ダメ男との結婚をやめたら、運命の恋が始まりました のすべてのチャプター: チャプター 101 - チャプター 103

103 チャプター

15_6.愛してる

スーツ姿の遼太郎くんは、とても眩しく見えた。 いつもは柔らかくて、どこか抜けたところもあるのに、今は背筋をぴんと伸ばし、凛とした表情で私の両親の前に立っている。 その横顔がどうしようもなく頼もしくて、私は隣で誇らしい気分になった。「はじめまして。萌さんとお付き合いをさせていただいております、江藤遼太郎と申します。萌さんと同じ会社でSEをしております」ただそれだけの挨拶なのに、どうしてこんなに立派に見えるんだろう。 いや、きっと比べてしまうからだ。 あの、とぼけた前例、正広のことがあるから、遼太郎くんの一言一言が、何倍にも、何千倍にも輝いて見えた。しかも、私の知らないうちに手土産まで用意していて、自然な所作で両親に手渡す。 その姿に、最初は「変なやつが来たら追い返してやる」と警戒していた父と母も、すっかり気を許してしまったようだった。「結婚じゃなくて、同棲なのか?」父が少し眉をひそめて言う。 結婚前の同棲にあまりいい顔をしないのは、昔から知っていた。「お父さん、結婚だなんて気が早いよ。遼太郎くんも困っちゃうよ」私は慌てて口を挟んで、遼太郎くんの方を見た。 だけど、彼は落ち着いた声でまっすぐに言う。「俺は、すぐにでも結婚したいよ」「ええっ! いや、でもっ!」予想外な言葉を返されて、今度は私が困る。 どう答えていいかわからず、顔が熱くなってどこを見ればいいのかわからない。 嬉しいのに恥ずかしくて、私はただただ頬を染めて焦り、それを見た両親は顔を見合わせてふっと笑った。「ちゃんといい人見つけたのねぇ。ねぇ、お父さん」母が明るく言い、父も小さく頷く。 その瞬間、胸の奥にじんわりと温かいものが広がった。ちゃんと両親に認められるって、こんなにも嬉しいことなんだ。 こんなにも、心が満たされるものなんだ。 私は今、ようやく本当の意味で、幸せの意味を実感した。
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15_8.愛してる

ぐすっと鼻をすすると、私は思わず遼太郎くんを睨みつけた。 涙で潤んだ目のまま、少しだけ怒ったふりをする。「遼太郎くんの嘘つき。泣かせないって言ったくせに、私のこと泣かせ過ぎ。幸せが嬉しすぎて、泣けちゃうよ」彼は苦笑いしながら、そっと私の目尻に指を伸ばして拭ってくれる。 その仕草があまりにも優しくて、また胸がきゅんとなる。 触れる指先が、とても温かい。「だから、それは反則だってば」「だって、泣けちゃうんだもん」ぷくっと膨れて見せると、遼太郎くんは照れたように笑った。 彼の声や雰囲気が、部屋の空気をやわらかく包み込んでくれる。 こんなふうに、誰かと一緒に笑って、泣いて、心を重ねていけること。 それが、こんなにも幸せだなんて思いもよらなかった。幸せだと、言葉にできること。 胸がいっぱいで、ぎゅうぎゅうと締めつけられること。 それが何よりも、幸せだという証拠なのだろう。「遼太郎くん、愛してる」自然と口からこぼれたその言葉は、まるで春の風みたいにふわりと部屋を漂った。  彼は驚いたように目を見開いて、それからすぐに満面の笑みを浮かべた。「俺も、愛してるよ」明日はきっと、もっと幸せ。 そうやって、一歩ずつ二人で愛を積み重ねていくんだね。 【END】
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15_7.愛してる

二人で住む家が決まるまでは、ひとまず遼太郎くんのワンルームマンションへ引っ越すことになった。 二人では手狭だけれど、とても整った部屋。 彼の生活の気配がそこかしこにあって、私は少しだけ緊張しながらも、どこか安心していた。転居届けも提出する。 今回の郵便局は、正広とはまったく関係のない地域。 安易にバレることはない。 それこそ、彼が転勤でもしない限り。「もしまた探って現れたら、今度は職権濫用で訴えるから」遼太郎くんがそう言ったときの目は、いつになく鋭かった。 私を守ろうとしてくれるその気持ちが、言葉の端々に滲んでいて、胸がじんと熱くなる。新しい家が決まったら、また更に転居届けを出す。 そんな面倒なことをしなくてもいいのにと私が言うと、彼は首を横に振った。「プログラムと一緒。懸念事項はなるべく回避しないと」「さすがSE。職業病だねぇ」「これからの思い出は、新規保存だよ。萌のデータベースを俺で埋め尽くす」「じゃあ、遼太郎くんのデータベースも私で埋め尽くすね」ふざけたようなやりとりなのに、部屋の空気がふわりと和らいでいく。 どちらともなく、ふふっと笑った。 でも、次の瞬間、彼は急に真顔になって言う。「絶対、萌を幸せにするよ」その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられる。 冗談の延長みたいな流れだったのに、彼の瞳はまっすぐで揺るぎなかった。私は嬉しくなって、でもどうしてだろうか、急にじわりと込み上げてくるものがあって、そっと目を伏せた。 優しく笑う遼太郎くんの顔が、涙で滲んで見えた。
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