がどんな少女だったのか。『トモ』とアーサーはどうやって知り合い、魔法使いの契約を交わしたのか。そして、二人はいつから愛し合うようになったのか……。 そんなことを聞いても意味がないのに、と智也は自分を責めた。 (そうだ。私は……『トモ』がカインに掛けた呪いの解き方を聞くために、ここに来たんだ)「智也、この際聞きたいことは全部聞いておいたほうがいい……心残りを作るな。」蓮が智也の心の葛藤を魔法で読み取り、アドバイスしてくれた。智也は蓮をちらりと見て頷いた。そうだ、全部聞くことにしよう。 智也はごくりと唾を飲み込み、口を開いた。「聞かせて欲しいの、『トモ』の事を。彼女は、どんな少女だった? どうやって、アーサーと知り合い契約魔法使いになったのか……そして、二人はいつから愛し合うようになったのか。教えて、『トモ』のお
last updateLast Updated : 2026-07-06
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第68話 トモの恋心

「そうじゃ。王宮への復讐の為に『トモ』はアーサーに近づいた。」老婆は淡々と語り始めた。「幼いアーサーは、さらに年下の『トモ』に警戒心など抱かなかった。アーサーは王宮の息苦しい生活に飽き飽きしていたのだろうな。『トモ』と街を探索することに夢中になり毎日のように王宮から抜け出しておった。そして、少女と逢ううちにいつしか『トモ』に恋心を抱くようになった。」老婆の声が少し低くなった。「『トモ』はその想いを利用した。魔法でアーサーの意識を朦朧とさせると、自宅に誘い込みそして、幼い身で『トモ』はアーサーと肌を合わせたのじゃ。」アーサーの初恋を、『トモ』が王家への復讐のために利用した。『トモ』はアーサーに処女を捧げてでも、彼の心を手放したくなかったのだ。 その事実が智也の心を軋ませ、痛くさせた。「じゃが、王宮のアーサーの護衛をしていた者たちは『トモ』に不審を抱き、二人を引き剥がそうとしたんじゃ。」老婆は続けた。「『トモ』は焦った。そして、アーサーにねだったのだ。『私を、あなたの契約魔法使いにして欲しい。あなたと離れたくないから。』とね。アーサーも彼女と離れたくなかった。周りから引き裂かれない方法は、『トモ』を自分の契約魔法使いにする方法だけだった。」智也は気になっていたことを、老婆に尋ねた。「彼女は……『トモ』はアーサーの事を愛してはいなかったの? 彼の事を好きではなかったの?」老婆はそっと笑って口を開いた。「いや……『トモ』もただの少女の部分があってねぇ。」老婆の表情がわずかに柔らかくなった。「あの子も処女を捧げたアーサーに、心を惹かれるようになっていった。彼の契約魔法使いとして王宮に上がると、『トモ』は別の想いを抱くようになった。王宮でのアーサーの立場はとても弱くいつも嫌がらせにあっていた。『トモ』は想いを寄せるアーサーに王位を継いで欲しいと願うようになった。そして、できれば彼と結婚したいと想うようになった。」老婆は静かに言った。「『トモ』は王位を継ぐ者にギルミット一族の血を混じらせることで、王家を乗っ取り復讐を果たすのだと私には言っておったが、そんなのは嘘じゃ。あの子は……本気でアーサーを愛してしまったのだろうのう。」「『トモ』はアーサーを心から愛していたんだね!!」智也は、何故だかすごくほっとした。アーサーと『トモ』の関係が復讐だ
last updateLast Updated : 2026-07-13
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第69話 脳を喰らえば

