LOGINベッドに座る私の隣に、江藤くんが腰を下ろす。
お風呂上がりの、いい香りがふわりと鼻をかすめた。 それだけで、ドキリと心臓が高鳴る。ふと目と目が合えば、お互いふふっと笑い合って、この二人きりの特別な空気感を嬉しく思った。
ふいに手が伸びてきて、髪を掬われる。
指が肌をかすめて、ドキリと心臓が跳ねた。「おろしてるのも可愛いね」
そう言って、にこりと笑う。
その優しい表情に、ますます心臓はバクバクと脈打つばかり。 頬が熱い。そういえば、私は仕事中ひとつに結っていることが多くて、髪を下ろした姿を見せるのは初めてかもしれない。
と同時に、すっぴんだったことにも気づく。 お風呂ですっかり全てを落としてしまっている。 私は慌てて、頬を両手で覆った。「ごめん、すっぴんだった。あんまり見ないで」
「何で? 可愛いのに」そっと腕を捕まれて、頬から手が離れた。
じっと見つめられて、熱を持つ頬がさらベッドに座る私の隣に、江藤くんが腰を下ろす。 お風呂上がりの、いい香りがふわりと鼻をかすめた。 それだけで、ドキリと心臓が高鳴る。ふと目と目が合えば、お互いふふっと笑い合って、この二人きりの特別な空気感を嬉しく思った。ふいに手が伸びてきて、髪を掬われる。 指が肌をかすめて、ドキリと心臓が跳ねた。「おろしてるのも可愛いね」そう言って、にこりと笑う。 その優しい表情に、ますます心臓はバクバクと脈打つばかり。 頬が熱い。そういえば、私は仕事中ひとつに結っていることが多くて、髪を下ろした姿を見せるのは初めてかもしれない。 と同時に、すっぴんだったことにも気づく。 お風呂ですっかり全てを落としてしまっている。 私は慌てて、頬を両手で覆った。「ごめん、すっぴんだった。あんまり見ないで」 「何で? 可愛いのに」そっと腕を捕まれて、頬から手が離れた。 じっと見つめられて、熱を持つ頬がさらに熱を帯びる。「可愛いよ」 「……!」そう言われて、どう返していいのか躊躇う。 ドキドキが止まらない。甘くて優しい空気が纏うなか、江藤くんの顔が近づく。 あ、キスだ――そう思ったのも一瞬で、無意識にそっと目を閉じた。 唇に触れる、優しい感触。 江藤くんの甘さがちょっぴりくすぐったくて、恥ずかしくて、胸がいっぱいになる。二人の息遣いが聞こえる静かな夜に、私の鼓動は速くなるばかりだ。
お言葉に甘えて、先にお風呂に入り、今は江藤くんのお風呂を待っているところ。この一人の時間。しんとする室内。 手持ちぶさたで、妙にドキドキしてきた。そういえば、お泊まりは初めてだ。 さっき想像してしまったことが、ふいに頭をよぎる。今日こそ、求められたりして? だって、お泊まりだし。 ディズニーだし。 夢の国だし。そんなことをぼんやり考えて、すぐさまはっとなる。 何を考えているんだ、私は。 煩悩が大変なことになっている。 ちょっと落ち着こう。 うん、心を無にするのだ。そうやって、落ち着いたつもりだったのに。 お風呂から出た江藤くんは、いつもよりも無防備で色っぽくて、無意識に目で追ってしまっていた。普段見られない、貴重な姿。 特別感が半端ない。私の視線に気づいたのか、江藤くんがキョトンと首を傾げる。「どうしたの?」 「えっ、いやっ、何でもないよっ」首を横に振って、慌てて目をそらした。 はー、もう。 私ったら、そわそわしすぎ。 いろんな意味で、動揺する。何をそんなに緊張することがあるのだろう。 だって、私たちは恋人だもの。 何も遠慮することなんてないでしょう? そう思うのに、心臓がドキドキとうるさく鼓動する。でも、そんな自分も、ちょっとだけ愛しく思えた。 だって、私の中で、それだけ彼の存在が大きくなっている証だと思ったからだ。
短時間だったけれど閉園までしっかりパークを堪能した。 ホテルは、提携しているオフィシャルホテルの予約が取られている。「さすがにパーク内は無理だったよ」 「そんなの全然いいよ。ありがとう」申し訳なさそうにする江藤くんに、私はブンブンと首を横に振る。 何から何までやってもらって、本当に頭が下がる思いだ。「いろいろありがとね」 「そんな遠慮しなくていいのに。辻野さんが喜んでくれたなら、大成功だね。でも疲れたでしょ? 先にお風呂入っておいで」どこまでも優しくて、胸がきゅんとなる。「そんなの悪いよ。江藤くん先に入りなよ」 「えー? じゃあ一緒に入る?」ちょっと遠慮してみたら、意地悪そうに提案してくる。 一緒に入るとか、ハードル高いし、恥ずかしいんですけど。「いやいやいや、一人で入ります!」慌てて否定したら、江藤くんは残念そうにしながらも、クスクスと笑った。でも―― そうやって言ってくれるってことは、そういうことになってもおかしくないってことだよね? そう思ってくれてるって考えても、いいよね?急に湧き上がる羞恥心。 一体私は何を想像しているんだ。 落ち着け、私の煩悩。 やたら緊張して、心臓がドキドキと速くなってくる。 別になにがあるわけでもないのに。
