All Chapters of ダメ男との結婚をやめたら、運命の恋が始まりました: Chapter 81 - Chapter 90

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12_6.出張からの夢旅行

 食事が終わって外に出ると、ちょうどパレードが始まる時間だった。すっかりと夕闇に包まれた空は、そこかしこの電灯と相まって、とても幻想的に見える。 たくさんの人を掻き分けて、しっかり見える位置に場所を取った。しばらくすると、軽快な音楽が近づいてくる気配がする。キャラクターたちが、色とりどりのイルミネーションを纏いながらくるくると躍る様を、その世界に吸い込まれるように見ていた。 「ねえ、江藤くん、スーツだから王子様みたいだね」「じゃあ辻野さんは、お姫様だね」「え、私、スラックスなんですが」「斬新でいいじゃん。そういうお姫様もありじゃない?」「そうかなぁ?」 ドレスを着たお姫様が、優雅に裾をふわりふわりとさせながら、目の前を通りすぎた。その可憐な姿に、目がくぎ付けになる。 私も、あんなドレスを着る予定だったんだよ。ふと、正広とのことが頭を過った。なぜか時々思い出しては、自己嫌悪に陥る。そんな自分が情けなくて、たまらなく嫌だ。 そんな感情を知らない江藤くんは、私の隣で楽しそうに笑っている。その笑顔が、イルミネーションよりも眩しくて、胸がキュンとなる。嬉しくなる。 過去の影が差し込んでも、今の光がそれをそっと包んでくれるみたいだ。江藤くんの存在が、とても尊く感じた。 
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12_7.出張からの夢旅行

「辻野さん、花火も上がるらしいよ」 「えっ、花火?」そう言って空を見上げた瞬間、夜空一面にキラキラと輝く大きな打ち上げ花火が花開いた。 胸に響くドーンという音が、今日という日をさらに盛り上げてくれる気がする。「うわぁ、すごい」 「綺麗だよね」美しい光景に、しばらく見惚れていた。 ゆっくりとした時間が流れている気がする。ふと手が触れて、そのままぎゅっとどちらからともなく手を繋いだ。 視線は夜空に向けたまま、彼の温もりに酔いしれる。いつの間に、こんな素敵なプランを立ててくれたんだろう。 江藤くんは毎日残業してたし、今日も朝から出張だったのに。 短時間なのに、すごく盛り沢山で、しかもすべてエスコートしてくれて。 こんな風に甘やかしてもらうことが初めてで、感動して胸がいっぱいになる。花火が落ちてくる光と一緒に、彼を見やる。 江藤くんは、とても優しい顔で微笑んでいた。その笑顔を見た瞬間、胸がぎゅううっと締めつけられた。 でも、それはとても幸せな胸の苦しさだ。 胸がいっぱいになって、じわりと視界がぼやける。ああ、なんて幸せなんだろう。夜空に咲く花火が、特別な輝きに見える。 こんな気持ちにしてくれる江藤くんのことを、心から好きだと思えた。
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13_1.優しすぎるよ

短時間だったけれど閉園までしっかりパークを堪能した。 ホテルは、提携しているオフィシャルホテルの予約が取られている。「さすがにパーク内は無理だったよ」 「そんなの全然いいよ。ありがとう」申し訳なさそうにする江藤くんに、私はブンブンと首を横に振る。 何から何までやってもらって、本当に頭が下がる思いだ。「いろいろありがとね」 「そんな遠慮しなくていいのに。辻野さんが喜んでくれたなら、大成功だね。でも疲れたでしょ? 先にお風呂入っておいで」どこまでも優しくて、胸がきゅんとなる。「そんなの悪いよ。江藤くん先に入りなよ」 「えー? じゃあ一緒に入る?」ちょっと遠慮してみたら、意地悪そうに提案してくる。 一緒に入るとか、ハードル高いし、恥ずかしいんですけど。「いやいやいや、一人で入ります!」慌てて否定したら、江藤くんは残念そうにしながらも、クスクスと笑った。でも―― そうやって言ってくれるってことは、そういうことになってもおかしくないってことだよね? そう思ってくれてるって考えても、いいよね?急に湧き上がる羞恥心。 一体私は何を想像しているんだ。 落ち着け、私の煩悩。 やたら緊張して、心臓がドキドキと速くなってくる。 別になにがあるわけでもないのに。
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13_2.優しすぎるよ