智也は『トモ』の祖母に視線を向け、口を開いた。「『トモ』はカインに殺された時に、彼に呪いを掛けたよね。その呪いを解く方法を私は聞きに来たの。ギルミット族は呪いを掛けるのが得意だったのでしょ? だったら、呪いを解く方法も確立されていたはずだよね。教えて欲しいの、カインの呪いを解く方法を。」老婆はゆっくりと口を開いた。「わしは、この牢獄塔に囚われて以来、王宮の者に数々な拷問を受けてきた。それもこれも、次期王位のカインの呪いを解く方法を聞き出す為じゃった。」老婆の声に苦々しさが滲んだ。「その拷問で、この目もやられ、足も動かなくなった。それでも、わしは一言も話さなかった。『トモ』がその命を削ってカインに掛けた呪いじゃ。成就させてやりたいではないか。いまさら、わしが何か話すとでも思ったのか?」『トモ』の祖母はそう言うと、見えぬ目で視線を智也から蓮に移し、続けた。「じゃが……『トモ』の生まれ変わりであるレンになら、わしの知識を与えてやってもよい。『トモ』は、わしらの直系の先祖が書いた禁断の魔法の書の中の一つの魔法陣を使ったことだけは間違いない。」老婆は少し間を置いた。「だが、その書物には、呪いの解き方は載っておらなんだ。正直に言ってしまうとな、わしにも『トモ』が掛けた呪いを解く方法が解らんのじゃ。じゃが、その魔法の書を全て読み解く力を有するものであれば、呪いを解く魔法陣を生み出すことも可能だろう。レン、お前が最強の魔法使いならばできるはずじゃ。」「その禁断の魔法の書はどこにあるんだ、ばあさん?」蓮が聞くと、老婆は僅かに動く指で己の頭を指差した。「魔法の書はもう燃やしてこの世には無い。だが、書物に書かれた文章は一文一句違わず全てわしの脳の奥深くに封印してある。それを全てお前にやろう、レンよ。」老婆の声が低くなった。「封印を解く方法は簡単じゃ。わしの脳を喰らうことじゃ。それで、封印は解かれお前に知識が渡る。」「脳を喰らうって……それって、比喩だよね? ねえ、蓮……そうだよね?」智也は不安になって蓮の方を見て口を開いた。蓮は智也の質問には答えず、真剣な表情で石の椅子に縛り付けられた老婆を見つめていた。やがて、何かを自らに納得させるようにゆっくりと目を閉じ、そして目を見開いた時には、智也が見たこともないような恐ろしい表情をしていた。「蓮!!」智也
last updateLast Updated : 2026-07-20
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第70話 危機

智也は力なくそのまま地面に座り込んでしまった。自分の無力さが口惜しかった。誰も守ることができないこの身が疎ましかった。それでも何かをしたくて、智也は自分に宿った青い炎の力を借り、蓮にテレパシーで話しかけていた。塔の最上階で僅かに感じる、蓮が放つ青い炎のオーラに向かって。(蓮、聞こえている? お願いだから、自分を傷つけるような行為はやめて。)(蓮、私やモモのことで責任を感じることなんてないんだからね。異世界から脱出する方法だって、カインの呪いを解く方法だって、他にもあると思うの。だから、一緒に探そうよ。蓮がやりたくないことをしちゃ駄目だよ。)(蓮が変わってしまいそうで……私、怖いよ。蓮、返事をして。お願いだから。)テレパシーで話しかけると、僅かに蓮の纏う青いオーラが乱れたのが分かった。しかしすぐに、蓮が魔法で塔の最上階周辺に強力な魔法の防壁を張ったことが感じ取れた。そのせいで、蓮の気配をまったく感じられなくなってしまった。「私が……テレパシーで話しかけたから?」テレパシーの声に動揺した蓮が、強い魔法の防壁を最上階に張ったのは明らかだった。しかも彼の心の乱れをあらわすように、塔の最上部の魔法の防壁は暴走したようにどんどん巨大になり、智也の周りを覆っていた防壁まで吸収してしまった。きっとそのことに、蓮は気が付いていない。それほどに彼は、心を動揺させる何かを今しているのだ。身を守る防壁を失ったまま、智也は不気味な牢獄塔の前でただ立ち尽くすしかなかった。その時だった。不意に背後から車輪の軋む音が近づいてくるのに気づいた。智也は立ち上がり、その正体を確かめようとした。それは、牢獄塔へ囚人を運び込む護送車だった。「おい、見てみろよ。こんなところに女がいるぞ。」「お、本当だ。しかもいい女じゃないか!!」馬が引く護送車を運転していたむさ苦しい男が二人、木の門の前で運転席から降りてきた。その目には好奇の色が浮かんでいた。「なあ、こんなところにいる女ってことは、牢獄塔に投獄された男の恋人とかじゃないか?」「へー、だったら……囚人の恋人を輪姦しても誰も文句いわねーんでないの?」「おいおい、仕事はどうするんだよ。囚人を護送しないと駄目だろ?」「でも、囚人っていっても一人だし護送車に入れていれば大丈夫だろう。塔に入って投獄している内に、女に逃げられたらつまらな
last updateLast Updated : 2026-07-27
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