「辻野さん、花火も上がるらしいよ」 「えっ、花火?」そう言って空を見上げた瞬間、夜空一面にキラキラと輝く大きな打ち上げ花火が花開いた。 胸に響くドーンという音が、今日という日をさらに盛り上げてくれる気がする。「うわぁ、すごい」 「綺麗だよね」美しい光景に、しばらく見惚れていた。 ゆっくりとした時間が流れている気がする。ふと手が触れて、そのままぎゅっとどちらからともなく手を繋いだ。 視線は夜空に向けたまま、彼の温もりに酔いしれる。いつの間に、こんな素敵なプランを立ててくれたんだろう。 江藤くんは毎日残業してたし、今日も朝から出張だったのに。 短時間なのに、すごく盛り沢山で、しかもすべてエスコートしてくれて。 こんな風に甘やかしてもらうことが初めてで、感動して胸がいっぱいになる。花火が落ちてくる光と一緒に、彼を見やる。 江藤くんは、とても優しい顔で微笑んでいた。その笑顔を見た瞬間、胸がぎゅううっと締めつけられた。 でも、それはとても幸せな胸の苦しさだ。 胸がいっぱいになって、じわりと視界がぼやける。ああ、なんて幸せなんだろう。夜空に咲く花火が、特別な輝きに見える。 こんな気持ちにしてくれる江藤くんのことを、心から好きだと思えた。
食事が終わって外に出ると、ちょうどパレードが始まる時間だった。すっかりと夕闇に包まれた空は、そこかしこの電灯と相まって、とても幻想的に見える。たくさんの人を掻き分けて、しっかり見える位置に場所を取った。しばらくすると、軽快な音楽が近づいてくる気配がする。キャラクターたちが、色とりどりのイルミネーションを纏いながらくるくると躍る様を、その世界に吸い込まれるように見ていた。「ねえ、江藤くん、スーツだから王子様みたいだね」「じゃあ辻野さんは、お姫様だね」「え、私、スラックスなんですが」「斬新でいいじゃん。そういうお姫様もありじゃない?」「そうかなぁ?」ドレスを着たお姫様が、優雅に裾をふわりふわりとさせながら、目の前を通りすぎた。その可憐な姿に、目がくぎ付けになる。私も、あんなドレスを着る予定だったんだよ。ふと、正広とのことが頭を過った。なぜか時々思い出しては、自己嫌悪に陥る。そんな自分が情けなくて、たまらなく嫌だ。そんな感情を知らない江藤くんは、私の隣で楽しそうに笑っている。その笑顔が、イルミネーションよりも眩しくて、胸がキュンとなる。嬉しくなる。過去の影が差し込んでも、今の光がそれをそっと包んでくれるみたいだ。江藤くんの存在が、とても尊く感じた。
一通り写真を撮って満足していると、江藤くんがこちらを見て微笑んでいた。あ、そっか。 私が写真を撮ってたから、食べずに待っててくれたんだ。「ごめん、待っててくれてありがとう」 「うん? そんなの謝らなくていいよ。辻野さん、そんな遠慮深い人だっけ?」 「だって……」からかうように、笑いながら言う。 私が気を遣うような発言をするとき、江藤くんはいつも何でもないように、少し冗談めいた返事をして気を紛らわせてくれる。そういうの、胸がぎゅっとなる。 江藤くんの細やかな優しさに包み込まれて、ふわふわとした気持ちになってしまう。だって、そんな風に気遣われたこと、今までなかったから。 私に合わせてくれるなんて、思ってもみなかったから。 私が合わせなきゃいけないって、思ってたから。 だから、いいのかなって、少し戸惑ってしまった。「さあ、食べよう」 「うん、そうだね」食事はとても美味しくて、たぶん江藤くんが私の食べるスピードに合わせてくれている。そんな細やかな気遣いさえも、胸がきゅんとなって苦しい。目の前にいる彼が笑っていて、時々冗談を言って私を笑わせてくれる。 この時間が、どれほど幸せなことなのか。 胸がいっぱいになって、ずっとキュンキュンと音を立てて鳴り止まない。