お言葉に甘えて、先にお風呂に入り、今は江藤くんのお風呂を待っているところ。この一人の時間。しんとする室内。 手持ちぶさたで、妙にドキドキしてきた。そういえば、お泊まりは初めてだ。 さっき想像してしまったことが、ふいに頭をよぎる。今日こそ、求められたりして? だって、お泊まりだし。 ディズニーだし。 夢の国だし。そんなことをぼんやり考えて、すぐさまはっとなる。 何を考えているんだ、私は。 煩悩が大変なことになっている。 ちょっと落ち着こう。 うん、心を無にするのだ。そうやって、落ち着いたつもりだったのに。 お風呂から出た江藤くんは、いつもよりも無防備で色っぽくて、無意識に目で追ってしまっていた。普段見られない、貴重な姿。 特別感が半端ない。私の視線に気づいたのか、江藤くんがキョトンと首を傾げる。「どうしたの?」 「えっ、いやっ、何でもないよっ」首を横に振って、慌てて目をそらした。 はー、もう。 私ったら、そわそわしすぎ。 いろんな意味で、動揺する。何をそんなに緊張することがあるのだろう。 だって、私たちは恋人だもの。 何も遠慮することなんてないでしょう? そう思うのに、心臓がドキドキとうるさく鼓動する。でも、そんな自分も、ちょっとだけ愛しく思えた。 だって、私の中で、それだけ彼の存在が大きくなっている証だと思ったからだ。
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13_3.優しすぎるよ

ベッドに座る私の隣に、江藤くんが腰を下ろす。 お風呂上がりの、いい香りがふわりと鼻をかすめた。 それだけで、ドキリと心臓が高鳴る。ふと目と目が合えば、お互いふふっと笑い合って、この二人きりの特別な空気感を嬉しく思った。ふいに手が伸びてきて、髪を掬われる。 指が肌をかすめて、ドキリと心臓が跳ねた。「おろしてるのも可愛いね」そう言って、にこりと笑う。 その優しい表情に、ますます心臓はバクバクと脈打つばかり。 頬が熱い。そういえば、私は仕事中ひとつに結っていることが多くて、髪を下ろした姿を見せるのは初めてかもしれない。 と同時に、すっぴんだったことにも気づく。 お風呂ですっかり全てを落としてしまっている。 私は慌てて、頬を両手で覆った。「ごめん、すっぴんだった。あんまり見ないで」 「何で? 可愛いのに」そっと腕を捕まれて、頬から手が離れた。 じっと見つめられて、熱を持つ頬がさらに熱を帯びる。「可愛いよ」 「……!」そう言われて、どう返していいのか躊躇う。 ドキドキが止まらない。甘くて優しい空気が纏うなか、江藤くんの顔が近づく。 あ、キスだ――そう思ったのも一瞬で、無意識にそっと目を閉じた。 唇に触れる、優しい感触。 江藤くんの甘さがちょっぴりくすぐったくて、恥ずかしくて、胸がいっぱいになる。二人の息遣いが聞こえる静かな夜に、私の鼓動は速くなるばかりだ。
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13_4.優しすぎるよ

  触れた唇が、名残惜しそうにゆっくり離れていく。 すごく、ドキドキした。 形のいい唇を目で追っていると、江藤くんと目が合った。 視線が絡まるたびに、この先はどうなるのかと心臓がドキドキと揺れる。 期待と緊張と不安で、心がざわつくのだ。 江藤くんは、そんな私の瞳の奥を探るように見つめてから、頭を優しくなでた。そして、「おやすみ」と言って、ベッドから立ち上がる。 「え?」 思わず声が漏れ、反射的に江藤くんの袖を引っ張った。 止められた江藤くんが、振り返り首をかしげるので、慌ててその手を離す。 どうして引き止めちゃったんだろう。 私は江藤くんと、どうなりたいの? 自問自答で、頭の中がぐるぐるする。 しんとした空間に、気まずい空気が流れた。 「何? もしかして一緒に寝たい?」 そんな空気を壊すかのように、からかうように言う江藤くん。 私は俯きながらも、「うん」と、小さく答えた。 だって。 だってさ、お泊まりだよ。 私たち、恋人でしょ。 だったら……、その先があったって問題ないよね。 そんな気持ちになっているのは、私だけなんだろうか。 二人の間に、またしばらく沈黙が流れた。 まるで、時が止まったようだった。 その静けさの中に、言葉にできない想いがじわりじわりと満ちていく。 
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13_5.優しすぎるよ

お互いに黙ったまま、時間だけがゆっくりと流れていく。何か言ってほしい。 私が言うべきなのだろうか。沈黙というものは、不安を煽りまくる。 ざわついていた心が、急に締めつけられるような感覚に、思わず胸のあたりをぎゅうっと握った。居たたまれない空気に、先に痺れを切らしたのは、私の方だった。「ねえ、私って魅力ない?」言ったはいいけれど、それは思ったよりも小さい声で。消え入りそうなその声が、江藤くんに届いたのかどうかはわからない。だって、何も言ってくれないからだ。だから私はもう、情けなく下を向くしか能がなくなってしまった。ふと、隣に座り直す気配がある。 つと顔を上げると同時に、ふわりと抱きしめられ、お風呂上がりの優しい香りに包まれた。「……そんなわけあるかよ。そりゃ、辻野さんのこと、抱きたいに決まってるだろ」耳に響く、甘く優しい声。 掠れた囁きが鼓膜を刺激し、体がビクッと震えた。「早く辻野さんを俺のものにしたい」 「じゃあどうして……キス……しか……」してくれないの? そう続けようとして、言葉が詰まる。 よく考えたら、大胆な発言だ。 まるで私がその先を望んでいるかのよう……。とたんに、羞恥で顔がカアッとなった。 見られないように、江藤くんの胸に顔を埋める。別に望むことは変じゃないと思っている。 ただ、自分から誘うことに慣れていないというか、抵抗があるというか……。 
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13_6.優しすぎるよ

しん、とまた部屋が静まりかえった。 膝の上で握ったこぶしに、江藤くんの手が重ねられる。「悩ませてごめんね、俺の問題なんだ」 「それは、どういう……?」顔を上げると、江藤くんの瞳が躊躇いがちにゆらりと揺れる。 まるで、迷っているような、こちらの気持ちを探るような……。 はあ、と江藤くんが小さく息を吐いてから、ゆっくりと口を開いた。「俺は辻野さんに好きって告白したけど……」 「うん」 「あんな告白、辻野さんが弱っているところを逆手に取ったようなものだろ? 本当に俺のことを好きになってくれるまでは、申し訳なくて抱けないよ」 「……」ああ、この人は。 どこまで、優しいんだろう。 私が心の奥底でぼんやりと抱いていた気持ちを、あっさりと見抜いてしまっている。確かに、あのときは弱っていた。 だから、もしかして気持ちがなびいてしまったのかも……。 そう思ったことも、正直なところあったのだ。だけど。 江藤くんを知れば知るほど、一緒にいるのが楽しくて、嬉しくて。 最近はまったく、「気持ちがなびいたから」だなんて、そんなこと思わなくなっていた。江藤くんを好きな気持ちが、どんどん膨らんでいくの。 ときどき、抑えられないくらいのドキドキが、私の胸を締めつける。その気持ちを、どう伝えたらいいんだろう。 言葉にするには、まだ少しだけ勇気が足りない気がしていた。 でも、心はもう、とっくに江藤くんへまっすぐ向かっているんだ。
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13_7.優しすぎるよ

胸がぎゅっとなる。 言わなきゃいけないと思う。 私から、ちゃんと江藤くんへ、伝えないといけないんだ。「江藤くんは、優しすぎるよ」 「辻野さんにそう思ってもらえてるなら、よかったよ」 「私はちゃんと……」顔を上げて、江藤くんと視線が絡まった。 じっと見つめる瞳の奥はとても綺麗で、吸い込まれてしまいそうだ。 すっと息を吸い込むと、一息で言った。「私、江藤くんが好き」これは、弱ってたからじゃない。 絆されたからじゃない。 心の奥底から、そう思うのだ。江藤くんが、ぐっと息を飲んだのがわかった。 見つめられるその瞳の奥が、熱を帯びているのがわかる。「じゃあ、辻野さんを俺のものにしていい?」ドキッと心臓が高鳴りながらも、私はコクンと頷いた。 だって、好きだから。 求めたいし、求められたい。ふたりの距離が、ゆっくりと近づいていく。 再び唇が重なり、何度も啄むように交わされる口づけ。そっと離れたと思ったら、江藤くんはまた、私の瞳の奥を覗き込んでくる。 無意識に揺れてしまった瞳に、江藤くんは困った顔になった。 たぶん、私も困った顔をしていると思う。「何か隠してない? 隠すというか、俺に言いたいことがある気がするんだけど」その言葉に、私は全身に電気が走ったように震えた。言いたいこと。 江藤くんに言いたいこと。 それは、私の心の奥底に眠る、どうしても拭いきれない想い。 過去の痛み。 自分でも整理しきれていない、不安のかけら。ずっと言えなかった。 でも、今なら話せるかもしれない。 江藤くんなら、きっと受け止めてもらえる。 そう思えた。
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14_1.ちゃんと聞くから

沈黙に、また触れる唇。 ぽすんと優しく押し倒され、江藤くんが上から見下ろす形になる。それなのに、先ほどまでの熱を孕んだ瞳から、いつもの優しい目をした江藤くんに戻っていた。 その目はとても優しくて、いつもの“話を聞いてくれる”モードだ。「何で……?」かろうじて出た声は、小さく震えてしまった。 だって、私の心の奥に燻る想いを、まるで見透かされているようではないか。 そんな私に、江藤くんはふわりと笑う。「俺が、どれだけ辻野さんに片想いしてたと思うの? ずっと見てたんだから、わかるよ。それに、話を聞いてほしい時とか、愚痴りたいときとか、 そういう時はいつも俺に目で訴えてる。ねえ、もしかして無自覚だった?」ドキリと心臓が高鳴る。 どう考えても、そんなの無自覚だった。 まさか、私ったら、そんなに感情が顔に出ていただなんて。 でも、江藤くんは、ずっと私のことを見ててくれたんだ。「ちゃんと聞くから、教えて」優しい声でそう言いながら、江藤くんは私の腕を引っ張って、再び体を起こしてくれた。 ふたりして、ベッドに並んで座る。俯きがちな私に、江藤くんは安心させるように手をぎゅっと握ってくれた。 その手の温もりが優しくて、心が落ち着いていくのを感じる。気持ちを言葉にするのは、まだ少し怖いけれど、この手を握っていれば、きっと大丈夫だと思えた。 江藤くんになら、素直に言える気がした。
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